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マナの森復活~妻にするとかマジですか?~
しおりを挟むはい、なんか木々が枯れた森に連れてこられたよ。
動物の姿も見えないし、水はよどんでるし、なんじゃこれ?
国の城で勉強したマナの森の印象とは全く違うぞ。
木々が生い茂り、動物たちは生き生きとし、川や泉の水は澄んでいる、そして巨大な世界樹が生い茂ってるって言ってたけど、目の前にあるのはげて葉っぱ一枚もないでっかい木なんだけどなにコレ?
イオスの城から空間転移で連れてこられた場所は荒れ果てていた。
リアは何だこれと聞こうとイオスを見ると、イオスは悲痛の面持ちで大樹であったろう枯れ木を見ている。
「これが今の世界樹だ。帝国はマナを大量消費することで発展を遂げた、その反動がこの世界樹と森の姿だ」
「あ、あの発展全部それだったの。なんか嫌な感じするなーと思ったけどそれか」
リアがそういうとイオスは彼女を地面に下ろした。
「リアよ、この森をお前は元に戻せるか?」
「元に戻すって……えーと木々とか生い茂って綺麗でマナを作り出せる状態に?」
「そうだ」
イオスの言葉に、リアはうーんとうなった。
「ま、とりあえずやってみてからにする」
そう言って世界樹だった枯れ木に近づく。
「……」
──魔法覚えさせてもらってないんだよなー、とりあえず念じてみよう──
──戻れー戻れーマナを作れる全盛期よりも元気になれー枯れ木に花じゃなくて葉っぱをつけろー!!──
念じるとリアの体から大量の光があふれ出る。
「この大量のマナ……!! これほどのマナを体にもっていたのか……?! それにこの魔力も……!!」
風のようなものが吹き、リアに集まっているのを見て、イオスは言う。
「あー!! とにかく元気になれー!! 世界樹とマナの森――!!」
リアが叫ぶように言う。
光がさらに広がり森全体を包み込んだ。
そして光の爆発が起き、光の柱が天に上る。
あまりの光にイオスは目を瞑り、そして目を開けた瞬間己の目を疑った。
森の木々は美しい緑に染まり、水は美しく澄んだ色をし、姿を隠していた動物たちは姿を現し、そして世界樹は――
美しい緑の葉で覆われ、さらに巨大になりマナを作り出しているのが分かった。
「おお……!」
感動の声をイオスは思わず上げた。
そしてふと思い出し、リアを見る。
彼女はぺたりと座り込んでいた。
「い、今の何? すっげえ爆発に見えたんだけど……⁇」
起きた出来事を飲み込めていないようだった。
イオスは笑みを浮かべてリアを抱きかかえる。
「これが人々に語り継がれる世界樹だ。全ての命をつなぐマナを生み出す世界樹だ」
「……えーと上手くいったという事でいいのこれ⁇」
成功したように見えるが、いまいちそれを飲み込めこず混乱しているリアにイオスは微笑みかけた。
「ああ、うまくいった。後は――」
「帝国を滅ぼせばいい」
イオスは厳しい面持ちでそうリアに語り掛けた。
「……えーと帝国はマナ消費のを知ってるの?」
「知っている。再三忠告をした、警告もした。だが奴らはやめなかったこのままでは世界が奴らの国の所為で滅びる、それは何としてでも避けねばならぬ」
リアは、厳しい表情のイオスを見て、これは仕方ないと帝国を救うために何かするのを放棄した。
第一そこまでやってやる義理は無い。
正直脅しをかけられた国出身の身としてはどうぞ滅んで、そんな発展は滅びてどうぞ。
というのがリアの本音だ。
そんな事言うつもりもないが、とりあえず自分がやるべきことは何かやった気がしたとリアは思った。
「……あの――ところで私の処遇どうなるの?」
「……」
イオスは何かを考えているような仕草をした、その後まるで子どものような悪戯を思いついたような顔をしてリアを見る。
「私の妃になれ」
「は?」
イオスの言葉にリアは目を丸くした。
──いま、妃っていったよね?──
──……嫁なれったことだよね?──
──何故じゃー!?──
──いやいや、断ったら下手すりゃ国が危ない、私に逃げ道ないじゃーん!!──
「……ナンデ?」
思わずリアは片言になった。
「何悪いようにはせぬ」
イオスは笑ってそう言うと、空間転移し、城へと戻った。
城の玉座の間に戻ると配下の者たちが待っていた。
「陛下どうでした!?」
「聖女の力は確かだった。マナの森と世界樹は戻った後は帝国を滅ぼすのみ!!」
イオスがそう宣言すると、配下の者たちが歓声を上げた。
「そして――」
イオスはリアを自分の横に置いた。
「聖女を我が妻とする」
一気に静まり返る。
「「「えええええええええ!!」」」
驚愕の声が一気に上がった。
「陛下!! さすがにそれはどうかと……」
「……何か不満でもあるのか?」
何か言いたげに言葉をかけた大臣に、イオスは鋭い視線をぶつける。
「その陛下、貴方様はその……いえ、なんでもございません」
大臣は口を閉ざした。
リアは不満の目で見られると思いきや、同情の眼差しを向けられているのに気づく。
今まで妃になった人で何かあったのか?
