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猫被りはバレたくないもの~母国の家族には~
しおりを挟む「王国をもう陥落させたの?」
リアは王国陥落の知らせをメアリから聞き、服を着替えながら首をかしげる。
「随分あっさりと陥落したわね、何かあったの?」
「詳しいことは陛下にお聞きください、今陛下は処遇を決める会議に出ております」
「じゃあ、部屋で待つか」
リアはそう言うと王室用の浴場を後にした。
部屋でしばらく待っていると、イオスが入ってくる。
イオスが入ってくるとメアリは部屋から頭を下げて出て行った。
「ずいぶんあっさりと陥落させれたね」
「其方のおかげだ」
「は? 私?」
リアには心当たりが全くなかった。
「マナが活性化したことで、マナを吸収して使用する兵器に対して、魔術でマナを一時的に何百倍にも増幅させ、エネルギー炉を爆発させれるようにしたら見事成功してな、兵器が全部一瞬でガラクタになったところを兵たちに叩かせた。魔術と兵の力はこちらの方が圧倒的に上だからな」
「……えーと私がしたの何?」
「マナの活性化だ、これがなかったらあの魔術は作れなかっただろう」
「でも、その魔術があったらマナ増やせたんじゃ」
「言っただろう、一時的だと。しかもマナが活性化してない時に使用したら激減してますます死活問題になっていた」
「へー……」
──めっちゃややこしい!!──
面倒な世界のなりたちとかだなぁ、と内心思いながらリアは話を聞いている。
「帝国から逃げてた技術者と王族とかの処遇は」
「……それについては其方は知らぬ方がよい」
「あ、わかった」
ただ隠すのではなく、知らない方がいいと正直に言ってくれるだけありがたかった。
関係のないことだ、と言われるとどうにかして調べたくなるからだ。
そして後悔するよりは、聞かないほうが幸せだと最初から言ってくれるのがありがたかった。
「それにしても、国また潰しても良かったの?」
「あの国はよその国からも相当嫌われてるからな、昔からあるというだけで他の国よりも優位に立とうとしているのを嫌われていた」
「……ちょっと待てあっさり陥落した理由って」
「ああ、他の国にも情報伝達魔法情報を伝えたら伝えた国々が兵士の増援に来てくれてな、それもある」
「うわぁ」
──ここまで嫌われるって相当だなぁ──
「ちなみに、其方の母国も兵を出してくれたぞ、其方の兄にもあった」
「げ」
あの日以来会っていない「兄」の事を思い出す。
妻にされたなんて情報が届いたらあの「兄」は相当暴れるか何かしていたのではないだろうかと焦った。
「しばし睨まれたぞ」
「……デショウネ」
「『私の妹はどうしておられますか』と聞かれたな」
「……ナントコタエマシタカ?」
「『我が民から愛されて過ごして居るよ』と答えたところ」
「……ナンデショウ」
「『ですよね!! あの可愛くて、優しくて、神の寵愛を受けてる妹ですもの、その上民だからということで見下すような性格じゃなくて優しい性格ですもの当然ですよ』とかべらべら喋り出してお付きが止めるまでお前の自慢話がすごかったぞ」
「……ワァ」
リアは遠い目をした、「兄」達この本性は知らない方がいいだろうと思ったのだ。
「其方のその性格については言っておらぬよ、ひっくり返ると思ったからな」
「本当それ助かる……」
「『貴方の国に様子を見に行きたいですが、私共にはできませぬ、故に妹を、リアを大事にしてください』とは言われたがな」
「見に来ないで兄さま達」
リアは真顔で言った。
正直来られたら気が休まらない、今以上に。
「『侍女を……』と言われたが、リアは不要だというだろうと言っておいた」
「うん、向こうの国の侍女に来られたらきっつい」
「初めて会った時、こっちが本性だと暴露する聖女は其方位なものだぞ」
「うるせー」
「さて、私は再び政務に戻る、其方はしばし城で大人しくしているといい」
「何で?」
イオスの言葉にリアは首をかしげる。
「逃亡者が其方の命を狙わぬとも限らぬ、そこも含めて逃亡者がいるかいないかの調査も今やっているのだ、本当に落ち着くまで少々辛いだろうが大人しくしているように」
「へいへい」
イオスはリアの頬にキスをしてから出て行った。
リアは一人っきりの部屋で伸びをする。
すこしするとメアリが部屋に入ってきた。
「リア様、しばらく民達と会えないのは辛いでしょうが我慢してくださいませ」
「辛くはないよー……まぁ、寂しくはあるけどね、後暇!!」
「では編み物をしましょう」
「メアリ編み物進めてくるよねぇ」
「編み物、楽しいですよ」
「まぁ、暇つぶしにはなるけどね……」
リアは嬉々として編み物の道具と毛糸を取り出したメアリを見て、少しげんなりした顔をしつつ、編み物を始めた。
この騒動が落ち着くまで、一か月を有した。
逃亡者を捕えて処罰する。
技術者や、王族、大臣たちの処罰、処遇。
どうなったのか、リアには届かなかった。
全てイオスが情報を届かないようにさせたのだ。
一か月間、イオスは寝室には来ず、別室で仮眠を取りつつ過ごしているようだった。
色々とやることが多いようだ、しかし大臣とかを捕まえて話を聞けば、イオスでなければもっと時間がかかっていたという事ばかりを聞かされる。
「……あいつ、色々有能なんだなぁ、伊達に年数重ねてねぇんだな」
リアはぼそりと呟く。
そしてその日の夜、リアが寝室で眠ろうとすると、イオスが入ってきた。
酷く疲れ切った顔をしていた。
「イオス」
リアはイオスの側に近づき、彼を抱き寄せた。
「お疲れ様……」
「問題が山積みだ……」
「一気にやろうとせず、一つずつやろう? 私が手伝えるなら手伝えるから」
「……リア」
「何?」
「ありがとう……」
「どういたしまして」
リアはそう言ってイオスの背中をぽんぽんとなでた。
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