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2章 青春の秘め事
4dbs-枯れていく春
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小見川達は遂に隠蔽に必要な物を完成させた。学園祭まであと3日という時期だった。
学園祭では演劇部やクラスの出し物など、小見川達にはやることがたくさんある。計画実行は学園祭が終わった後ということになった。
学園祭当日、校庭で特設屋台が並び、各々趣向を凝らした外観が際立っていた。小見川達のクラスは焼きそばを出していた。
熊田が表に立ってレジを担当している。鹿倉も同じようにレジを手伝っていた。小見川と冴島は他のクラスメイトと調理を担当していた。調理を担当する小見川と冴島の手首はそろそろ悲鳴を上げようとしていた。鉄板から立ち昇るスパイシーな熱気がヘラを持つ手や顔にかかり、汗が滴っている。
「もう死にそう……」
冴島が弱音を吐いた。
「もうすぐで休憩だろ。頑張れよ」
「……ありがとな」
「そんなことでお礼言わなくていいよ」
「そうじゃなくて、本当に、ありがとう」
冴島が赤ちゃんのことを言っていると分かった。
「……いいよ。それと、それはここで言うことじゃないし、まだこれからだ」
「そうだな」
冴島はちょっと笑みを見せた。
演劇部の演目も無事終了し、3年生が今日で部活を卒業するということで打ち上げが行われ、大いに盛り上がった。
5人は夜の街で疲れに疲れた体を運ぶ。
「これで俺達に主役級の役が回ってくるなぁ!」
熊田は調子良く下品なことを言い出す。
「まあな~」
根元のテンションが思ったより低い。それに意外そうな反応を示す4人。
「どうしたんだよ根元。お前、狙ってたんじゃないのかよ~」
熊田は不満げに呼びかける。
「だってさぁ、明日から三好先輩いないんだぜ? 三好先輩を見るためだけに演劇部に入ったのに、これじゃあ意味ねぇよ~」
「主役で凄い演技すれば、モテモテかもよ?」
冴島がニヤニヤ顔で誘惑する。
「モテモテ!?」
「そう! モテモテ!」
「テレビに出るかもな~」
「出ねぇよ」
小見川がツッコんだことで一斉に笑いが起こる。
「来週の土曜日。実行に移す」
小見川が突然切り出した。その瞬間、笑い声が消えた。
「計画は万全だ。俺達なら、必ず成功する」
根元達は緊張した面持ちで強く頷いた。
11月14日。実行日となった。小見川達はクーラーボックスに入れた赤ちゃんの遺体をアジトに持ってきた。
小見川と根元、熊田はアジトで防寒具をめいいっぱい着こんだ。その上から雨具を着て、ぶかぶかの体になった。
ゴーグルを取りつけ、マスクをつける。また、ゴム手袋をつけ、その上から厚い布の手袋をつける。
クーラーボックスを開け、赤ちゃんの遺体を1ヶ月ぶりに見る。何度見ても気持ち悪い。腐敗はかなり進んでいる。
「始めよう」
「ああ」
鹿倉と冴島は離れた場所で様子を見ていた。
着こんだ小見川は赤ちゃんの遺体を即席コンロの中央へ置いた。
「根元。硫酸を」
根元から瓶を受け取った小見川は目を瞑った赤ちゃんの遺体に硫酸をかけ始めた。ゆっくりかけられた体から煙が立ち昇る。鼻をつくような臭いが小見川達に襲う。
「うっ!!」
熊田は思わず顔を逸らした。
小見川は躊躇なく赤ちゃんの体全体に硫酸をかけていく。みるみる体は溶けていき、内容物まで見え始める。根元は眉をひそめて見つめる。
1つの瓶を使い切り、小見川は根元に手を差し出す。
「お、おお」
根元は我に返ってもう1つの瓶を小見川に渡す。小見川は瓶を開け、硫酸を淡々とかけていく。
3つの瓶を使い切り、即席コンロの中央には骨が残っていた。
冴島は泣いていた。自分の愚かな行為によって殺さなければならなかった命を思って、罪悪感を身に刻んでいた。
「回収しよう」
小見川の指示により、内側にガムテープを貼った袋の中に、即席コンロの中に残った骨を入れていく。手袋越しとはいえ、液状の残骸に手を触れるのは嫌だった。小見川と根元、熊田は胸の中でざわめく嫌悪の叫びを押し殺して、作業を続ける。
骨や液状の残骸を全て袋の中に入れ終え、黒い袋を2つ被せて袋を3重にする。
小見川、根元、熊田は鹿倉、冴島にうちわで体を仰いでもらう。3人は両手を広げ、体で風を受け止める。
1時間後、小見川、根元、熊田は服を脱ぎ、即席コンロの中に服を入れていく。着替え終えた3人は、次にスーパーで買った水のペットボトルをリュックから2つ取り出して、足元に置く。小見川は脱いでおいた服にライターで火を点けた。どんどん燃えていく火を見つめながら、小見川達は重くのしかかる罪を噛みしめた。
燃え切った服などを確認した後、水をかけていく。一本のペットボトルを全て使い切ると、黒い残骸をスコップで掬い、ゴミ袋の中に入れる。即席コンロをバラし、黒い焦げ跡の残った床を濡れた雑巾で拭う。咳き込み、吐き気を催しながら懸命に作業を行う。即席コンロで使った石を廃墟の下へ放る。使った瓶や空のペットボトルなども山の中に捨てた。
