世界最高の悪役は実はクズ雑魚~勘違いは勘違いを呼び組織(ハーレム)は出来上がった~

亜・ナキ

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第零章 プロローグ~愛とはなにか~

第零章 プロローグ 総集編

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 闇夜、暗き聖堂を埋め尽くすほどの黒装束の女、男、獣人、半魔…

 そして、その全員が膝まづいた。
 空けられた道をコツコツと音を鳴らしながら男が歩いてくる。

 いや、男というのには華奢で髪も長いが、男なのだ。

 中央の豪華な椅子に彼は座ると、1人の女が言葉を発した。


「お帰りなさいませ。アク様」



 …もうやだ!胃が痛い!
 帰りたい!なんなの!
 もうなんでこうなったんだよー!

 ◇◇◇◇◇

 クラシックマッハバッカーン!(謎)
 なんと転生してしまっていたのだ!
 そう!The!王道!
 トラックに轢かれたのだ!

 くっそ痛いで?あれ。
 もう表現できないが、死ぬほど痛かった。
 死んだけど。

 まぁとにかく転生したのだ。
 The王道になんか中世っぽいところに。

 誰に転生したのかって?

 カネモチ・アクトク・リョウシュ。

 それが俺が転生した身体の名前だ。
 父はアクって呼ぶ。
 普通リョウシュとかじゃない…?
 まぁ、かなりそういう所はルーズな世界のようだ。

 え?なんか不穏な単語が混じってるって…?
 やだなぁ…そんなわけないじゃん。

 とりあえず金持ちの領主の息子に生まれた。
 しかもお父さんがめっちゃ溺愛してくる。
 1ヶ月のお小遣いが30万ザークだぞ!
 ザークはこの世界のお金の単位だ。円と一緒の価値。
 つまり30万円♡♡♡!
 しかもねだればもっとくれる。
 お父さん大好き!とか言うと鼻の下伸ばしてにっこりしてる。

父の名前はカネモチ・ハラグロ・リョウシュだ。

 母がもう死去しているので寂しいのもあるのだろう…
 でも母の事が超好きだったみたいで愛人とか2人目の妻とか全然ない。

 いい人じゃん。名前で判断しちゃダメだよ。

 そしてこの世界には奴隷というものが存在する。
 超テンション上がるぅー!
 俺は奴隷が欲しい。

 そしてもう5歳になる。
 もう適齢だろ!

 美少女奴隷を買う!
 これは男達のろまん


「お父さん。奴隷ってどれくらいするの?」

「うーん。訳ありでも100万は…良い奴だと1000万はくだらんなぁ…」


 え?やっば!
 美少女だと1000万は余裕なの!?


「なんでそんなに高いの?」

「そりゃあ、人の命だからね。安い訳が無いよ。まぁ、ほとんど人じゃないが。だが亜人だろうと命の重さは変わらん」


 いい人。
  

「奴隷売人といえば悪く言う人も多いけどな。ちゃんと人は見てるんだぞ?傷つけたりする人にはうれないんだ」


 思ったよりシビアなんだな。
 まぁ、さすがに1000万とかは払えない。
 だが全くもって問題では無いのだ。

 可哀想な奴隷を買っていい暮らしさせてありがとうございます!!って言われて…
 フハハハハハハ!!

 勝った!計画通り!(妄想)


「奴隷市場に連れてって」

「うん?奴隷が欲しいのか?まあたしかに1人くらいお前に付く使用人がいた方がいいか」


 うっしゃ!
 大好きだよ父!
 フハハハハハハ!!!

 ・
 ・
 ・

「うん?どの奴隷が欲しい?どれでもいいぞ?」


 いきなり1番高いVIP部屋に…
 まじ何者なの?いや、四大貴族らしいけど。


「どうせなら高いのがいいだろう?」


 びっくりしてる俺にそう言ってくる。
 数億っていう値段が付けられてるなぁ…
 青空が綺麗だ。


「いや、自分のお小遣いで買える範囲で」

「そうか!初めてのお使い!いやぁ!それならそうだな!」


 こいつ…親バカにも程があるだろう?
 これが世界一物騒な初めてのお使い…

 これがこの世界の普通ならちょっと家に帰りたい…

 俺の予算は100万ちょっと。
 もっと小遣いあるだろうって?
 馬鹿だなぁ。
 安けりゃ安いほどいいんだよ。
 欠損とかが多いしな。助けたら余計感謝させる。
 だが欠損だらけで使えないやつにお礼を言われてもな…
 ということで最高等回復液ハイエクシサーを買ったのだ。
 体の欠損などをほとんど戻せるポーションだ。
 ポーションとか見るとやっぱり異世界だなという感じがする。
 お値段3000万ザーク!
 お父さんに買ってもらった。
 総資産いくらなの?まじで。
 そんな高くないと思ってねだり、普通に渡されたからそんなに高くないんだろーな!って思ってたらえぐい値段だった。
 俺が立派になったら必ず返すからっ!

