サイコラビリンス

國灯闇一

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2章 青春の秘め事

3dbs-中学生の隠蔽工作

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 休憩時間、小見川達は人気ひとけのない校舎裏に集まった。

「昨日の続きをしよう。一番考えなければならないのは、遺体の隠し場所だ」

 小見川は優先事項を提示する。

「川に流せばいいんじゃないのか?」

 根元は校舎の外壁を背にして言う。

「どこの川に?」

「例えば、綱志河川つなしかせん

「どこ?」

 鹿倉はピンと来てなかった。

「口で説明すんの難しいな。めっちゃ地味な建物しかないし」

 根元は苦い顔で校舎のすぐ近くにある急な坂に視線を振る。大きなトラックが大きなコンテナを背負って坂を上っていた。

「悪いが却下だ」

 小見川は手に持った携帯をいじりながら否定した。

「何で!?」

「川に捨てるにしても、海に捨てるにしても、リスクが高過ぎる。川の途中で何かに引っかかったらそこに遺体が残る。川釣りをしている人間が興味本位に拾うことだってある」

「遺体は浮く。たとえおもりをつけて沈めたとしても、時間と共におもりを繋げる物は劣化する。川の水位も、一定じゃない」

 冴島も否定的な理由を提示する。

「じゃ、山林の中?」

 根元は次の提案を示す。

「でも、この辺に山なんてないだろ」

 熊田は購買で買ったパンをかじる。

「山に埋めるのは反対だな」

「じゃあどこならいいんだよ」

 根元は反対ばかりする小見川にいらつく。

「砂浜」

「砂浜って海の砂浜?」

「そうだ」

「あそこも人がいっぱいいるだろ。釣り人だっているかもしれない」

「誰が埋めるって言った?」

「へ?」

「放置するんだよ。海にあるあそこに」

 小見川はほくそ笑んだ。


 小見川達は普通に学校で授業をこなし、演劇部の活動を行った後、地域の図書館へ行って調べ物をした。だが、カードを作って借りることはなかった。図書館で必要そうな知識をノートに書き写した。

 また別の日には自転車で行ける海へ行って、隠せそうな場所を探索した。10月終わりの海は、サーファーや釣り人くらいしかいなかった。


 後日、小見川達は秘密のアジトを手に入れた。人が寄りつかなかくなった廃墟。くすんだ外壁はほぼ黒く染まっている。廃墟の中には脚が折れて倒れたテーブルや穴の空いた床が散見され、小見川達に何か出るんじゃないかと想起させた。

 ここは心霊スポットとしても一時有名になったそうだ。しかし、交通の便が悪いこともあって、心霊マニアでさえここに来ることはまれらしい。
 ここを活動拠点にした。

「さ、科学の実験をしようか」

 小見川はそう言って笑みを浮かべた。

 小見川達が持ち寄ったのは購入した肥料。大きな袋で包まれている。

「それ、どうやって手に入れたんだよ?」

 冴島は怪訝けげんな様子で聞く。小見川は白い歯を見せて、「企業秘密」とはぐらかした。
 耐熱性の鉄のボウルに肥料を少し入れ、大きな石で組み上げた即席コンロの上にボウルを置いて、火にかけた。
 ある程度火にかけたら冷まし、そこへ瓶に入った液体を入れる。
 その過程は何度も繰り返され、数週間を費やした。
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