「行こう」
小見川はみんなを促し、廃墟を立ち去った。
学園祭では演劇部やクラスの出し物など、小見川達にはやることがたくさんある。計画実行は学園祭が終わった後ということになった。
学園祭当日、校庭で特設屋台が並び、各々趣向を凝らした外観が際立っていた。小見川達のクラスは焼きそばを出していた。
熊田が表に立ってレジを担当している。鹿倉も同じようにレジを手伝っていた。小見川と冴島は他のクラスメイトと調理を担当していた。調理を担当する小見川と冴島の手首はそろそろ悲鳴を上げようとしていた。鉄板から立ち昇るスパイシーな熱気がヘラを持つ手や顔にかかり、汗が滴っている。
「もう死にそう……」
冴島が弱音を吐いた。
「もうすぐで休憩だろ。頑張れよ」
「……ありがとな」
「そんなことでお礼言わなくていいよ」
「そうじゃなくて、本当に、ありがとう」
冴島が赤ちゃんのことを言っていると分かった。
「……いいよ。それと、それはここで言うことじゃないし、まだこれからだ」
「そうだな」
冴島はちょっと笑みを見せた。
演劇部の演目も無事終了し、3年生が今日で部活を卒業するということで打ち上げが行われ、大いに盛り上がった。
5人は夜の街で疲れに疲れた体を運ぶ。
「これで俺達に主役級の役が回ってくるなぁ!」
熊田は調子良く下品なことを言い出す。
「まあな~」
根元のテンションが思ったより低い。それに意外そうな反応を示す4人。
「どうしたんだよ根元。お前、狙ってたんじゃないのかよ~」
熊田は不満げに呼びかける。
「だってさぁ、明日から三好先輩いないんだぜ? 三好先輩を見るためだけに演劇部に入ったのに、これじゃあ意味ねぇよ~」
「主役で凄い演技すれば、モテモテかもよ?」
冴島がニヤニヤ顔で誘惑する。
「モテモテ!?」
「そう! モテモテ!」
「テレビに出るかもな~」
「出ねぇよ」
小見川がツッコんだことで一斉に笑いが起こる。
「来週の土曜日。実行に移す」
小見川が突然切り出した。その瞬間、笑い声が消えた。
「計画は万全だ。俺達なら、必ず成功する」
根元達は緊張した面持ちで強く頷いた。
11月14日。実行日となった。小見川達はクーラーボックスに入れた赤ちゃんの遺体をアジトに持ってきた。
小見川と根元、熊田はアジトで防寒具をめいいっぱい着こんだ。その上から雨具を着て、ぶかぶかの体になった。
ゴーグルを取りつけ、マスクをつける。また、ゴム手袋をつけ、その上から厚い布の手袋をつける。
クーラーボックスを開け、赤ちゃんの遺体を1ヶ月ぶりに見る。何度見ても気持ち悪い。腐敗はかなり進んでいる。
「始めよう」
「ああ」
鹿倉と冴島は離れた場所で様子を見ていた。
着こんだ小見川は赤ちゃんの遺体を即席コンロの中央へ置いた。
「根元。硫酸を」
根元から瓶を受け取った小見川は目を瞑った赤ちゃんの遺体に硫酸をかけ始めた。ゆっくりかけられた体から煙が立ち昇る。鼻をつくような臭いが小見川達に襲う。
「うっ!!」
熊田は思わず顔を逸らした。
小見川は躊躇なく赤ちゃんの体全体に硫酸をかけていく。みるみる体は溶けていき、内容物まで見え始める。根元は眉をひそめて見つめる。
1つの瓶を使い切り、小見川は根元に手を差し出す。
「お、おお」
根元は我に返ってもう1つの瓶を小見川に渡す。小見川は瓶を開け、硫酸を淡々とかけていく。
3つの瓶を使い切り、即席コンロの中央には骨が残っていた。
冴島は泣いていた。自分の愚かな行為によって殺さなければならなかった命を思って、罪悪感を身に刻んでいた。
「回収しよう」
小見川の指示により、内側にガムテープを貼った袋の中に、即席コンロの中に残った骨を入れていく。手袋越しとはいえ、液状の残骸に手を触れるのは嫌だった。小見川と根元、熊田は胸の中でざわめく嫌悪の叫びを押し殺して、作業を続ける。
骨や液状の残骸を全て袋の中に入れ終え、黒い袋を2つ被せて袋を3重にする。
小見川、根元、熊田は鹿倉、冴島にうちわで体を仰いでもらう。3人は両手を広げ、体で風を受け止める。
1時間後、小見川、根元、熊田は服を脱ぎ、即席コンロの中に服を入れていく。着替え終えた3人は、次にスーパーで買った水のペットボトルをリュックから2つ取り出して、足元に置く。小見川は脱いでおいた服にライターで火を点けた。どんどん燃えていく火を見つめながら、小見川達は重くのしかかる罪を噛みしめた。
燃え切った服などを確認した後、水をかけていく。一本のペットボトルを全て使い切ると、黒い残骸をスコップで掬い、ゴミ袋の中に入れる。即席コンロをバラし、黒い焦げ跡の残った床を濡れた雑巾で拭う。咳き込み、吐き気を催しながら懸命に作業を行う。即席コンロで使った石を廃墟の下へ放る。使った瓶や空のペットボトルなども山の中に捨てた。
「行こう」
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