 100万ほどの奴隷がある場所に移動する。
 できるだけ欠損してるのがいいな。


「こんなグロいの大丈夫か?それにこんな欠損奴隷じゃ使えないぞ?動けないものも多い」


 そのために最高等回復液ハイエクシサーを買ったんだよ。
 この世界の人からしたら最初から3000万くらいの奴隷買えよ!って感じだろうが…
 俺は転生者なので。
 それに欠損奴隷とか言うからすげぇやばい所に入れられてるんかと思ったら安アパートの狭い所位のところにいるぞ?
 まぁ、たくさんの人と一緒にいて相部屋なのでプライベートは無いかもしれないが。
 案外奴隷って暮らし良いんだなぁ。
 どんどん奥に進んでいく。


「おい、ここからは本格的に…その…廃棄される予定のところだぞ?」
  

 やっぱり奴隷はそういうのもあるらしい。
 好都合だ。
 恩を売りやすい。
 一生働かせてやる。
 最強の労働力だよ!

 廃棄予定の所に入ってから一気に部屋が汚くなった。


「廃棄って?」

「もう売れなくて餌にされるものだ…その、」


 若干躊躇いながら父は答える。
 ふーん。まぁどうでもいいけど。
 可哀想であればあるほど感謝は大きくなる。

 そのうち、ある部屋にたどり着いた。
 そこには凄い奴隷がいた。
 身体の右半分に黒い紋章が出ていて、目は赤く充血しており、髪はほとんどなく、肌は紫色に変色仕掛けている少女の奴隷だった。


はなんでこんなことになっているの?」

「…それは、おそらく、死欠病デスライだろう。末期だ。もう時期死ぬ。伝染ることは無いから安心していい」


 最高だな。
 美少女かはイマイチ分からないけど少なくとも一生分の恩を売れるし、労働力くらいにはなるだろう。
とりあえずこういうので信用出来る仲間を増やして置くのに損は無い。
安いし。

でも、ハイエクシサー使うのを考えると高いか?
まぁ、父の金だしいいだろ。


「これ、買った」

「は?」

「これにするよ。父さん」


 ◇◇父視点◇◇


 愛した妻が死んだ。
 残ったのは私と息子だけだった。
 この息子を愛そうと、そう決めた。

 私の息子は、かなり変わっていた。
 大人びている…とも言えるかもしれない。
 生まれて初めて話したかと思ったらこの世界の事を沢山聞いてくる。
 よく図書館にも入り浸り、いまや私よりも物知りかもしれない。
 そして、寂しくなってしまった私が愛人でも作ろうかと思っていた時、息子はじぃっとこっちを見つめてきて、

「お父さんは愛人も浮気もしなくて誠実だね」

 と言われた。
 偶然…なのだろうか。
 心を見透かされたような気分だった。
 私はその日、絶対愛人いらん!と心に誓ったものだ。
 そんな息子が急に奴隷が欲しいと言い出した。
 驚いたものだがたしかに奴隷が1人くらいいた方がいいかもしれない。

 最高級の所に連れていくとお小遣いで買いたいらしい。
 子供らしい所を久しぶりに見た気がする。
 大人びていて子供と相手をしてる気分じゃなかったのだ。
 初めてのお使いだなぁ~と少しホンワカした。
 はずなのに。

 息子は欠損奴隷の方へ行き、廃棄奴隷のところまで来た。
 何故。
 何故。


はなんでこんなことになっているの?」


 これ。
 人だと思っていないのだろう。
 末期の病気にかかっている奴隷をみて息子はそう言う。
 本当に、子供だとは思えない。
 ただ、領主となるなら、偉くなるならば、これくらいの器が必要なのかもしれない。
 私はほとんど妻に頼っていたせいで今は現状維持が精一杯。
 妻は、天才だった。
 普通の領主だったはずの私はいつの間にか4大貴族にまで上りつめた。
 皆、私の功績だという。
 全ては、妻の功績だった。

