絶世のハンターは魔族に狙われ、情報屋に抱かれる

琴葉悠

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絶世のハンターは狙われる

情報屋の憂鬱

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 一週間軟禁という状態から解放されると、ディストは体が少し疲労感に苛まれているのにも関わらず、仕事を受けた。
 マリーはとりあえず簡単なものからということでアンデッドの討伐を依頼した。
 ただ、マリーのもとに依頼が来た時と状況が変わっていたのは悪かった。
 アンデッドの数が増加していたのだ。
 最初は数体位だったが、今では数十体まで増えていた。
 だが、ディストはそんなことをお構いなしに、アンデッドを次次と切り捨て浄化していく。
「……」
 アンデッドの討伐を初めて数分、ディストは異変に気付いた。
 一向にアンデッドの数が減っていないのだ。
 ディストは範囲浄化を試みる。
 何か呪文のようなものを小さく呟くと周囲が輝きだす。
 強く光るとアンデッドの群れは塵になった。
 ディスト依頼を完了したと思い、その場から離れようとするがうめき声に振り替える、本来浄化され、塵と化したアンデッドが塵からアンデッドの姿に復元されていた。
 ディストはアンデッドの討伐を止め、周囲を見渡す。
 魔力と瘴気が濃い部分があった。
 そこへ向かう、それは墓だった。
 その墓を銃で破壊しようとするとはじかれた。
 すぐさま剣に持ち替えて、墓石を破壊しようとすると剣を何者かが掴んだ。
「アンデッドにするには惜しい贄が来ましたか、嘘の情報を流すのも手ですね」
 墓石を砕いて、全身つぎはぎだらけの男が現れた。
 強い魔力と瘴気を放っている。
 瘴気の濃さに、ディストは思わず口元を抑えた。
「おや、あなたダンピールですね? おかしいですね普通のダンピールはこの程度の瘴気は平気なのはずですが……まぁ、いいでしょう。美しさは他のダンピールを超えているのですから」
 男は――魔族は薄い笑みを浮かべながら、指を鳴らした。
 アンデッドたちが肉塊になり、不気味な魔物に変貌する。
 その瞬間周囲が魔界化し、先日とはくらべものにならない瘴気と魔力で周囲が覆われる。
 まだ完全に回復していないディストにとっては、非常に猛毒だった。


「だー!! マリーの阿呆!! 偽の情報で安心して俺のところにディストよこさないって何やってるんだ!!」
 ディストが心配でマリーの店に来たクロウは、依頼書と場所を見た瞬間マリーが珍しく嘘の情報につかまされたことに気づいて空間を裂いて店の倉庫に行き、武器を持ち出し、再び空間を裂いてディストのもとに直行した。
『すみません!! すみません!! 今回ばっかりは私のミスです!! ごめんなさい!!』
「ごめんで済んだら神なんかいらねーよ!! マジで!!」
 通信しクロウは怒声を飛ばしながら、走り続ける。
 人間では到底出せないスピードで。

