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6章 一滴の酔魔《すいま》
3dbs-犯人出頭
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捜査一課のオフィスで、つかの間の息つける時間。ランチタイム。
貝塚は自分のデスクに足を上げてくつろいでいる。その手には新聞。一連の急展開の内容が詳細に書かれている。
「ダダ漏れだなぁ」
貝塚は笑みを浮かべながら呟く。日頃の偏食をリセットする魔法の野菜ジュースをストローで吸う。パックが吸う力でへこむ。
「まあ、あれだけ聞き回れば記者だって嗅ぎつけますよ。おしゃべり好きな方にとっては、記者との関係はウィンウィンの関係にありますから」
増古は弁当を食べながら少し不満そうな口調で語る。
「どうなってんのかねぇ~」
「不可解ですよね。あの犯人は」
交番に出頭してきた男。乳児遺棄事件の犯人だと、自分で言い出し、身柄は捜査本部に送られた。
名前は秋澤松男。住所不定、ホームレスの男だった。元某保険会社の営業マンだったが、ギャンブル依存症を患い、多額の負債を抱えて行方をくらましたのちホームレスになったと、取調室で語った。
事の始まりは、炊き出しをしている市民広場に向かう朝のことだったそうだ。
突然フードを被った若い男が「バイトをしてくれませんか?」と声をかけてきた。
内容は遺体処分と遺棄。遺体処分の仕方や遺棄場所はパソコンからプリントアウトした紙に指定されていた。その紙も持ってきていた。ポケットから出したクシャクシャの紙には、事細かに処理の方法や地図が明記されていた。
地図には遺体遺棄の場所が示されており、実際に海にある消波ブロックの隙間を調べると、黒い袋が出てきた。その黒い袋には人骨が入っていた。
遺体を調べたところ、以前クーラーボックスで発見したDNA型と一致した。また、硫酸の成分も検出された。
なぜ出頭してきたのか尋ねると、「もう逃げる生活に耐えられなくなった」と、怯えた表情で言った。秋澤は前金として10万円もらい、犯行直後に20万円貰ったと話した。そのお金は宝くじに使い果たしてしまったと証言し、手元には5万円が残っていた。
バイトを申し込んできた若い男について聞こうと、取り調べを行った刑事は3人の男の写真を見せた。すると、指を差したのは、大学生カップルの男、園林和哉だった。
秋澤が遺体遺棄の発見場所を知っていたことから、捜査本部は園林和哉と交際相手である邦江明日花の逮捕に踏み切った。
一気に進んだ乳児遺棄事件。それもあってか、捜査一課のオフィスは慌ただしい雰囲気があった。事件が解決するという希望の光が見えたことで、やる気が満ち溢れるオフィスだったが、貝塚はどうもしっくりこない部分があった。
「増古」
「はい」
貝塚は昼食で出たゴミをデスク下にある小さなゴミ箱に入れて、乳児遺棄事件の資料が入ったファイルをデスクに広げた。
「お前は園林と邦江が犯人だと思うか?」
「雇われた秋澤は死体の隠し場所を知っていましたし、十分犯人の線が強いのは理解できます。ですが、2人は犯行を否認しています。秋澤が知っていたからと言って、必ずしも園林が犯行の依頼をしたということにはならないと思います」
増古は自分の意見を淡々と述べる。
「だよな。それにあの秋澤という男、なんかうさん臭い」
その他の6名の刑事も逮捕は早いとの見解を持っており、課長に進言していたが、多数派には勝てず、逮捕になってしまった。
「ちょっと強行に出る必要があるかもな」
貝塚はデスクの引き出しに保管していたつまようじを取り、口にくわえた。
貝塚は自分のデスクに足を上げてくつろいでいる。その手には新聞。一連の急展開の内容が詳細に書かれている。
「ダダ漏れだなぁ」
貝塚は笑みを浮かべながら呟く。日頃の偏食をリセットする魔法の野菜ジュースをストローで吸う。パックが吸う力でへこむ。
「まあ、あれだけ聞き回れば記者だって嗅ぎつけますよ。おしゃべり好きな方にとっては、記者との関係はウィンウィンの関係にありますから」
増古は弁当を食べながら少し不満そうな口調で語る。
「どうなってんのかねぇ~」
「不可解ですよね。あの犯人は」
交番に出頭してきた男。乳児遺棄事件の犯人だと、自分で言い出し、身柄は捜査本部に送られた。
名前は秋澤松男。住所不定、ホームレスの男だった。元某保険会社の営業マンだったが、ギャンブル依存症を患い、多額の負債を抱えて行方をくらましたのちホームレスになったと、取調室で語った。
事の始まりは、炊き出しをしている市民広場に向かう朝のことだったそうだ。
突然フードを被った若い男が「バイトをしてくれませんか?」と声をかけてきた。
内容は遺体処分と遺棄。遺体処分の仕方や遺棄場所はパソコンからプリントアウトした紙に指定されていた。その紙も持ってきていた。ポケットから出したクシャクシャの紙には、事細かに処理の方法や地図が明記されていた。
地図には遺体遺棄の場所が示されており、実際に海にある消波ブロックの隙間を調べると、黒い袋が出てきた。その黒い袋には人骨が入っていた。
遺体を調べたところ、以前クーラーボックスで発見したDNA型と一致した。また、硫酸の成分も検出された。
なぜ出頭してきたのか尋ねると、「もう逃げる生活に耐えられなくなった」と、怯えた表情で言った。秋澤は前金として10万円もらい、犯行直後に20万円貰ったと話した。そのお金は宝くじに使い果たしてしまったと証言し、手元には5万円が残っていた。
バイトを申し込んできた若い男について聞こうと、取り調べを行った刑事は3人の男の写真を見せた。すると、指を差したのは、大学生カップルの男、園林和哉だった。
秋澤が遺体遺棄の発見場所を知っていたことから、捜査本部は園林和哉と交際相手である邦江明日花の逮捕に踏み切った。
一気に進んだ乳児遺棄事件。それもあってか、捜査一課のオフィスは慌ただしい雰囲気があった。事件が解決するという希望の光が見えたことで、やる気が満ち溢れるオフィスだったが、貝塚はどうもしっくりこない部分があった。
「増古」
「はい」
貝塚は昼食で出たゴミをデスク下にある小さなゴミ箱に入れて、乳児遺棄事件の資料が入ったファイルをデスクに広げた。
「お前は園林と邦江が犯人だと思うか?」
「雇われた秋澤は死体の隠し場所を知っていましたし、十分犯人の線が強いのは理解できます。ですが、2人は犯行を否認しています。秋澤が知っていたからと言って、必ずしも園林が犯行の依頼をしたということにはならないと思います」
増古は自分の意見を淡々と述べる。
「だよな。それにあの秋澤という男、なんかうさん臭い」
その他の6名の刑事も逮捕は早いとの見解を持っており、課長に進言していたが、多数派には勝てず、逮捕になってしまった。
「ちょっと強行に出る必要があるかもな」
貝塚はデスクの引き出しに保管していたつまようじを取り、口にくわえた。
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