 思えば、息子は妻に似ている。
 珍しい黒髪に赤目というだけでなく、性格もだ。
 天才かいぶつ
 かれは、きっと領主の才能も溢れているのだろう。

 もしかしたら、今までほとんど箱入り状態にして極力人に合わせなかったのも、妻のように死んでしまうのが怖かったのかもしれない。


「これ、買った」


 耳を疑った。
 興味本位で聞いたのだと。そう思っていたのに。


「は?」

「これにするよ。父さん」


 そして、にっこりと笑った。
 ただ、いつものように愛おしくでは無く、その笑みは狂おしく見えた。
 もしかして…お前も、怪物てんさい側の人間だとでも言うのか?


 ◇◇アクトク・リョウシュ◇◇


「あ、ああ」


 驚いたようにそう言うと父さんは奴隷の手続きをしに行った。
 案外普通にしてくれたな。
 もうちょっと驚いたりしても良かったのだが。
 クックック!
 これで奴隷ゲーット!


「なぁ、お前」


 場に残された俺はその奴隷に語りかける。


「あ、ああ」


 喋れそうにないな。


「生きるのって、嫌か?」

「あえ?あ」


 ちゃんと喋れよ。コノヤロウ。
 まぁ、いいや。それは後で聞こう。


「後でまた聞く」

 ・
 ・
 ・

 ということで…

 祝!奴隷ゲーット!

 いえい!いえい!

 お父さんにお礼を言って早速部屋に連れ込んだ。
 まずは助ける前の下準備だ。


「もう一度聞くぞ?生きるのが嫌か?」

「あ、ああ」


 そういや病気の進行で喋れ無かったんだな。


「肯定なら声をだせ。そうてないのなら黙れ」


 ん?てかこれは聞こえてるかな?


「あ!あー!あー!」
  

 いっそう強く叫び出した。
 聞こえてるみたいだ。


「じゃあ、死にたいか?」

「あー!あーー!あ!あ!」


 そうか。
 死にたいのか。


「じゃあ、殺して欲しいか?」

「あー!あー!あ!」


 まじで死にたいのかよ。
 どんだけ辛いのよ。その病気。
 たしかトラックに弾かれるレベルの痛みを常に感じるんだっけ?
 うわぁ。トラックに轢かれるのクソ痛いのになぁ。
 急に可哀想になってきた。
 抱きしめてあげよう。
 こういう時は抱きしめるのが1番だ。


「じゃあ、俺が殺してやる。楽になれ」

「あー、りがと、う」


 ま、殺さないんだけどね。

 ポーションバシャー!
 おらおらおらおら!!!

 ジュー。という音とともに彼女の身体が治っていく。
 こっからは前世から考えてたムーブで優しくして恩を売るぞ!
 って…ゑ!?

 そこに居たのは紫色の瞳に綺麗な銀髪をもつ超絶美少女だった。

 やばい!台本飛んだ!
 こんな可愛いと思わないじゃん!
 えーと、なんか…
 とりあえずもう過去のお前は殺したから俺に尽くせ的なあれを…

 やばい!無言が長くなった。
 なんか喋らなきゃ。


「お前をもうここで殺した。いいな?」

「え?これは…どうなって…」

「発言は許可していない」


 彼女は身体をビクッとさせて慌てて返事した。


「ひゃ、はい!」


  彼女を押し倒し壁ドンからの顎クイ。

 あれ?俺は何をしているんだろう。普通に気持ち悪いよね。
 現実でやったら気持ち悪いランキング1位なのに…(ガンギマリの会調べ)


「お前はもう死んだ。今のお前はもうお前じゃない。俺のもんだ」


 やべぇ。絶対嫌われる。
 苦笑い出てきた。


「え?は、はい」

「お前は俺に一生尽くせ。その代わりお前を死ぬまで必要としてやる」


 何言ってんの俺?
 可愛いこの前だからってテンパリすぎじゃない?
 だってぇ、前世でこんな可愛い子見たことないしぃ。
 今世だって何故かお父さんがあんまり人と合わせてくれないんだもん。

