セキワンローキュー!

りっと

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第一Q 隻腕の単細胞

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 試合は順調に進み、第三クォーターまで終了した。

 およそ三十分間先輩たちの試合を見ていた一年生は、中学と高校のレベルの違いに自信をくじかれた者もいれば、スタメンになってやると闘志を燃やしている者もいて、反応は十人十色であった。

 一年生に高校バスケの試合を実際に見てもらい、何かを感じとって欲しいという宇佐美監督の思惑はすでに成功しており、勝敗が翻ることはないであろう点差もついている。もう試合を終えても差し支えないこの状況下で、宇佐美は一年生にとってさらに予想外の提案をしてきた。

「最終クォーターは、Bチームに一年を二人か三人ずつ入れてみるか」

 その発言は、一年生を大きくざわつかせた。戸惑いや歓喜の混ざった声で騒ぐ一年生の中でも、雪之丞は人一倍喜んだ。

 自分が今どれくらいの実力なのか、早く実践を経て知りたい。バスケがどれくらい楽しいのか、早く肌で実感したい。見ているだけでは我慢できなくなっていたのだ。

「うっしゃあ! テンション上がってきた! 監督、是非俺をトップバッターで行かせてください!」

 宇佐美へのアピールのために手を上げる雪之丞を見て、

「ふん、馬鹿か。お前なんかまだまだゲームに出られるレベルじゃねえだろ」

 廉は鼻で笑った。やっぱりこの人を見直すのはやめだ。マジ性格悪い! ……と、雪之丞は胸中で悪態をついた。

「いや、今日は一年生全員の実力がみたいから、トップバッターにはしないが鳴海も出すぞ。Bチームはなるべく一年にボールを回してくれ」

 あっけらかんと言った宇佐美に便乗して「らしいですよ~?」と雪之丞がここぞとばかりにおどけた表情を作ってみせると、廉は不快そうに舌打ちをした。

 そうして始まった最終クォーターは、見事に一年生が足を引っ張る形になった。

 小中学校でバスケをやってきた経験者といっても、高校での数年の経験差はやはり大きいようだ。緊張に加えて、相手は県内ベスト8のスタメンチームだ。ドリブルは軽く進路を塞がれ、パスは思い通りに通せない。シュートを決めるどころか、シュートまでもっていくことすらできない一年生ばかりだった。

「……やっぱり、昨年一年生でエースの座をもぎ取った廉が異質だったのね」

 久美子の呟きを隣で聞きながら、雪之丞は宇佐美の口から自分の名前が呼ばれるのを今か今かと待っていた。

 第四クォーター開始から五分、ついにそのときがやって来た。宇佐美が笛を吹いて、雪之丞の方を見た。

「よーし、吹越と鈴木下がれ! 次! 斎藤と鳴海入れ!」

「ウッス!」

 待ち焦がれていた出番だ。意気揚々とコートに足を踏み入れた雪之丞はまず始めに、コートの中の空気に驚かされた。スタメンチームが放つプレッシャーは外で見ていたときよりもずっと強く、オーラがより色濃く見えたからだ。

 だが雪之丞は敵との実力差に物怖じする性格ではない。雪之丞が入ったBチームがオフェンスになると、足の速さと体力を活かしてとにかく動き、自身についていたマークを振り切った。

「パスください!」

 声高らかにパスを呼んだ雪之丞にボールが飛んできたが、雪之丞はボールを受け止められずに弾いて外に出してしまった。

「あ!?  ……す、すんません!」

 謝る雪之丞の背中を、味方の三年生が明るく叩いてくれた。

「ドンマイ! 切り替えていこう! 鳴海は岡村についてくれ!」

 反省している暇などない。隙あらばゴールを狙ってくる敵の侵攻を防ぐために、すぐにディフェンスをしなければならない。

 PFの岡村をマークするよう指示された雪之丞だったが、ディフェンスの基本などわかっているはずもなく、とりあえずゴールの近くにいる岡村にボールが来ないように動いてみることにした。

 しかし雪之丞の守りなど、ザルのようなものなのだろう。岡村はあっさりと雪之丞を躱し、いいポジションを取ったタイミングで多田からパスを受け取った。この時点で雪之丞の体は岡村とゴールを結ぶ直線上から外れており、岡村はほぼノーマークに近い状態で簡単にゴールを奪った。

「……なんだ!? 点って、こんな簡単に取られるもんなのか!?」

「だから切り替えろって! 次はオフェンスだぞ!」

 実際にプレーしてみると、バスケの目まぐるしい攻守展開に悲鳴をあげたくなった。同時に、コート内を何往復もすることで生じる足腰への負担を感じながら、フットワークが大切と言った多田の言葉は真実であることも身をもって知った。
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