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Q39話 炎の渦へ飛び込む覚悟ならとっくにできてる
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相変わらず、僕のチャンネルや中宮に対する非難の嵐は吹いていた。
どうやらゴシップチャンネルに出演していた証言者逮捕のニュースが影響しているらしい。
逮捕された時の様子が報道されていたが、予想通り中宮と会っていた大学生の男だった。
コメント欄は閉鎖しているが、僕らに関する話題を取り扱うSNS、ポータルサイトなどが後を絶たない。
僕らの模造品を作製し、渦中に放火して火災旋風を起こそうとしているみたいだった。散らばった火の粉が妖しい火を生んで、熱に浮かされた人々が野次馬のように群がってくる。周辺に住んでいるわけでもないのに、わざわざ火の勢いを無邪気に見物しに来る。誇大妄想は拡大するばかりだ。
僕は覚悟を決めて、生徒会室の扉を開けた。
この前とは打って変わり、和やかな声が扉の前から聞こえていた。
扉を開けた瞬間、生徒会室にいる生徒の顔がこちらに向いた。
「うぃーっす、平井君」
「こんにちは、九内先輩」
「来たね。まあ座るといい」
僕は会長に促された席に座る。
「今日は君の考えを聞いておきたくてね。中宮さんの主張も聞いたうえで、これからのことを考えていこうと思うけど、どうだろう。君の中で答えは出ているかな?」
僕は力強く言った。
「動画の投稿を続けます。中宮の治療費を募る活動もやめません」
会長は笑みを灯した。
「そうか。なら、僕らは全力で君を応援する」
「感謝します」
現在、僕のチャンネルは炎の渦にのまれている。
有象無象の話が今もはびこっていた。
皮肉なことに、月の動画収益が過去最高を記録した。
この流れのままではいけない。
流れを変えることはできるはずだ。
生徒会は僕らの現状を踏まえ、計画を立ててくれた。
次に出す動画によって、僕らの運命が決まる。
各方面に話を通し、入念に準備を進め、動画を制作した。
そうして日々が過ぎ、完成した動画の最終チェックをしようとしていた。
タブレットに表示された再生ボタンを押す。
タイトルの「大切なお知らせ~これからのこと~」と大きな文字の後、僕が映った。
狭い部屋の一室に黒のスーツを着ている僕は、動画冒頭で頭を下げた。
「このたびは、関係者のみなさま、地域の方々、応援してくださっている視聴者のみなさま、そして今も病気と闘っているなみこ(仮名)氏に、多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。今回の騒動について、できる限りお話させていただきたく、この動画を撮っています。なみこ氏には許可をいただいて投稿しております」
僕は硬い表情で見据え、一呼吸置いた。
「まず、今回の騒動について、事実関係をお話させていただきます。結論から申しますと、なみこ氏が下着を売ったことは事実です。理由については、持病の薬代を確保するためでした。もちろん、なみこ氏がやったことは悪いことです。本人も深く反省し、行動を改めるとの言葉を聞いております。また、本人直筆の謝罪文を掲載しております。詳しくは概要欄をご確認ください」
一通り話した後、動画の中の僕は静けさの中で息を呑んで、言葉を続けた。
「次に、本件に関する一連の噂について、お話させてください。僕となみこ氏が詐病し、動画を偽装して、視聴者から金銭を受け取っているといった事実はありません。根拠に関しましては、ミネルヴァの機能を応用し、作られたメディア解析システムを利用した結果をこちらに表示しています」
僕がバスガイドのように手を向けると、画面左に画像が出てきた。
「こちらに示しました通り、生成AI、ホログラム、CGなどを使った痕跡はないとの結果をいただきました。メディア解析システムは映像研究技術センター様が提供されているツールを使用しています。性能評価は各専門機関が公表しているサイトをご覧ください。URLも概要に載せておきます」
左にあった画像が消え、映像が切り替わる。
同じくパイプ椅子に座って、黒のスーツを着ているが、別の日に撮られたものだ。
一気に撮るのは疲れるし、丁寧に撮った方が良いだろうとのアドバイスを先輩方からもらっていた。