 てか俺女性とこんなに接近したの今世では初めてじゃない?(前世でもだろ!見栄はんな)

 必要としてやるとか何様だよ!
 俺のバカ!
「恩を売って、かつ出来たら惚れてくれないかなぁ?///」作戦が台無しだぁ!
 うわーん。


「まぁ、強制はしない。覚悟が出来たら庭に来い」


 どうしよう。
 苦し紛れにフォローをいれたが…
 くそぅ!嫌われたぁ!
 あんな当たり奴隷もういないよぉ~。
 ああ、こうなったら悪役令息っぽくこれから優しくしていくしかない。
 がんばろ…
 ああ…泣きたい…


 ◇◇エイリ視点◇◇


 私に、大した過去などない。
 物心着く前に病にかかり、捨てられ、孤児院に入れられた。
 その後、奴隷になった。
 それだけの人生。
 言葉にすれば一瞬で終わる。
 たかが二文。
 病を治す薬はとても高く、両親は払えなかった。
 そして、この病にかかると長くとも8歳になるまでに死ぬという。
 その過程で私は何も経験しなかった。
 愛も、友情も、何も無く、ただ孤児院で勉学は励んだ。
 それが唯一お金を稼ぐ可能性が見いだせる方法だと思った。
 5歳で病は急激に悪化し、奴隷になった。
 それを治せる薬は高すぎてとても私じゃ払えないに決まっている。
 ただ漠然と死ぬんだと思った。
 忌避された。
 嫌われた。
 それがもしかすると私が唯一私に向けられた感情だったのかもしれない。
 ただ、それも嬉しかった。
 病がうつると虐げられることが唯一の人と接する機会だった。


「これにするよ、父さん」


 その言葉を聞いて驚いた。
 きっとこいつは馬鹿なのだろう。
 なにかの実験にでも使うのかもしれない。
 生きるのがいやか?という質問の意味を私は分からなかった。

 その後、部屋に連れていかれた。


「じゃあ、俺が殺してやる。楽になれ」


 その言葉は正直とても嬉しい言葉だった。
「無」で、無感情な人生がようやく終わる。
 最後に、初めての感情が芽生えた。
 きっと、これは感謝の気持ちなのだろう。

 精一杯感謝を伝えたつもりだった。
 伝わってると嬉しい。
 これが期待の感情か。
 死ぬ間際に2つも感情が芽生えるとは思わなかった。

 突然、水をかけられた。
 毒だろうか?
 そんな疑問を抱えたのもつかの間、私の体は軽くなり、痛みも無くなっていた。

 これが、「死」。
 心地よいな。そう思った。
 ただ、それは「死」ではなかった。

 目が、見えた。
 目の前に朧気に見えていた少年は黒い髪に真紅の目をもつ、とても綺麗な、どちらかというと女の子のような少年だった。
 …もしかして私が勘違いしてただけで女の子?

 しばらく彼は私を黙って見つめていた。
 そして、口を開いた。


「お前をもうここで殺した。いいな?」

「え?これは…どうなって…」


 理解が、できない。


「発言は許可していない。いいな?」


 初めて向けられた支配の言葉、歓喜と緊張で身体が強ばった。


「ひゃ、はい!」


 押し倒されて顎をクイッとされた。


「お前はもう死んだ。今のお前はもうお前じゃない。俺のもんだ」


 彼は狂気的な笑みを浮かべた。
 私は、初めて恐怖を感じ、それに喜びを感じ、それをとても美しい笑みだと思った。
 新しい感情が多すぎて頭が回らない。


「え?は、はい」

「お前は俺に一生尽くせ。その代わりお前を死ぬまで必要としてやる」


 それは、命令の言葉。
 そして、初めて、人に必要とされた瞬間だった。

 何故かお腹らへんがが熱くなった。
 これは私の知識には無いな…初めてだ。
 今日だけで、初めてが何個あっただろう。
 きっと、この人は私にたくさんの初めてをくれる。
 この妙に胸がドキドキする感じがなにかも教えてくれるはずだ。

 今は彼が私を治してくれて必要としてくれている。
 それしか分からない。
 言葉にすれば一瞬。
 たかが一文。

 だがそれは、私にとって大きな一文だ。

 覚悟があるか?勿論だ。
 どこまでもついていける気がする。


 ◇◇アクトク・リョウシュ視点◇◇

 来るかなぁ?来るかなぁ?
 というかなんで覚悟とか言っちゃったんだろう。
 くそ!厨二病が未だにっ!
 来づらくないかな?


