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回り出す運命
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「創、話があるので院長室に来なさい」
あの日から、僕の毎日は変わった。
流されるのでは無く、抵抗するようにしてみた。
……とはいえ、2人がかりで襲われるので、部屋に鍵の無い僕には勝ち目が無い。
それでも、何とかしようとあの手この手を尽くし、もう万策尽きるかと思っていた時、父親から連絡が入った。
高杉総合病院に勤めるようになり、半年が過ぎた頃だった。
兄達が学会で出張に行っていた時、父の居る院長室の部屋に初めて足を踏み入れた。
「呼び出して悪かったな」
そう言うと、院長室の机に鍵と通帳を置いた。疑問の視線を投げると
「これはお前の母親が住んでいた家の鍵だ。そしてこれは…お前の母親が、お前の為に残したお金だ」
そう言われ、鍵と通帳を受け取る。
通帳には、結構な金額が入っていた。
驚いて父親の顔を見ると
「あの者達にバレないよう、隠すのに必死だった。創、それを持って家を出なさい」
そう父親は言うと、ゆっくりと僕に近付き頭を撫でて
「長いこと、辛い思いをさせて済まなかった。もう、自由になりなさい」
と言ったのだ。
そして
「誰になんと言われようと、私が愛したのはお前の母親ただ一人だ。そして創、お前に恨まれていても、私にとってお前は可愛い息子だ」
と続けた。
「今更、そんな事!」
そう叫んだ僕に
「あの者達に襲われ、必死に救いを求めたお前を救えなかった事は…ずっと後悔していた」
と言って頭を抱えた。
「あんな出来損ないの馬鹿な子達でも、創と変わらなく愛していた。でも、過ちを正すべきだった。創……本当にすまない」
深々と頭を下げる父親に、僕は首を横に振りながら
「信じない……あんたも、兄様も母様も……みんな汚い!」
そう吐き捨てて院長室を飛び出した。
(でも、1番汚いのは……僕自身だ)
飛び出した足で、無意識にあの喫茶店に足を運んでいた。
「いらっしゃいませ」
と微笑む彼に、無性に会いたくなった。
彼の控え目な、はにかむ様に笑う笑顔が見たかった。
お店のドアを開けると、そこには彼の姿が無い。
店内に視線を巡らせると
「いらっしゃいませ。お待ち合わせですか?」
と店員に聞かれた。
「あの!この間居た、大きな店員さんは?」
そう聞くと
「この間……?あぁ!もしかして、熊谷ですか?」
と言われて、(苗字は熊谷というのか…)と考えていると
「彼、臨時のバイトだったので、もう居ませんよ」
そう言われて愕然とした。
あの日から、僕の毎日は変わった。
流されるのでは無く、抵抗するようにしてみた。
……とはいえ、2人がかりで襲われるので、部屋に鍵の無い僕には勝ち目が無い。
それでも、何とかしようとあの手この手を尽くし、もう万策尽きるかと思っていた時、父親から連絡が入った。
高杉総合病院に勤めるようになり、半年が過ぎた頃だった。
兄達が学会で出張に行っていた時、父の居る院長室の部屋に初めて足を踏み入れた。
「呼び出して悪かったな」
そう言うと、院長室の机に鍵と通帳を置いた。疑問の視線を投げると
「これはお前の母親が住んでいた家の鍵だ。そしてこれは…お前の母親が、お前の為に残したお金だ」
そう言われ、鍵と通帳を受け取る。
通帳には、結構な金額が入っていた。
驚いて父親の顔を見ると
「あの者達にバレないよう、隠すのに必死だった。創、それを持って家を出なさい」
そう父親は言うと、ゆっくりと僕に近付き頭を撫でて
「長いこと、辛い思いをさせて済まなかった。もう、自由になりなさい」
と言ったのだ。
そして
「誰になんと言われようと、私が愛したのはお前の母親ただ一人だ。そして創、お前に恨まれていても、私にとってお前は可愛い息子だ」
と続けた。
「今更、そんな事!」
そう叫んだ僕に
「あの者達に襲われ、必死に救いを求めたお前を救えなかった事は…ずっと後悔していた」
と言って頭を抱えた。
「あんな出来損ないの馬鹿な子達でも、創と変わらなく愛していた。でも、過ちを正すべきだった。創……本当にすまない」
深々と頭を下げる父親に、僕は首を横に振りながら
「信じない……あんたも、兄様も母様も……みんな汚い!」
そう吐き捨てて院長室を飛び出した。
(でも、1番汚いのは……僕自身だ)
飛び出した足で、無意識にあの喫茶店に足を運んでいた。
「いらっしゃいませ」
と微笑む彼に、無性に会いたくなった。
彼の控え目な、はにかむ様に笑う笑顔が見たかった。
お店のドアを開けると、そこには彼の姿が無い。
店内に視線を巡らせると
「いらっしゃいませ。お待ち合わせですか?」
と店員に聞かれた。
「あの!この間居た、大きな店員さんは?」
そう聞くと
「この間……?あぁ!もしかして、熊谷ですか?」
と言われて、(苗字は熊谷というのか…)と考えていると
「彼、臨時のバイトだったので、もう居ませんよ」
そう言われて愕然とした。
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