「次に、私がみなさまから募ったお金を着服し、娯楽品などに使っているとの噂についてですが、これに関しましても一切ございません。こちらが、今までいただいたお金の記録です」
動画に口座記録を映した画像が載る。
「これは一部ですが、これまでいただいたお金の履歴をすべて公表します」
送金元などを隠し、預かり金額と名義人である僕の本名を表示していた。
「口座履歴一覧をまとめたリストを作りました。ご確認ください。今回のことで哀しい思いをさせてしまったこと、重ねて謝罪いたします。申し訳ありませんでした」
僕は椅子から下り、土下座した。重たい静寂が映像の中で騒々しく訴えてきた。
数秒の後、席に戻った僕の動画に変わる。
「次にこれからのことについて、お話させてください。友人の難病の治療費ならびに渡航費などを含め4600万円の目標を掲げ、これまで動画を投稿してきました。しかし、なみこ氏の下着売買が発覚し、警察の指導を受けました。なみこ氏本人に対しても、教育委員会よりなんらかの処分が下される予定です。本人からも、どんな処分が下されても受け入れる旨を聞いています。やったことはやったこととして、反省し、歩み続けようと思います」
ほんのわずかだが、涙声になっていた。
この時、続けるかどうかみんなで悩んだが、一旦休憩を挟み、再開した。
場所を借してもらった映研には感謝しきれない。動画が切り替わり、咳払いした僕が再び話し始めた。
「今後の動画投稿ですが、なみこ氏本人の出演を控え、僕が先頭に立ち、動画を投稿していこうと思っています。今回の騒動で忌憚のない意見をいただきました。それを踏まえ、様々な施策を発表したいと思います。僕が集めたお金を着服しているとの懸念があるので、今後はチャンネルのホームや動画再生画面にリアルタイムで集まった金額を表示させる仕組みを作りました。今回示した口座の合計が15分おきに更新されます。近日実装される予定です」
姿勢を正し、話を続ける。
「他にも様々なご懸念があるかと思います。なので、できる限りみなさまのご質問に答えていきます。質問に回答する動画も投稿していきますので、コメントに質問を書き込んでください。これからも当チャンネルをよろしくお願いいたします」
動画は終わった。これで最終確認は終了した。
すべての工程を終え、2071年9月29日16時45分、僕は祈るような気持ちで投稿のボタンをクリックした。
どうやらゴシップチャンネルに出演していた証言者逮捕のニュースが影響しているらしい。
逮捕された時の様子が報道されていたが、予想通り中宮と会っていた大学生の男だった。
コメント欄は閉鎖しているが、僕らに関する話題を取り扱うSNS、ポータルサイトなどが後を絶たない。
僕らの模造品を作製し、渦中に放火して火災旋風を起こそうとしているみたいだった。散らばった火の粉が妖しい火を生んで、熱に浮かされた人々が野次馬のように群がってくる。周辺に住んでいるわけでもないのに、わざわざ火の勢いを無邪気に見物しに来る。誇大妄想は拡大するばかりだ。
僕は覚悟を決めて、生徒会室の扉を開けた。
この前とは打って変わり、和やかな声が扉の前から聞こえていた。
扉を開けた瞬間、生徒会室にいる生徒の顔がこちらに向いた。
「うぃーっす、平井君」
「こんにちは、九内先輩」
「来たね。まあ座るといい」
僕は会長に促された席に座る。
「今日は君の考えを聞いておきたくてね。中宮さんの主張も聞いたうえで、これからのことを考えていこうと思うけど、どうだろう。君の中で答えは出ているかな?」
僕は力強く言った。
「動画の投稿を続けます。中宮の治療費を募る活動もやめません」
会長は笑みを灯した。
「そうか。なら、僕らは全力で君を応援する」
「感謝します」
現在、僕のチャンネルは炎の渦にのまれている。
有象無象の話が今もはびこっていた。
皮肉なことに、月の動画収益が過去最高を記録した。
この流れのままではいけない。
流れを変えることはできるはずだ。
生徒会は僕らの現状を踏まえ、計画を立ててくれた。
次に出す動画によって、僕らの運命が決まる。
各方面に話を通し、入念に準備を進め、動画を制作した。
そうして日々が過ぎ、完成した動画の最終チェックをしようとしていた。
タブレットに表示された再生ボタンを押す。
タイトルの「大切なお知らせ~これからのこと~」と大きな文字の後、僕が映った。
狭い部屋の一室に黒のスーツを着ている僕は、動画冒頭で頭を下げた。