「き、来ました!」

「覚悟があるということだな。名前は?」

「エイリと申します」

「そうか。俺はアクトク・リョウシュ」


 なんでこんな話し方しか出来ないんだっ!
 厨二病じゃん!これじゃあ!


「では、ここで何をするのでしょうかっ!」


 え?あ、何しよう。

 そうだ!なんか奴隷を鍛えて強くして護衛にする的なやつがあった!

 それをとりあえずしよう!
 何も無いのはかっこ悪い!
 俺はそれなりに剣術もやった!(子供のお遊戯のワンステップ上くらい)
 剣術の指南とかしたかったんだぁ!


「訓練をする。ほら剣を持て」


 木の剣を渡す。


「はい!」


 威勢がいいなぁ…
 相手は同い年の女の子、しかもさっきまで病気。
 さらにはかなり華奢。
 優しく教えなければ…
 てか病み上がりをしごく俺ってかなり鬼畜なんじゃあ…
 もしかして嫌われ度上がってる?
 うわぁ…泣きたい…

 ・
 ・
 ・

 ん?めっちゃ強くなってね?
 すげぇ負けそうだったので今は全力でやっている。
 勿論ポーカーフェイスで。
 涼しい顔しながら全力です。


「せいや!」


 大きな掛け声を彼女が出す。
 完全に死角からの攻撃。
 え、ちょ、ま。
 カキンッ!
 という音と共に俺の剣が飛んでいく。
 やばい!威厳が無くなる!


「ま、まぁ…なかなか筋は良くなった。手加減してるとはいえ、凄いな」


 こういう時は少し褒めながら本気じゃないアピール。
 これが前世でひたすら誤魔化しが上手くなった男の末路だぁ!


「日が暮れてきたし今日はここまで」


 そう言うと彼女は少し言いづらそうにしながら口を開いた。
 何を言うつもりだ!?「本当は全力でしたよね!」とか言われたら泣く自信があるぞ?


「なんでこんな事をするんですか?私に剣を教えるのですか?」


 た、確かにぃー!
 理由もなく急に覚悟とか言い出して訓練とか気色悪いじゃん!
 理由を言わないのは女の子にやったらダメなこと1位だよ!(ガンギマリの会調べ)
 …何もねぇ!
 ここで「気分~」とか言ったら150パーセント嫌われる!(ガンギマリの会予想)

 何も思いつかないけどここで黙ってたら「こいつ考えてんな」ってなる!
 よし、はぐらかそう。


「君はまだ知らなくていいことだ。いつか教えてあげるよ」

「はい…必ず認められてみせます!」


 よく分かんないけど乗り切ったぁ~。

 部屋に戻る。ちなみに彼女には余ってた部屋をあげた。
 ちゃんと綺麗に掃除してあるよ。

 そんなことよりも重要な事がある。
 俺は基本的に暇だから訓練してやろうと思ったところまではPERFECT!
 ただし、めっっちゃ才能があったことは予想外すぎた!
 子供のお遊戯レベルとはいえ(暇だから)毎日練習してたんだよ?
 一日でなんで負けるのよ!!!

 しかもあいつは病み上がりだろう!
 最低だ!
 神様のバカァ!理不尽だぁ!

 つまり剣術はもうあんまり教えたくない。

 よし。魔術教えよう。

 この世界にはなんとも王道に魔術が存在する。
 呪文詠唱すればだれでも使えるぞい!系では無く、生まれつきの才能により属性がある。
 その属性の系統の中の難易度があり、難易度が高い魔法ほど練習が必要だ。
 難易度はレベルとよばれ、現在の最高レベルが8だ。
 俺の属性は?って?
「無」だよ。
 無しじゃないよ?
 違うって!
 無属性があるんだって!
 なんか雑魚そう?
 そういう属性こそなろう系では強いだろぉ!
 無属性は火、水、風、土、雷、etc…
 とある中でかなり希少な属性だ。
 何ができるかと言うと…
 幻術、瞬間移動、千里眼、などなど…
 強そうじゃない?
 まぁ、今紹介したの全部高レベルなんだけど…

 そこで君たちに凄いことを教えてあげよう。
 俺、幻術使えます。
 凄くない?
 レベル6の魔法だよ?
 えぐい!
 凄い!

