セキワンローキュー!

りっと

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第一Q 隻腕の単細胞

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「鳴海、体力あるなあ! 最初からついて来られるっていうのは、すごいことだぞ!」

 多田に褒められて調子に乗った雪之丞は、満面の笑みで頭を掻いた。

「いやあ、そうっすかね! まだまだイケるっすよ!」

「お? そうかそうか! じゃあ、フットワークも余裕かな?」

「フットワーク?」

「フットワークってのは、試合で使う足の運び方や肺活量を鍛える練習だ。まあ、やってみるのが早い。さあ一年、休んでいる暇はないぞ! 次はフットワークだ! 俺たちの動きを真似してやってみろ!」

 座り込んで肩で息をしている一年の顔が青ざめるのを見た。フットワークとやらはそんなにきつい練習なのだろうか?

 最初にやらされたのは、エンドラインに横の間隔を空けて三人ずつ並び、マネージャーの笛の音を合図に全力疾走するというメニューだった。走っている途中で笛が鳴れば、逆方向に切り返して再び全力疾走。決められた時間がくるまで、走っている間に笛が鳴ったら逆方向に切り返す動作を繰り返す。

 相当キツいが、耐えられないメニューではない。これさえ乗り切れば大丈夫だ、と思った雪之丞の考えは甘かった。これは多くの種類があるフットワークの中の一つ、序の口でしかなかったのだ。

 その他にも、片足で踏み切って逆足で着地し、また逆に跳んでを交互に繰り返して前方にジグザグに進んでいくサイドステップや、腰を落としてディフェンスの姿勢を保ったままその場で小刻みにステップを踏み続け、笛が鳴ったらジャンプしたり左右への動きを入れたりするハーキーステップなど、数多くのメニューをやらされた。

「バスケはサッカーに比べてコートは狭いけど、試合ではコート内を何度も何度も往復する。だからバスケは切り返しの速さを問われるスポーツでもあるんだ。試合に勝つためには絶対にこのフットワークを疎かにしてはいけない。フットワークを好きな奴なんていないし、キツいとは思うが根性見せろよ!」

 多田はすでにへばっている一年生に向かって活を入れたが、屍寸前の彼らの耳に届いたのかどうかは不明である。ボールを使った難しい練習ではない。ただ手足を使ってコートの中を動くだけの練習なのに、雪之丞は今まで体験したことがないくらいに息が上がっていた。中学生の頃、多勢に囲まれて体中殴られたときよりもはるかに辛く、きつかった。

「鳴海い! 遅いぞ! まだまだイケるとか言ったくせに、そんなモンだったのかあ!?」

 打って変わって厳しくなった多田の声が耳朶に響く。呼吸をすることすら必死になっていた雪之丞は、悔しくも返事をすることができなかった。

 永遠のようにも感じられた地獄の時間からの解放の笛が鳴ると、一年生は皆倒れ込んだ。白い顔をして外へ飛び出し、嘔吐する者もいた。雪之丞も地面に尻をつけ、酸素を体内に取り込むことに死に物狂いになりながら思った。

 ――完全に調子乗ってた。ダッセえなあ、俺!

 入部一日目。いや、入部して二時間。早くも雪之丞は、バスケットボールの厳しさを思い知ったのだった。
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