リアはそれくらいしか考えられなかった。
イオスは長いこと自分と配下の者以外立ち入らせない自室へとリアを招きいれた。
二人の後ろを侍女のメアリがついて歩いて入る。
「私の部屋だ、好きにくつろぐといい……」
「いや、そういわれても……」
リアは広い部屋に、招かれて何とも言えない顔をする。
「私は政務に戻る」
イオスはそう言うと部屋を出て行った。
メアリと再び二人っきりになったリアは椅子に腰をかけて深いため息をついた。
「どうしてこうなるのさー!?」
頭を抱えてリアは叫ぶ。
「……それに偉そうな人達、みんな私に同情の眼差し向けて……何魔王の妃って何か不幸になるジンクスでもあるの⁇」
「ジンクス?」
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そう言うと、メアリは少し表情を暗くした、どうやらあまり明るい話題ではないらしい。
「その……陛下が選んだ妃は一人もいないので断言はしませんが……かつて妃になった方々がいたそうですですが……」
「ですが……?」
「陛下の暗殺目的だったり、性格が高慢だったりと色々アレだったらしく全員陛下が殺めております……」
「ギャー!!」
──いやだ!!──
──私はまだ死にたくない!!──
頭を抱えるリアに、メアリは精一杯微笑んで言う。
「でも、リア様はそういうのがないので大丈夫かと思います……ただ……」
「ただ?」
「その……陛下は滅多にしないらしいのですが……夜伽をした女性はその皆……」
「うぎゃー!!」
──いやだ!!──
──腹上死も、その時に殺されるのも嫌だ!!──
──死にたくない!!──
「でも、大丈夫です! リア様なら!!」
「私経験ないよ!!」
「……多分、大丈夫だと思います!!」
「メアリ頼むからそんな心にもないこと言わんでちょうだいー!!」
リアは頭を抱えた。
食事も喉が通らず、気分転換の風呂もあまり気分転換にならず、今までイオスが一人で寝ていたであろうベッドに入って目を開けていた。
「……」
──命の危機があるのに寝れるか畜生!!──
眠れぬまま、深夜になると扉が開いた。
「なんだ、まだ眠っておらぬのか」
「……」
──眠れるか畜生!! あんな話聞いたら怖くて眠れんわ!!──
イオスは召使いも使わずに、一人で着替え、動きやすそうな服に着替えた。
──ひぃいいいい!!──
リアは心の中で震えた。
表には決して出さず、できるだけ平静を保って。
イオスがベッドに入ってくる、冷や汗が出そうで、口から心臓が飛び出そうで非常に恐ろしかった。
しかし、不安なリアの予想は覆された。
頭を撫でられた。
「緊張して眠れぬのか、なら子守歌の一つでも歌ってやろう」
聞きなれぬ言語の歌が聞こえてきた。
少しずつ、緊張がほぐれ、眠くなってくる。
リアはそのまま歌声に誘われるように眠った。
眠りに落ちたリアを見て、イオスは小さくため息をついた。
「大方侍女から私の過去の妃や女達のことを聞いたのだろう、まぁ仕方ないことだがな」
怒っている風ではなく、自嘲の呟きをする。
そして、額にそっと口づけた。
「流石に嫌がる妻に無理矢理はせんよ」
くすりと笑って、リアの黒い髪に口づけをした。
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