「あ……が……」
 無数の触手に体を蹂躙され、口内と後孔と犯される。
 腕は自分の力よりもはるかに上の力で押さえつけられ反撃が許されない。
 瘴気に体が侵され、力が出ない。
 意識が飛びそうになるのを必死にこらえる。
「貴方は人形にして差し上げましょう、きっと美しい――」
「アホなこと抜かしてるんじゃねーよ」
 クロウが結界をぶち破りその場に飛び込んでくる。
 肉塊を炎を纏った剣で突き刺すと、肉塊が炎上し、耳障りな声を上げて消滅した。
「な、なんだ貴様!!」
「ただの情報屋兼、てめぇが手を出した美人の恋人だボケェ!!」
 燃え盛る異形と化した手で魔物の顔面をわしづかみ握りつぶす。
 魔物は頭部を失ったとたん肥大化し、不気味な触手の魔物になった。
 クロウは異形と化した手で、巨大な魔物を引き裂いて燃やし尽くした。
 魔物は燃え上がり、浄化された。
「ディスト!!」
 ぐったりと地面に倒れているディストにクロウは急いで駆け寄る。
 服装が破かれており、顔色はいつもより青白く変化していた。
「おい!」
 うっすらと開いた目が血の色をしていた。
 赤でも緋色でもない、血の色だ。
「やべぇ」
 ガチガチと歯を鳴らしているのを見て、クロウは足で空間を砕いてマリーの店へと移動する。
「おい、マリー薬よこせ!! ディストがやべぇ!!」
「貴方が来てから準備してました鞄ごと持って行ってください!!」
 店で何かを準備していたマリーは大きめの鞄を出し、クロウはディストを抱えたままそれを掴むと、もう一度空間を足で破壊して自分の店へと移動した。
「空間は直しておきますからー!!」
 空間の壊れた部分からマリーの声が聞こえた途端、割れた箇所は元通りになっていた。
 クロウはそれを気にする余裕もなく、寝室に移動し、ベッドにディストを寝かせると点滴で液体を投与し、叩き起こして無理やり薬を飲ませる。
「あー、マリーにディストに出す仕事全部いったん俺に見せてからにしろっていうべきだなこれ……」
 部屋中に、お香のような物を炊きながらクロウはため息をついた。
「……でも、あいつ俺が過保護だからってなかなかそうさせないんだよなぁ……状況考えろよ、今回みたいなことがまたあるかもしれないだろうが……」
 疲れたように、ソファーにどかっと腰を下ろした。
「くそ、ここ最近心臓にわりぃ」
 近くにあったコーラの瓶を手に取り、飲み干す。
「炭酸抜けてる、まったく」
 空瓶をテーブルに置くと、ぎしっとソファーにもたれる。
「……もう少し情報探るか」
 そういうと、部屋に術式を作動させ、何かメモ書きをベッドの隣の小さな棚の上に置いて出て行った。


 一日ほどたった夜、ディストは目を覚ました。
 目の色も普段の黒に戻り、肌もいつもの白さを保っていた。
 点滴を引き抜き、起き上がる。
 まだ頭の痛みや、全身の痛みがあり、吐き気もするが動けるようにはなっていた。
 近くに置いてあるメモ書きに視線を落とし、手に取る。
 メモ書きには――

『一週間!! 一週間は安静にしてろ!! 薬も棚の一番上にあるから飲め!! じゃなきゃお前が化け物になるぞ!! 冷蔵庫に俺の血入れといたから飲め!! いいな!! 二日位でかえって来る時確認して減ってなかったらどうなるか分かってるよな?』

 と書かれていた。
 メモを置き、棚の一番上の引き出しを開けると薬が入っていた。
 色違いの薬を三錠手に取り、飲み干す。
 そしてベッドに再度横になった。
 そして目を閉じた。

 次ディストが目を覚ました時、酷く喉が渇いていた。
 吸血衝動が沸き起こる。
 それと同時にすさまじい吐き気がした。
 吸血衝動を抑えながら、バスルームに向かい、トイレに顔を突っ込む。
 口から毒々しい色の吐しゃ物が出てくる。
 普通の家なら物が焼けこげ消滅してしまうが、クロウとマリーの術式を施された家なのでそれはなかった。
 体を汚染していた、その物体をすべて吐き出す。
 吐き出す物がなくなると、近くにおいてあるタオルで口を拭って洗濯機に放り込む。
 吐き気が治まった次に問題なのは吸血衝動だった。
 心の底から血を飲みたくはなかったが、今はそう言ってられる状況ではないのは自分でも分かっていた。
 冷蔵庫にしまってある真っ赤なボトルを見つけると、それを飲み干した。
 血の味がした、よく飲まされているクロウの血の味だった。
「……」
 ボトルはまだ何本か残っていたが、一本だけにし、空っぽになったボトルをゴミ箱に捨てた。
 再び、棚に入ってる薬を飲み干し、そのままベッドに横になった。
 ぐっと血を吐き出したい衝動をこらえ、目を閉じ、眠りに落ちた。

