45 / 65
夜桜の約束がくれた、小さな勇気
しおりを挟む
私と森野さんの関係がぎくしゃくしたまま、季節は無情にも移ろっていき──
気がつけば、桜がほころび始める頃になっていた。
「え?」
それは木月さんの、少し意外な一声だった。
「今月末、桜がちょうど見頃でしょう? 棚卸の日、早く終わるし……みんなで夜桜見に行きましょうよ!」
普段あまり企画を口にしない木月さんの提案に、私も杉野チーフも目を丸くする。
「いいですね! 柊さん、何か予定ある?」
「いえ……特には……」
盛り上がる二人に返事をしていると、ちょうど森野さんがストック置き場へ戻ってきた。
「森野君! 今度の棚卸の後ね、みんなで桜を見に行くことになったんだけど……森野君も行かない?」
杉野チーフが誘うと、
「え? ああ……別に、いいですけど……」
森野さんはいつもの調子で短く答えた。
(森野さんも……参加するんだ?)
意外すぎて固まっていると、
「何、そんなに驚いた顔してるんだよ」
むっとした顔で、森野さんがこちらを見てきた。
「え、あ……森野さんがイベント事に参加するなんて、意外で……」
そう言う私に、木月さんが笑って言った。
「え! 森野君、花見だけは毎年参加してるわよ?」
(森野さんが……花見……!?)
本気で驚く私に、
「何だよ……悪いか?」
森野さんはむっとした顔で、私の額にデコピンをした。
「痛っ! 何するんですか!」
「生意気な顔したお前が悪い!」
そう言い捨てて、森野さんは杉野チーフの方へ向き直る。
「じゃあ当日、例年通り車出せばいいですか?」
淡々と話を進めていく姿に、胸がほんの少しだけ熱くなる。
「森野さん……宴会嫌いなのに、花見は参加するんですね?」
思わず小声で呟くと、木月さんが微笑んだ。
「あ、そうか。柊さん、北公園の桜知らないのよね。楽しみにしてて。
日本桜百景に選ばれるくらい、本当に綺麗なんだから」
そう言って続ける。
「最初に誘った時は、森野君まったく乗り気じゃなかったのよ?
でも、一度連れて行ったら……それ以来、毎年楽しみにしてるみたい」
「そんなに綺麗なんですか……」
嬉しそうに頷く私に、
「日本人で良かった~って思うくらい綺麗よ」
と、木月さんが悪戯っぽく笑った。
「じゃあ当日、お弁当作って行きましょうか?」
杉野チーフの提案に、私も木月さんも頷く。
「え? 柊、飯作れんの?」
森野さんが、これでもかという嫌な顔をした。
「し……失礼ですね! 私だって料理くらい作れます!」
即座に反論すると、森野さんは鼻先が触れそうな距離まで顔を近づけ、
「期待しないでおくわ」
と鼻で笑う。
(……し、失礼にもほどがある! 覚えてなさいよ!)
久しぶりの会話が嬉しいことよりも先に、
“絶対に見返してやる!” という闘志がメラメラと燃え上がっていた。
気がつけば、桜がほころび始める頃になっていた。
「え?」
それは木月さんの、少し意外な一声だった。
「今月末、桜がちょうど見頃でしょう? 棚卸の日、早く終わるし……みんなで夜桜見に行きましょうよ!」
普段あまり企画を口にしない木月さんの提案に、私も杉野チーフも目を丸くする。
「いいですね! 柊さん、何か予定ある?」
「いえ……特には……」
盛り上がる二人に返事をしていると、ちょうど森野さんがストック置き場へ戻ってきた。
「森野君! 今度の棚卸の後ね、みんなで桜を見に行くことになったんだけど……森野君も行かない?」
杉野チーフが誘うと、
「え? ああ……別に、いいですけど……」
森野さんはいつもの調子で短く答えた。
(森野さんも……参加するんだ?)
意外すぎて固まっていると、
「何、そんなに驚いた顔してるんだよ」
むっとした顔で、森野さんがこちらを見てきた。
「え、あ……森野さんがイベント事に参加するなんて、意外で……」
そう言う私に、木月さんが笑って言った。
「え! 森野君、花見だけは毎年参加してるわよ?」
(森野さんが……花見……!?)
本気で驚く私に、
「何だよ……悪いか?」
森野さんはむっとした顔で、私の額にデコピンをした。
「痛っ! 何するんですか!」
「生意気な顔したお前が悪い!」
そう言い捨てて、森野さんは杉野チーフの方へ向き直る。
「じゃあ当日、例年通り車出せばいいですか?」
淡々と話を進めていく姿に、胸がほんの少しだけ熱くなる。
「森野さん……宴会嫌いなのに、花見は参加するんですね?」
思わず小声で呟くと、木月さんが微笑んだ。
「あ、そうか。柊さん、北公園の桜知らないのよね。楽しみにしてて。
日本桜百景に選ばれるくらい、本当に綺麗なんだから」
そう言って続ける。
「最初に誘った時は、森野君まったく乗り気じゃなかったのよ?
でも、一度連れて行ったら……それ以来、毎年楽しみにしてるみたい」
「そんなに綺麗なんですか……」
嬉しそうに頷く私に、
「日本人で良かった~って思うくらい綺麗よ」
と、木月さんが悪戯っぽく笑った。
「じゃあ当日、お弁当作って行きましょうか?」
杉野チーフの提案に、私も木月さんも頷く。
「え? 柊、飯作れんの?」
森野さんが、これでもかという嫌な顔をした。
「し……失礼ですね! 私だって料理くらい作れます!」
即座に反論すると、森野さんは鼻先が触れそうな距離まで顔を近づけ、
「期待しないでおくわ」
と鼻で笑う。
(……し、失礼にもほどがある! 覚えてなさいよ!)
久しぶりの会話が嬉しいことよりも先に、
“絶対に見返してやる!” という闘志がメラメラと燃え上がっていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
同期に恋して
美希みなみ
恋愛
近藤 千夏 27歳 STI株式会社 国内営業部事務
高遠 涼真 27歳 STI株式会社 国内営業部
同期入社の2人。
千夏はもう何年も同期の涼真に片思いをしている。しかし今の仲の良い同期の関係を壊せずにいて。
平凡な千夏と、いつも女の子に囲まれている涼真。
千夏は同期の関係を壊せるの?
「甘い罠に溺れたら」の登場人物が少しだけでてきます。全くストーリには影響がないのでこちらのお話だけでも読んで頂けるとうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる