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第一Q 隻腕の単細胞
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雪之丞の通う県立藤沢高校では多くの運動部が活動しているが、どの部活も強豪校と呼べるような活躍には遠く及ばない。
藤沢高校バスケットボール部――通称、沢高バスケ部は、昨年のインターハイ予選では男子は県大会ベスト8、女子は準優勝の成績を修めており、沢高運動部の中ではそこそこの活躍を見せていた。
「……で、中学の頃から県内で名を馳せていた男が昨年沢高に入学して、一年生ながらエースとして活躍したらしいよ。昨年の三年生が引退してからは一層頭角を現している彼を筆頭に、今年の沢高男子バスケ部はダークホースとして注目株を浴びているんだってさ」
雪之丞に色々教えてくれたのは、自己紹介でバスケ部に入部すると公言していたクラスメイトである。
「俺が知っているのはこれくらいだけど……な、なんで鳴海くんがバスケ部のことを知りたがるの?」
怯えながら怪訝な顔をする彼に、雪之丞は白い歯を見せた。
「俺もバスケ部に入るからだよ。これからよろしく! 教えてくれてサンキューな!」
「え……えええええええ!?」
これからチームメイトになる彼の驚愕の声を聞きながら、雪之丞は意気盛んに入部届を提出しに行った。顧問も目を丸くしていたが入部届は無事に受理され、雪之丞は正式にバスケ部員となった。
練習は明日からだ。新しいことを始める期待で胸を弾ませていると、
「ちょっとジョー! バスケ部に入部したってマジ!?」
聞き慣れた高い声が雪之丞の耳に届いた。声のした方向に振り向くと、茶髪にピアスが特徴的な、派手な格好の少女が近づいてくるところだった。
「夏希。お前、もうスカート短くしてんのかよ?」
「これくらい脚出してないと、気持ち悪くてさー。目の保養になるっしょ?」
「見たくもねえモン見せられてもな」
「大人になってから後悔するわよ? もっと女子高生の脚、見ておけば良かったーってね」
鷹山夏希。雪之丞とは小学校からの付き合いで、所謂幼馴染という間柄だ。
一緒にいることが多いため交際していると誤解されることもあるが、ほとんどの人は二人の口喧嘩や、男女を意識しないやり取りを見ているうちに「この二人が付き合っているわけがない」という認識に変わる。
夏希の華やかで整った顔立ちの中でも、特に印象的なのは長い睫毛によって守られている大きな瞳だ。黙っていれば美人と言って差し支えない容姿をしているくせに、夏希の性格は良く言えば明るく、悪く言えば煩い。今日も口を動かし続ける夏希の話を適当に聞き流しつつ、家が近い二人は一緒に帰る流れになった。
「つかお前、なんで俺がバスケ部入ったって知ってんだよ?」
「あんたは自分が有名人だってこと、もっと自覚しておいた方がいいわよ? 入部届を出した瞬間から学校中の噂になってるんだから」
威嚇しているつもりなどないのに、通学路を歩く二人を生徒たちが避けていく。未だに解ける気配のない不本意な噂に雪之丞は唇を尖らせた。
「そうなのか? ……で、お前は反対なのか?」
「別に、反対なんてしないわよ。でも、なんでバスケ部なのよ? せめて片手でも支障のないスポーツにすればいいのに」
「……俺が運動部の奴に部活のこと聞くとさ、大抵はやめた方がいいって言うんだよ。……でも、紗綾先輩はそんなこと言わなかった。ちょっとね、ぐっときたのよ」
外見だけで人の可能性を判断しないところも、紗綾に惹かれた理由の一つだった。
「紗綾先輩って、二年の大槻紗綾さん? あの人、ちっちゃいけど超可愛いよねー! クラスの男子たちが騒いでた!」
「だろ? 紗綾先輩だって、ちっこいのにバスケやってんだ。左手のない俺がバスケやったって、なんの問題もないはずだ」