「このたびは、関係者のみなさま、地域の方々、応援してくださっている視聴者のみなさま、そして今も病気と闘っているなみこ(仮名)氏に、多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。今回の騒動について、できる限りお話させていただきたく、この動画を撮っています。なみこ氏には許可をいただいて投稿しております」
僕は硬い表情で見据え、一呼吸置いた。
「まず、今回の騒動について、事実関係をお話させていただきます。結論から申しますと、なみこ氏が下着を売ったことは事実です。理由については、持病の薬代を確保するためでした。もちろん、なみこ氏がやったことは悪いことです。本人も深く反省し、行動を改めるとの言葉を聞いております。また、本人直筆の謝罪文を掲載しております。詳しくは概要欄をご確認ください」
一通り話した後、動画の中の僕は静けさの中で息を呑んで、言葉を続けた。
「次に、本件に関する一連の噂について、お話させてください。僕となみこ氏が詐病し、動画を偽装して、視聴者から金銭を受け取っているといった事実はありません。根拠に関しましては、ミネルヴァの機能を応用し、作られたメディア解析システムを利用した結果をこちらに表示しています」
僕がバスガイドのように手を向けると、画面左に画像が出てきた。
「こちらに示しました通り、生成AI、ホログラム、CGなどを使った痕跡はないとの結果をいただきました。メディア解析システムは映像研究技術センター様が提供されているツールを使用しています。性能評価は各専門機関が公表しているサイトをご覧ください。URLも概要に載せておきます」
左にあった画像が消え、映像が切り替わる。
同じくパイプ椅子に座って、黒のスーツを着ているが、別の日に撮られたものだ。
一気に撮るのは疲れるし、丁寧に撮った方が良いだろうとのアドバイスを先輩方からもらっていた。
「次に、私がみなさまから募ったお金を着服し、娯楽品などに使っているとの噂についてですが、これに関しましても一切ございません。こちらが、今までいただいたお金の記録です」
動画に口座記録を映した画像が載る。
「これは一部ですが、これまでいただいたお金の履歴をすべて公表します」
送金元などを隠し、預かり金額と名義人である僕の本名を表示していた。
「口座履歴一覧をまとめたリストを作りました。ご確認ください。今回のことで哀しい思いをさせてしまったこと、重ねて謝罪いたします。申し訳ありませんでした」
僕は椅子から下り、土下座した。重たい静寂が映像の中で騒々しく訴えてきた。
数秒の後、席に戻った僕の動画に変わる。
「次にこれからのことについて、お話させてください。友人の難病の治療費ならびに渡航費などを含め4600万円の目標を掲げ、これまで動画を投稿してきました。しかし、なみこ氏の下着売買が発覚し、警察の指導を受けました。なみこ氏本人に対しても、教育委員会よりなんらかの処分が下される予定です。本人からも、どんな処分が下されても受け入れる旨を聞いています。やったことはやったこととして、反省し、歩み続けようと思います」
ほんのわずかだが、涙声になっていた。
この時、続けるかどうかみんなで悩んだが、一旦休憩を挟み、再開した。
場所を借してもらった映研には感謝しきれない。動画が切り替わり、咳払いした僕が再び話し始めた。
「今後の動画投稿ですが、なみこ氏本人の出演を控え、僕が先頭に立ち、動画を投稿していこうと思っています。今回の騒動で忌憚のない意見をいただきました。それを踏まえ、様々な施策を発表したいと思います。僕が集めたお金を着服しているとの懸念があるので、今後はチャンネルのホームや動画再生画面にリアルタイムで集まった金額を表示させる仕組みを作りました。今回示した口座の合計が15分おきに更新されます。近日実装される予定です」
姿勢を正し、話を続ける。
「他にも様々なご懸念があるかと思います。なので、できる限りみなさまのご質問に答えていきます。質問に回答する動画も投稿していきますので、コメントに質問を書き込んでください。これからも当チャンネルをよろしくお願いいたします」
動画は終わった。これで最終確認は終了した。
すべての工程を終え、2071年9月29日16時45分、僕は祈るような気持ちで投稿のボタンをクリックした。
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