「あーくそ!! 状況最悪じゃねぇか!! 教会は役にたたねぇし、ハンターは今ロクなのがいねぇし!!」
 次の夜、クロウが悪態をつきながら店に戻ってきた。
「……正直めっちゃ嫌だけど俺復帰したほうがいいのか……」
 深刻そうな顔をしてガラスに映る自分を見る。
「どうすりゃいいんだよベリル……」
 誰かの名前を呟いた。
「……それよかハニーだ、ちゃんとメモ書きみて言うこと聞いてくれたか?」
 寝室へと向かった。
 寝室ではベッドの上でディストが眠っていた。
 近くにより、棚の薬が減っているか確認する、予想よりは減っていなかった多分眠っていてあまり飲めなかったのだろうと予測した。
 次に冷蔵庫を見た、七本あるうちに一本だけが減っていた。
「……まぁ、一本飲んだだけでもマシか」
 少し渋い顔をするが、何とか自分を納得させようとする。
「……眠りが深いな……大丈夫か……?」
 深く眠っているディストの髪を撫でる。
 ディストの長いまつげが震える。
 ゆっくりとディストが目を覚ました。
「おはようハニー、もう夜だぜ」
「……」
 ディストは起き上がろうとするが体がよろめいていた。
「無理に起きようするなって」
 クロウはディストの体を支えつつ、小棚から薬を出す。
 少しだけディストの体を支えるのをやめて、薬を取り出す。
 薬をディストの口の中に入れると、冷蔵庫から水を持ってきて飲ませる。
「今血持ってくるから」
「いらん」
「あ゛ー! なんで血のことになると強情なのハニーは!! 飲まないとマジやばいんだよ!! 普通の人なら血飲んだら逆にやばいんじゃない? って思うかもしれないけど全然飲んでないハニーは逆に飲まないと体もたないの!! 瘴気に対抗できないの!! わかって!! マジで!!」
 クロウはそういうと、ナイフで自分の指を切った。
「直接のほうが栄養とれるだろ、ほら」
「……」
 ディストがぷいっと顔をそむけると、クロウの表情がこわばった笑顔になり、ディストの顔を自分のほうに向けて口の中に指を突っ込んだ。
「んぶ……」
「いいから飲め」
 ディストの口の中に、クロウの血の味が広がる。
 目が赤くなり、吸血本能がざわめく。
 噛みつきたい欲を押し殺して、舌でその傷口を血を舐める。
 傷がふさがるのを見計らってクロウは指を口から抜く。
「あと四日はちゃんと血を飲め、まじで取返しのつかないことになるぞ」
 クロウは手をタオルで拭きながら言う。
 そしてディストをベッドに再び寝かせた。
「いいから、今は休め」
 ディストは再び目をつぶり眠りに落ちた。
「あー……溜まるなぁ、元気になったら抱きつぶしてやる」
 クロウはそう言ってソファーに寝っ転がり眠りについた。


 四日後、無理やり血を飲まされたり、薬などを服用した効果でディストの体調はよくなっていた。
 だが、まだ万全でないというのに、ディストは依頼を受けにマリーのもとを訪れようとしたのでクロウは問答無用でベッドに押し倒した。
「俺一週間は絶対安静って言ったけど、一週間たったら仕事しに行って良いとは一言もいってないからな」
 ベッドに押したされながらディストはそれに抵抗しようとするが、腕力などもクロウの方が勝っている為、抵抗にならない。
 二人が暴れても壊れない頑丈なベッドに、今のディストでは壊せない拘束具を使ってディストをベッドに縛り付ける。
「今回も薬使うからな、いい加減学習してくれ」
 瓶の中の液体を口にし、クロウはディストに口移しをする。
 ディストはそれから逃れようとするが、クロウは液体を飲むまで舌で口内を犯した。
 ようやくクロウの唇が離れると、ディストは荒い呼吸をし始めた。
 目が少し赤く染まる。
 クロウは服を脱がされているディストの後孔のナカに液体を塗りたくった。
 塗られたディストはガチガチと歯を鳴らし、男根からはとろとろと白い液体が垂れ始めていた。
 クロウは特性のローションで自身の雄を濡らすと、ぽっかりと開いたディストの後孔に挿入した。
「が……あ……」
 ディストはのけ反り口から舌を出して鈍い声を上げた。
 挿入の衝撃で彼の雄からは白い液体がどぷどぷと吐き出され、ディストの腹を汚した。
「普段どれだけ鈍くしてるんだ、イキすぎじゃないか」
「だ……ま……れ……!」
 呼吸荒く、汗をじっとりとかいて、快感に震えているディストは拒否の言葉を紡ぐ。
「言っとくけど、どうせ一週間安静が終わったら動くだろうと思ってたから暫く抱き続けるぜ、逃げれると思うなよ」
 クロウはそういって、ディストの唇を軽く舐めた。
 突き上げる度に粘質的な音が部屋に響く。
 ディストのくぐもった喘ぎ声じみた声がそれに混じる。
 ぎしぎしと拘束具が鳴り、ディストはのけ反り、口から艶めかしい舌を出してかすれた声を上げる。

