【完結】人間にモテないオレはモンスターを嫁に迎えることにしました

湯原伊織

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第46話 彼女と歩む道

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 ヴェイルが持つ宝玉によって町でゾンビになった人々をすべて竜人の魔王が住む城に送ってやった。かなりの数がいたらしく、城は陥落し、彼女はほうほうのていで逃げ出したようだ。

 オレたちはゾンビの件を秘密にする代わりに様々なお願いをヴェイルにした。その結果、2つの良いことがあった。

 1つ目はアラクネが今回の問題解決に多大に貢献したことでこの国の名誉市民となったことである。

 2つ目は聖女シルメリアの件である。彼女は生きていたが病気で療養が必要だと教会に認めさせることができた。つまり、彼女の戸籍は回復し、人として扱われるのだ。

 それらはヴェイル司教の報告によって得られた成果だ。さらに余談ではあるが、ヴェイルによって擦りつけられた人を魔物に変える反逆者の汚名をオレは返上し、大罪人から一連の活躍によって一躍に英雄へとなった。

 そして、今のオレは最愛の人が眠るこの場所で彼女の目覚めを待っている。ヴェイルに囚われていた時に相当に痛めつけられていたのだろう。ヴェイルが降伏した後にすぐにアラクネを解放しようと歩み寄ったところ、彼女は既に気を失っていた。

「ここはどこかしら、ベット?」

 鈴を転がすような声にオレは意識を戻す。体を寝台から起こし、問いかけるアラクネ。

「気が付いたかい?」

 オレはそう言って微笑む。ようやく、彼女にこの思いを伝えられる。オレは…

「アラクネ様の気配を感じました。目覚めたんですね?」

「お、本当に目覚めているようだな」

 タイミングが悪いな。シルメリアとデミトンがアラクネの気配の変化を察知し、扉から入ってきたのだ。さすが悪魔に近いと言われる吸血鬼たちだ。本当に最悪だとオレが睨みつけていると、

「おっと、そろそろ神への祈りの時間だ。サイゾウ、武運を祈っているぞ」

 と言って去っていくデミトン。

「アラクネ様、無事で良かったです。さてと、今回は致し方ないですね。私も一緒に神に祈ってきます」

 さらにそれに続いて去っていくシルメリア。オレの気持ちを察したか。さすが長い年月を生きている吸血鬼と聖女様だ。

「あの二人はなんだったの?」

 そう言って顔に疑問を浮かべる彼女。混乱している彼女に想いを伝えるのはいただけないと思い、ひとまずは今回の事件の顛末を伝えることにした。

「ヴェイルはあなたの好きな町を無茶苦茶にしたのによく許したわね」

「少し同情したんだ。もし、オレたちの子供が生まれたらハーフだろ?」

「子供!? 気が早いわよ。まだ新婚生活すらしていないのに」

 そう言って赤くした顔を左右に激しく振るアラクネ。その姿は確かに可愛い。だが、オレはまだ自分の想いを彼女に伝えていない。そして、彼女から了承を得ていないのだ。

「確かに彼の親が悪かったではすまない状況なのはオレもわかっている。でも、もし自分の子供が親のエゴで過ちを犯したときにどうなっているんだろうと思うとね」

 オレは彼を憎めなくなっていたんだ。だから、全てを諸悪の根源である竜人の魔王の所為にして、彼が罪に問われないように手をまわした。教会で礼節を重んじた生活をしていた彼にはその罪に問われないこともきっと辛い罰となると信じてね。

「ところで、気が早いってなんのことかな?」

「ああ、あうあう」

 なんだ。この生き物は動揺している彼女の顔があまりにも可愛いから、こちらが叫びたくなる。

「動揺している君もかわいい」

「もう何を言っているの」

 思わず漏れる本音に照れて茹で蛸のようになっている彼女が早口に返事をしてきた。そんな姿も愛おしい。この想いを彼女に伝えないと。

「愛している」

「知っているわ」

 そう言って笑う彼女。敵わないなと思い、彼女に思いの丈をぶつける。

「一生大切にするからオレと結婚してください」

「イヤよ」

 まさか、断られるとは思わなかった。オレはあまりのことに頭の中が真っ白になる。

「ただ大切にされているだけはイヤなの」

 そう言って何かを思い出すように苦笑いをする。オレにはわからないアラクネの苦い経験でもあるのだろう。そんなことを思っていたら、

「ねぇ、もう一回…」

 お願いねと徐々に聞こえなくなる彼女の声。なんて愛おしいのだろう。

「オレと結婚してください!」

 魔物の蜘蛛に絡め取られるのはイヤだ? そんなことはないだろう。前世を独身のままで終えているんだ。愛し、愛されるのは望むところだ。

「はい」

 彼女からの返事につい口元がほころぶのがわかる。

 本当に人生、何があるかわからないな。ずっと、孤独で童貞だったそんな俺に…

 いや、そんな俺にも…

 本当にあまりにモテないオレにも妻ができました。

 ━━━人間にモテないオレはモンスターを嫁に迎えることにしました。
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