 まぁ、小さい頃から(多分めっちゃ高い)魔導書をよんでからずっと練習してきたんだ。
 苦節、4年。
 毎日、最低でも5時間の練習を経て、ついに!
 俺の幻術はそこらの大人でも中々見破れないぞぉ?

 よし、これを使って明日は偉そうに魔術を教えよう。

 剣術できるからって調子のんなよ!ガキがァ!(もしかしてフラグ?いやいやそんな訳が…)


 ◇◇エイリ視点◇◇

 勝てた!
 その事を噛み締めながら私は布団に入る。
 手加減されてたとはいえ、このペースならいつか勝てるかもしれない。
 それに、彼はとても優しい。
 あの狂気的な笑みは何処から来ていたのだろうと。
 お父さんとの接し方を見ても普段から優しい性格のようだが…
 もしかして私にしか見せなかった本性?
 そう思うととても胸がドキドキする。

 風邪かな?

 それに本来奴隷がする身の回りの掃除などは全然言われない。
 まだ初日だが、言われる気はしない。

 それに、君はまだ知らなくていい。

 あの言葉はまだ信用していないということ?
 まぁ、初日だから仕方ないか。
 もどかしい。新しい感情だ。

 嬉しいな。
 どんどん色んな初めてがある。



 ◇◇次の日のアクトク・リョウシュ視点◇◇

「じゃあ、今日は魔法を教えていく。いいな」

「はい!ご主人様!」


 いいじゃん!こういうのだよ!
 なんか知らんけどいい感じの反応じゃん!
 こういうのが欲しかった!


「でも剣術は今日はしないのですか?」


 ちょっとできるからって調子乗んなよワレェ!


「どちらもできないと意味が無いからね」


 へっ!お前なんかきっと魔術は雑魚だよ!


「じゃあお手本を見せよう」


 思いっきり派手な幻影だしてやんよ!
 的はあるのだが使わない。
 だって使ったら幻術ってバレちゃうからね☆!


「的は使わないのですか?」


 さっき心の中で説明したじゃろワレェ!(理不尽)


「的を使ってしまうと辺りが吹き飛んじゃうからね」


 とイキって答えながら空に手をかざす。
 意味の無い魔法陣をたぁくさん手の周りとかに出す。

 そうしていると火、水、風、土、雷、etc…の玉のような物が周りに出てくる。

 標的をしぼれば絞るほど幻術の強さはます。
 すげぇ魔法見せてやるぜ!(幻術)


「え?これは、ほぼ全属性!?」


 ふふん!ああ、気持ちいい!
 アドレナリンドッバドッバ!


「神にこの崩壊をささげよう!『神への反逆アルファ・ゼロ』!」


 沢山あった魔法陣、玉がひとつに合わさっていく…

 なんかカッコイイ技名を言う。
 ちなみに詠唱にもなんの意味もなーい。

 その瞬間、紫色の光が空に向かって発射された。
 それは空を穿ち、地を震わせた。(そうかんじてるだぁけ!)

 彼女は腰を抜かしたようだ。
 へばっている。


「こんなの…」


 今だ!


「…1割か。今日は調子が出なかったな」


 ボソッと呟く。
 聞こえるか聞こえないかのギリギリライン。
 めっちゃ驚くこと間違いなし!


「と、というか!こ、こんな魔法使ったら大騒ぎに…」

「結界を貼っておいたから今のは外からじゃ見えないし感じれないよ」


 幻術なので彼女にしか見えないもんね!


「え…?聖属性まで!?あれは世界で数人の人しか使えないんじゃ…」


 気持ちいいねぇ!
 フハハハハハハ!


「うーん。でも今のをやれというのはな…これでも抑えたのだが…」


 ふっ!
 まだまだ底があるアピール第2弾!


