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魔王と対面~猫をかぶるのはやめました~
しおりを挟む──うわー!──
──ヤバい気がする!──
──ここで死ぬのはマジ勘弁!!──
リアは、嫌な予感で冷や汗をだらだらとかいた。
何か話しているようだが、話が頭に入ってこない、しかし身分が高そうな人物が言っている事は地雷なような気がしてならなかった。
すっと玉座に座ってた人物が手をかざすと、帝国から来た人物たちと自分以外の捧げものが全て燃えて消えてしまった。
「アーデルハイト王国も愚かな……帝国にわざわざ渡すとは……」
──おめぇが言い出したからだよ!!──
その言葉にリアはカチンと来て、ベールをはぎ手の拘束をばきりと破壊した。
「悪かったな!! 仕方ないだろうが私のところの国は小さいんだから帝国に攻められたら滅びるわ!! 滅ぶか、私がここ来るかの二択だったから私は自分でここ来たんだ文句あるか魔術王!! いや、魔王!!」
少し歩きにくきドレスを掴んで上げ、ずかずかと玉座に歩み寄る。
そして目の前に魔王――金髪に黄金の目を持つ美しい男に噛みつくように言う。
「私は20年間寝てて目覚めたばっかで何も知らねぇんだよアンタらと帝国が戦争やってる理由も何も!! ただ帝国が和平の為の贈り物になれじゃないと滅ぼすって言われたから国守るためにきたんだ!! 仮にも王女だからそれくらいやるんだ文句あるなら帝国のこの案だした奴に言え!! それと、私に何で興味を持ったんだよ!!」
周囲から視線と殺意が来るがリアは全く動じず男に噛みついた。
男は無愛想な表情をしていたが、ふっと笑うとリアの顔を掴んだ。
「ふむ、では生きて会う事があればそうしよう。……しかし聖女らしからぬ発言だな、聞いてた限りではお淑やかで慈悲深いと聞いていたが……」
「口が悪いのが素じゃい!! お淑やかにしてたのは目覚めた娘がこんな口調だと親がひっくり帰りそうな親だったからお淑やかにしてたんだよ!! 慈悲深いんじゃなくて困ってる人見てると良心痛むから助けてるだけだよ文句あるか!!」
「……枯れてる森さえも再生できたと聞く」
「できたけどそれが何じゃい!!」
リアはがるがると噛みつくように魔王に言う。
「まぁ良い、試すのは後だ。それより気に入った、この娘を部屋に案内し丁重に扱え」
魔王がそういうと身分の高そうな人物と侍女らしき者達が現れ、リアの残った枷を外すと、リアをどこかへ案内した。
案内された場所はリアがいたアーデルハイト王国の部屋よりも豪華な部屋だった。
「何じゃこりゃあ……」
「陛下が気に入るなど滅多にないことです、心するように……」
「マジか……」
侍女が別のドレスを持ってきた。
飾り気のない、動きやすそうなドレスだ。
「陛下が貴方にはこちらの方がよいのではと」
「あーその方がありがたいわ」
花嫁が着るようなドレスを脱がせられ、そのドレスに袖を通す。
「……で、私は何すればいいのさ?」
「陛下の判断はまだわかりませぬ、故に心しなさい」
身分の高そうな人物が部屋から出ていくと、侍女一人を残して部屋から侍女達がでていった。
「……」
リアはぼふんとベッドに腰をかけて、侍女をちらりと見る。
「貴方は?」
「あなた様の身の回りをお世話するよう申し付けられたメアリと申します」
「メアリね。私はリア。リアでいいよ」
「いいえ、リア様。今の貴方様は客人、丁重にお仕えします」
「あ、そうなの」
「クロス大臣はああいってましたが、陛下はとても慈悲深いお方です」
「……」
──慈悲深いお方が大使みたいな奴ら燃やしたりするかね普通──
思ってたことをぐっと飲みこんで、リアは柔らかなベッドに体を沈めた。
「あー……」
──なんか怒りに任せてやっちゃったけど、とんでもないことになった気がするー……──
リアはそう思いながら起き上がる。
しばらく時間が経過し――
「暇だ……くそう、国では病気の人の治療やらなにやらやってから暇なんてなかったけど暇で仕方がない!!」
リアは母国にいた頃は神殿に言って治療と勉強、城でも治療と勉強、呼ばれれば荒れてた場所を綺麗にしたり、枯れた森を元の状態に戻したり、濁った汚染された川を元の流れる綺麗な川に戻したりと引っ張りだこだった。
帝国では監視が酷く、精神的に疲れるので寝れたが、ここでは寝れるという状態になっていない。
ただ、先が見えない事が酷く不安だった。
「はぁ……」
「暇でしたら私と盤上遊戯でも致しませんか?」