 ナカは突き上げる度にぎゅうぎゅうと締め付け、男根からは白濁液が漏れる。
 突き上げる度に絶頂に達しているのがクロウには分かった。
 よくこれで、魔族と戦い犯されても何も感じない状態にしてるなと感心もした。
 だが、そんな彼を自分だけが絶頂に上らせて快感に浸らせていると考えるだけで、興奮した。
 その為か、なかなか自身の雄が萎えることがない。
 欲を何度も奥へ吐き出し、こぼれるようになってもなお突き上げ続けた。

 絶頂に何十回も登らせられ、意識が焼き切れ、気を失ったディストを見て、クロウは漸く自身を抜きっとった。
 既に白濁液が漏れていた後孔からどろっと白濁液がこぼれた。
「……」
 自身のを拭いてから、仕舞い、ズボンのチャックを上げる。
「……こういう事しつづけないと止められないってのも面倒だな……」
 クロウは深いため息をついた。


 次の日の夜、ディストが目を覚ますと、両腕両足がベッドに拘束されていた。
 出せる力をもって引きちぎろうとしてもびくともしない。
 前日クロウが言っていたことを有言実行しようとしていることをここで再確認した。
 はぁと息を吐く。
「何故俺の邪魔ばかりする……」
「そりゃあハニーが目的達成するには力不足すぎるからだよ」
 あきれ顔でクロウが寝室に入ってきた。
「ハニーが他のダンピール同様血を摂取してたら問題ないかもしれないけど、ハニーは血を飲まない、力は衰弱していく一方だ」
「……」
 クロウの言っていることは最もだった。
 食事を必要とする生き物なら、食事をしなければ衰弱してその内死んでしまう。
 ディストはその状態にある、それを防ごうとクロウが無理やり血を飲ませている。
 だが、ディストにはどうしても血を飲むのが嫌な理由があった。
「……父親と母親の殺された様を思い出すのは分かるがそれでもお前はダンピールだ」
 クロウは真面目そうな顔でディストを押し倒すような恰好のまま言う。

 目の前に広がるのは、血を吸うことを不必要とした吸血鬼の父が何者かに塵にされた痕跡と、母が心臓をえぐられ、喉元を魔族に吸われている光景だった。
 地面に広がる血の赤、赤、赤、赤、赤。
 血を吸うと、その魔族が自分にすり替わる。

 吐き気がこみあげてきて、ディストは顔を横に向け透明な液体を吐いた。
 クロウはディストの口を塗れたタオルで拭ってから、シーツを拭いた。
「ディスト、アレはお前じゃない。父親が血を吸わなかったのは母親とお前という存在がいたから不要になっただけで他のことで命を紡いでいた。お前はそれができない、だから血を飲むしかないんだ」
 ディスト思った、何故自分はそれができないのだろうと。
「……それができない理由はいわねぇでおくよ」
 クロウは少し暗い顔つきでそういうと、ディストの額にキスをした。
「……今日は萎えた」
 そう言ってクロウは、ソファーに寝っ転がった。
 ディストはそれを見てから、また目をつぶった。
 体力を消費しないために、眠ることにしたのだ。