背丈が足りない分を補うために、弛まぬ努力をして身につけたのであろう紗綾の美しいシュートフォームを思い出すと、力が湧いてくる気がした。
藤沢高校バスケットボール部――通称、沢高バスケ部は、昨年のインターハイ予選では男子は県大会ベスト8、女子は準優勝の成績を修めており、沢高運動部の中ではそこそこの活躍を見せていた。
「……で、中学の頃から県内で名を馳せていた男が昨年沢高に入学して、一年生ながらエースとして活躍したらしいよ。昨年の三年生が引退してからは一層頭角を現している彼を筆頭に、今年の沢高男子バスケ部はダークホースとして注目株を浴びているんだってさ」
雪之丞に色々教えてくれたのは、自己紹介でバスケ部に入部すると公言していたクラスメイトである。
「俺が知っているのはこれくらいだけど……な、なんで鳴海くんがバスケ部のことを知りたがるの?」
怯えながら怪訝な顔をする彼に、雪之丞は白い歯を見せた。
「俺もバスケ部に入るからだよ。これからよろしく! 教えてくれてサンキューな!」
「え……えええええええ!?」
これからチームメイトになる彼の驚愕の声を聞きながら、雪之丞は意気盛んに入部届を提出しに行った。顧問も目を丸くしていたが入部届は無事に受理され、雪之丞は正式にバスケ部員となった。
練習は明日からだ。新しいことを始める期待で胸を弾ませていると、
「ちょっとジョー! バスケ部に入部したってマジ!?」
聞き慣れた高い声が雪之丞の耳に届いた。声のした方向に振り向くと、茶髪にピアスが特徴的な、派手な格好の少女が近づいてくるところだった。
「夏希。お前、もうスカート短くしてんのかよ?」
「これくらい脚出してないと、気持ち悪くてさー。目の保養になるっしょ?」
「見たくもねえモン見せられてもな」
「大人になってから後悔するわよ? もっと女子高生の脚、見ておけば良かったーってね」
鷹山夏希。雪之丞とは小学校からの付き合いで、所謂幼馴染という間柄だ。
一緒にいることが多いため交際していると誤解されることもあるが、ほとんどの人は二人の口喧嘩や、男女を意識しないやり取りを見ているうちに「この二人が付き合っているわけがない」という認識に変わる。
夏希の華やかで整った顔立ちの中でも、特に印象的なのは長い睫毛によって守られている大きな瞳だ。黙っていれば美人と言って差し支えない容姿をしているくせに、夏希の性格は良く言えば明るく、悪く言えば煩い。今日も口を動かし続ける夏希の話を適当に聞き流しつつ、家が近い二人は一緒に帰る流れになった。
「つかお前、なんで俺がバスケ部入ったって知ってんだよ?」
「あんたは自分が有名人だってこと、もっと自覚しておいた方がいいわよ? 入部届を出した瞬間から学校中の噂になってるんだから」
威嚇しているつもりなどないのに、通学路を歩く二人を生徒たちが避けていく。未だに解ける気配のない不本意な噂に雪之丞は唇を尖らせた。
「そうなのか? ……で、お前は反対なのか?」
「別に、反対なんてしないわよ。でも、なんでバスケ部なのよ? せめて片手でも支障のないスポーツにすればいいのに」
「……俺が運動部の奴に部活のこと聞くとさ、大抵はやめた方がいいって言うんだよ。……でも、紗綾先輩はそんなこと言わなかった。ちょっとね、ぐっときたのよ」
外見だけで人の可能性を判断しないところも、紗綾に惹かれた理由の一つだった。
「紗綾先輩って、二年の大槻紗綾さん? あの人、ちっちゃいけど超可愛いよねー! クラスの男子たちが騒いでた!」
「だろ? 紗綾先輩だって、ちっこいのにバスケやってんだ。左手のない俺がバスケやったって、なんの問題もないはずだ」
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