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5章 青に濁る
7dbs-検討
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小見川達と別れた貝塚と増古は、本部へ戻るため車を走らせていた。無線から聞こえてくる放火犯の情報が次々と流れてくる。
「どう思った?」
助手席にいた貝塚は不意に聞いた。
「やんちゃだと思いました」
「ああ、無神経すぎるやんちゃさだな」
「はい?」
増古は怪訝な表情で聞く。
「学校にいた冴島卓真は湯藤愛美からデートの誘い兼悩み相談をメールで持ちかけられた。冴島は部活を休み、石滝公園に向かって湯藤愛美の悩み相談を聞いた後、良い雰囲気になったところで公衆トイレに誘い、情事に及んだ。その後、湯藤を個室トイレに残して、冴島は一度石滝公園から出て、家に帰って着替えた。湯藤の着替え用の服を鞄に詰め込み、石滝公園に再び向かった。服を用意したのはセックスした時に汚してしまったため。今の話を要約すると、冴島卓真は悩みを聞いてあげた代わりにセックスを要求した。しかも、湯藤愛美はそれに応じている。彼女もそう言っていた」
「はい。湯藤愛美の証言とも一致しています」
「彼女が悩んでいるのにセックスを要求するか? たとえ要求が逆だったとしても然り、稚拙感丸出しって思うんだよ」
貝塚は肩を竦める。
「まあ、そうですね。部活の悩みですから、性的なものとはまったく関係ありません。傍から見たら小さな悩みですけど、学校まで休んでますからね」
「そう。深刻さを勘付くことができない男子中学生。今回の犯人像からは遠くなる。それが逆に怪しい。わざわざ家に帰って私服に着替えた後、石滝公園に向かう理由は? すぐに向かうと言いながら一度家に帰る理由が分からない。制服のまま行けばいいじゃないか」
「最初からセックスをしようと思ってたんじゃないでしょうか?」
「冴島はセックスに持ち込むように誘導した。ならなぜ最初に着替えを用意しなかった? わざわざ戻って着替えを取りに行く必要なんかない。セックスが目的の普通の男子中学生ならそのくらいの準備はできる」
「そうですね。それと、湯藤愛美が体調が悪いのに外へ出ていたのも気になりますね」
「ああ、本人いわく、父親が気にするかららしいけどな」
「湯藤愛美の父親は、冴島との交際を知っており、承諾もしているものの、心の中では納得はしていない。少なくとも、湯藤愛美はそう思ってるみたいですね」
「珍しくもなんともないな」
貝塚はうるさくなり始めた無線を切った。
「一緒にいた中学生達は仲が良さそうでしたね」
「食い入るように見てたな。あいつらが協力者なら、冴島卓真も犯行は可能だ」
「はい。彼は去年の1月くらいから平均で1ヶ月のうちに3、4回休んでいます。一番多く休んでいるのが5月の計6回。連続で休んでいませんので、さほど気にするようなものではありませんが、湯藤愛美は体育の授業をほとんど休んでいます。一昨年の12月頃から学校を休むようになり、去年の4月から6月においては、全て休んでいます」
車はスクランブル交差点の前で止まる。
「妊娠していたから」
「物証がない以上、引っ張るのは無理だし、彼らが犯人と断定できませんしね」
「調べることは山ほどありそうだな」
空気を切るように吹く風は不穏な音を立て、道に落ちていたごみ屑を飛ばす。スクランブル交差点の間をビニール袋が虚しく転がり、交差点の間を行き交う車に何度も轢かれていた。
「どう思った?」
助手席にいた貝塚は不意に聞いた。
「やんちゃだと思いました」
「ああ、無神経すぎるやんちゃさだな」
「はい?」
増古は怪訝な表情で聞く。
「学校にいた冴島卓真は湯藤愛美からデートの誘い兼悩み相談をメールで持ちかけられた。冴島は部活を休み、石滝公園に向かって湯藤愛美の悩み相談を聞いた後、良い雰囲気になったところで公衆トイレに誘い、情事に及んだ。その後、湯藤を個室トイレに残して、冴島は一度石滝公園から出て、家に帰って着替えた。湯藤の着替え用の服を鞄に詰め込み、石滝公園に再び向かった。服を用意したのはセックスした時に汚してしまったため。今の話を要約すると、冴島卓真は悩みを聞いてあげた代わりにセックスを要求した。しかも、湯藤愛美はそれに応じている。彼女もそう言っていた」
「はい。湯藤愛美の証言とも一致しています」
「彼女が悩んでいるのにセックスを要求するか? たとえ要求が逆だったとしても然り、稚拙感丸出しって思うんだよ」
貝塚は肩を竦める。
「まあ、そうですね。部活の悩みですから、性的なものとはまったく関係ありません。傍から見たら小さな悩みですけど、学校まで休んでますからね」
「そう。深刻さを勘付くことができない男子中学生。今回の犯人像からは遠くなる。それが逆に怪しい。わざわざ家に帰って私服に着替えた後、石滝公園に向かう理由は? すぐに向かうと言いながら一度家に帰る理由が分からない。制服のまま行けばいいじゃないか」
「最初からセックスをしようと思ってたんじゃないでしょうか?」
「冴島はセックスに持ち込むように誘導した。ならなぜ最初に着替えを用意しなかった? わざわざ戻って着替えを取りに行く必要なんかない。セックスが目的の普通の男子中学生ならそのくらいの準備はできる」
「そうですね。それと、湯藤愛美が体調が悪いのに外へ出ていたのも気になりますね」
「ああ、本人いわく、父親が気にするかららしいけどな」
「湯藤愛美の父親は、冴島との交際を知っており、承諾もしているものの、心の中では納得はしていない。少なくとも、湯藤愛美はそう思ってるみたいですね」
「珍しくもなんともないな」
貝塚はうるさくなり始めた無線を切った。
「一緒にいた中学生達は仲が良さそうでしたね」
「食い入るように見てたな。あいつらが協力者なら、冴島卓真も犯行は可能だ」
「はい。彼は去年の1月くらいから平均で1ヶ月のうちに3、4回休んでいます。一番多く休んでいるのが5月の計6回。連続で休んでいませんので、さほど気にするようなものではありませんが、湯藤愛美は体育の授業をほとんど休んでいます。一昨年の12月頃から学校を休むようになり、去年の4月から6月においては、全て休んでいます」
車はスクランブル交差点の前で止まる。
「妊娠していたから」
「物証がない以上、引っ張るのは無理だし、彼らが犯人と断定できませんしね」
「調べることは山ほどありそうだな」
空気を切るように吹く風は不穏な音を立て、道に落ちていたごみ屑を飛ばす。スクランブル交差点の間をビニール袋が虚しく転がり、交差点の間を行き交う車に何度も轢かれていた。
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