「……いや、私やったことない」
「そうですか私もあまり得意ではありませんので失言でした、すみません……では編み物でもしましょうか」
「あー……でも得意じゃないよ?」
「私が教えます」
侍女――メアリは魔法で編み物の材料と道具を取り寄せた。
椅子を持ってきてそれに座り、二人は編み物を始める。
──編み物なんて小学生の頃やってからやってねーよ!!──
──マフラーしか作ったことねーし!!──
内心文句をいいながらも、メアリに手伝ってもらいながらもくもくと編み物をした。
慣れない事をしていると時間はあっという間に過ぎていった。
「そろそろ夕食の時間ですね、案内いたします」
メアリは編み物を置く、リアも編み物を置いた。
メアリはリアを部屋の外へと案内し、客人用の食事場所らしきところに連れてきた。
侍女が並んでおり、ちょうどよい量の食事が並べられていた。
「あ、これなら食べきれそう」
「それなら良かったです」
城で出されるような白いパンや、スープを、サラダ等をマナー通りに口にしていく。
マナーなんて皆無だった前の世界では考えられないことだった。
しばらくして料理を全て食べ終え、ふーっと息をつく。
「……それにしても何で私に興味なんて抱いたんだ?」
ふと疑問を口にすると、メアリは分からないといいたげに首を振った。
「陛下なりに何か考えがあるのかと……」
「なるほど」
食事を終え、メアリの案内で部屋に戻ると、侍女たちが待っていた。
「湯あみの時間です、こちらへ」
再び案内され、客人用の浴室に連れてこられる。
一人入るには十分な広さの浴槽にはハーブらしきものが浮かんでいた。
服を脱がされ、風呂に入ると、侍女たちが髪や足などを洗い始める。
「嫌、自分でできるよ」
「私共の仕事です」
侍女たちはそう言ってもくもくと体を洗っていた。
侍女に洗われ、疲れた息を吐くとメアリが口を開いた。
「リア様、胸元のそれは……」
「あー……なんか生まれた時からあったんだってさ」
「そうですか……」
メアリは何か言いたげだったが、何も言わず体を拭く作業に戻り、リアに服を着せた。
リアは胸元にある紋を見る。
「……これ、マジなんなんだろうな?」
そう言ってから再び部屋に戻り、疲れがどっと出たのかメアリにもう寝るというと、再び着替えさせられ、寝間着用のドレスを着せられると、リアはベッドに入り眠りについた。
リアがベッドに入って一時間後、魔王が部屋に入ってきた。
「陛下……リア様お休みに――……」
「他の者から娘にあの紋章が入っていると聞いたので確認に来た」
魔王は足音を全く立てずにベッドに近づく。
「少しの間下がれ」
「……はい」
メアリは魔王――イオスの命令に従い部屋から出て行った。
イオスは疲れて静かに眠っているリアに近づくと、リアのドレスの胸元を少し広げさせた。
紋章がイオスの目に映る。
イオスはそれに触ると、紋章は淡く光った。
「……正真正銘、女神リシュアンの加護の紋だ……女神からの加護……聖女……」
イオスはそっと胸元を直し呟いた。
「女神リシュアンはまだこの世界を見捨ててないということか……」
そう言って、イオスは部屋を後にした。
朝目が覚めると、リアはぼーっとしていた。
「えーと……」
見慣れない天上、情報を整理する。
──そうだ、私魔王の城に来て、なんか客人みたいな扱いされてるんだ……──
「うーん、どうしようかこれから」
「リア様、着替えましょう。その後朝食が準備されてますので」
「ああ、うん分かった」
リアはメアリの言う通りに、服を着替えさせられ、そのまま昨日行った客人用の食事場へと連れていかれる。
出されたものは昨日同様食べきれる量だった。
料理を食べ終わると、部屋に戻り、ふーっと一息つく。
しばらく昨日の続きの編み物をメアリと一緒にやっていると扉が開いた。
視線をやれば魔王が立っていた。
「陛下、どうなされたのですか?」
魔王は足音を全く立てずにリアに近づいてきた。
リアは編み物を籠の中に置き、イオスを見る。
「下がれ」
魔王はメアリにそう命令すると、メアリは何か言いたげだったが頭を下げて部屋を出て行った。
「聖女よ」
「リアという名前がある。魔王サマ、アンタ名前は」
「リアか、私の名前はイオスだ」
「イオスね。それで私に何か用ですかね?」
「私と共にマナの森へと向かってもらう」
「は?」
魔王――イオスの言葉に、リアはハテナマークを量産させた。
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