セキワンローキュー!

りっと

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プロローグ

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 ジョーへ

 手紙で別れを告げるなんて、ジョーは怒ると思います。

 突然ですが、僕は転校することにしました。

 ジョーとは学校でも休みの日でもいろんな遊びをしましたね。僕は今年の夏休みにジョーとミサと夏希と四人で行った海水浴が、特に忘れられない思い出となりました。

 僕たちはみんな早起きをして、わくわくしながら電車に乗りましたね。田舎のさびれた海でしたが、真っ黒になるまで泳いだことも、野菜の少ない焼きそばを食べたことも、とても楽しかったです。

 ここからは、僕のざんげです。

 太陽が落ちてきて波も高くなってきたころ、泳ぐのは危ないとわかっていたのに、はしゃいでいた僕は少しはめを外したくなってしまいました。

 ミサが危ないからもう帰ろうと止めてくれたのに、僕はジョーと遠くの岩場まで競争したいと言って、ジョーに断られる前に泳ぎ出してしまいました。

 足のつかない場所まで来たとき、僕はようやく異変に気がつきました。どれだけ手足を動かしても、行きたい方向に進んでくれないのです。溺れているとわかったとき、背筋がぞっとしたのを覚えています。

 頭が真っ白になって夢中でもがいている僕を、追いかけてきたジョーが助けてくれたことは感謝してもしきれません。本当にありがとう。

 だけど、ジョーに助けられて安心した僕は、すぐにまたパニックになりました。ジョーの後ろで、サメが泳いでいるのを見たからです。

 言い訳になるかもしれませんが、僕はジョーに危険を知らせようとはしたのです。だけど、口の中に海水が流れこんできてできませんでした。ごめんなさい。

 僕は、それからのことを覚えていません。なぜなら、僕は恐怖のあまり意識を失ってしまったからです。

 目が覚めたときは病院のベッドの上でした。僕を助けてくれたジョーがどうなったかを聞いたとき、僕は激しい後悔と罪悪感でどうにかなってしまいそうでした。僕のせいではない、気にしないで欲しいというジョーのお父さんやお母さん、そして夏希とミサの優しさが辛かったのです。

 だから僕は、ジョーたちに二度と顔を見せることのないよう転校することにしました。

 弱い僕を、みんなの前から逃げる僕のことを、許してくれとは言いません。ジョーの腕のことも当然、許してくれなんて言えるはずがありません。

 僕のことは憎んだままでいいです。ただ、僕に言われたくないと思うかもしれませんが、ジョーには幸せになって欲しいと心から願っています。

 お元気で。さようなら。

                               早川大吾
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