 真っ赤な夢を見た。
 自分が無数の人間の血をむさぼる夢を。
 最後にむさぼっていたのは――

「おい、大丈夫か?」
 悪夢にうなされていたディストの目を覚まさせたのはクロウだった。
 最後は覚えていないが、血をますます飲みたくなくなる夢であった。
「今日は血を飲めそうか……」
「……」
 そう聞かれた途端、ディストは白い顔を青白くさせて、顔を横に向けて昨日と同じように透明な液体を吐き出した。
 クロウは濡れたタオルを持ってきて、ディストの口とシーツを拭く。
「仕方ない、今日明日は薬で補うから、薬を飲め」
 クロウは薬と水を用意すると、ディストの拘束をゆるめて抱き起し、薬を飲ませる。
 ディストは大人しく薬を飲んだ。
「一か月は安静だ、仕事したいんならそれくらい休め。お前は絶対休まないだろうからこんなことしてるんだぞ」
 クロウは自身の銀髪をわしわしとかきながら、憂鬱そうにそう言う。
「……俺が……血を飲んでいればどれくらいで動けている?」
「一日。毎日俺の血を摂取してればの話だけどな」
「……」
「マリーが緊急の用事大量に俺に発注したから、一時的に俺もハンター復帰だ、本当はやりたくねぇがな。ハニーは大人しくしてろ」
 クロウは武器を手に持つと、ディストの額を撫でてそのまま出て行った。
 ディストは拘束がほどけないのをまた再確認し、疲れたような息を吐くと再び目をつぶった。

「わーお、こりゃすげぇや」
 魔族が結界を使わないで魔界へと変貌させた街を見る。
「全部掃除するの面倒だな、ま中心部まで行ってぶっ飛ばせばいいか」
 飛んできた魔族の頭を銃で吹き飛ばすと、クロウ髪の毛が真っ黒に染まる。
「さぁ、一騎当千の魔族の大群をも皆殺しにしたクロウ様のお通りだ、雑魚は失せな!!」
 無数の魔族が銃の弾丸を喰らうだけで浄化されていく。
 大型の魔族は銃弾になんとか耐えるが、クロウの剣によって真っ二つにされ浄化される。
 クロウは迫りくる魔族たちを、銃と剣で薙ぎ払いながら進んでいく。
 濃くなっていく瘴気も強くなっていく魔族も物ともせず、進んでいく。
「魔樹かやっぱり」
 中心部には、巨大な樹木に似たような存在――魔樹が根を張り、周囲に瘴気と魔族を輩出していた。
「木は木らしく伐採されてろってんだ!! 花粉みたく瘴気巻き散らかしてるんじゃねぇよ!!」
 剣が炎を纏い、形を変える。
 巨大化し、巨大な木を切り倒せるほどの大きさになる。
「おらよぉ!!」
 クロウはそれを難なく振り下ろし、魔樹を切り倒した。
 魔樹は耳障りな絶叫を上げながら消滅していく。
 魔樹がなくなったので周囲の瘴気が薄れていき、瘴気がなくては生きていけないような魔族達は消え、残った魔族は一斉にクロウに襲い掛かってきた。
 元の大きさになった剣と銃を手に、クロウは魔族達を浄化していった。
 一時間後――
「ようやく収まったか、んじゃ次の依頼だ。マリーめ、俺が強いからって仕事頼みすぎなんだよ!!」
 平穏と呼べる状態になった周囲を見て、クロウため息をつき、依頼をしたマリーへ悪態をついた。
 そしてそのまま次の依頼場所へと向かっていった。
 マリーが出したクロウへの依頼は、その一晩ですべて達成されることとなった。


 朝、クロウはくたびれた様子で店に戻ってきた。
「マジしんど……悪化した依頼ばっか俺によこしやがって……いや、ハニーにそんな依頼いったらハニーだとキツイから仕方ないか……」
 寝室を通り、眠っているディストを確認すると、バスルームに向かった。
 シャワーを浴び、汚れを落とす。
「あ゛ーくそ、教会の連中役立たずばっかじゃねぇか!! マジやってらんねぇ!!」
 クロウはこんな状況を作った人物たちへの悪口を言いながら全身を洗った。
 シャワーを浴び終えると、タオルで体を拭いて店の扉の前に「本日休業」の板を立て、寝室に戻りソファーに寝っ転がって眠った。

 魔界化した世界。
 魔族の爪に切り裂かれた地面に倒れた女性。
 クロウはその女性の名前を叫ぼうとした――。

「……最悪な夢だ、だから復帰したくなかったんだよ……」
 目を覚まし、汗をぬぐうとクロウは再びシャワー室に向かった。
 シャワーを浴びながら呟く。
「ベリル……俺はこれからどうすればいい?」
 答える者は誰もいなかった。




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