「そうだ!あそこの的を今日中に魔法で壊してみてくれ」


 初歩的な魔導書を彼女に渡し、そう言う。


「でも何属性かもまだ…」


 ああ!そういえば、とコップに入れた水を持ってきて、そこに魔力を注入させ、色によって何属性かを決める。(どこかにそんな設定あったなぁ~)


「どうやら、闇と氷のようだ」 


 いいなぁ~。二属性とかすげぇやん。
 彼女に闇と氷の魔導書を渡し、


「じゃあ、あの的を今日中に壊してくれ」


 ともう一度言う。

 勿論無理に決まっている。
 あの的ミスリルだもん。
 レベル5か6は無いと壊せないだろう。
 へっ!剣術の才能があるからって調子に乗りやがって!
 私、弱い…魔法の才能ない…
 ってなって自尊心破壊されろ!
 バーロー!
 ざぁーこ!かーす!がーき!


「はい…」

「ちなみに俺は2歳の時初めて魔法を使ってあれを壊したぞ」

「が、頑張ります…!」


 もちのろんろん嘘だ。
 んなこと出来るわけないだろ!
 できたらきしょいわ!
 今でさえできないわ!
 そんな才能の暴力があったならお父さんの権力でそいつ潰す!

 ま、後はほっとこう。
 せいぜいがんばれ!(ゲス顔)

 部屋で幻術でももうちょっと練習しとくか。


 ・
 ・
 ・


 お!日が暮れてきた。
 あのクソイキリ野郎(風評被害)を煽りに行くか。
 クハハハハハ!

 訓練所(と言ってもやはり的があるだけの庭だが)に着いたぜ!
 さてさて。
 おっ!やっぱり壊せてない!
 煽ったろぉ~!(ゲス顔)


「『凍てつかず氷プライザサライク』!」


 そう思った瞬間、的が破壊された。
 どうやら彼女が放った氷の魔法のようだ。

 ゑ?

 あるうぇ~?

 なんでぇ~?

 今イキリ野郎が的を魔法で壊したように見えたんだけど…


「あっ!見ました?今の!出来ました!もしかしてそろそろ出来ると思って出てきたんですか?」


 尊敬の眼差し向けられても…


「あ、うん。もちろんだよ」


 クソゴミ野郎がァ!
 神様のクソ野郎!なんでこんなに才能に差があるんだ!

 クソっ!
 こいつ!捨ててやろうか!
 まぁ、怖いし、可愛いからそんな事しないんだけど…

 でも俺こいつ嫌い。
 クソ野郎!カス!ゴミ!ゲス!イキリ!無能!(無能はてめぇだ)

 よし、俺より魔術上手くなったらやだから魔術は保留だ。

 とりあえず一旦幻術かけれるかだけ試して見るか。
 かけようとする。何度も何度もかけようとする。
 あるうぇ?
 なんでかけれないの?
 幻術は魔法が自分と同等か強い相手には効かない…
 メンタル壊れた。

 剣に再シフトするぞ!

 って、あ!倒れた。
 疲れてたんか。魔力の枯渇かな?
 確かに5歳の子供にさせるには酷かったかな?
 まぁ、そんな事になろうがやめる気はない!
 (̫

 ◇◇エイリ視点◇◇

 今日は魔術を教えて貰えるらしい。
 剣術もしたかったのだが、これも大事なのだろう。

 だが少し距離を感じる気がする。
 試しにご主人様と呼んでみたら顔をほころばせていた。
 可愛い。

 的を使わないらしく、空に彼は手をかざした。

 その瞬間、少し空気感が変わり夢心地のような感覚になる。身体がなんだがふわふわしてる。

 魔法陣がいくつも展開されていく。

 そして、魔力の塊の様なものが、それも様々な属性の物が彼の周りに集まっていく。
 それは本来全属性がないとありえない事象。

「神にこの崩壊をささげよう!『神への反逆アルファ・ゼロ』!」

 その全てが、収束していく。
 刹那、紫色の光が、天を穿ち、地を震わせた。

 それを…見た。
 強烈だった。

 おとぎ話で見る勇者の一撃より、魔王が出した終焉の魔法より、輝き、強く、綺麗だった。

 しかも、それでさえ本気出なかったことが節々の言動から分かる。

 それにあのふわふわした感覚は結界を張ったからだと言うこともわかった。

 強い。強すぎる。圧倒的すぎる。

 勝てない。
 そもそもなんで私にこんな事を教えるのだろう。
 護衛…の為とは到底思えない。私がいくら努力しようとたどり着けない高見に彼はいる。
 きっと何か深いわけがあるのだろう。

 冷静に考えているつもりなのだが頭が回らなくなってきた。
 今までは一周まわって冷静だったのかもしれない。
 頭が情報についていかない…

 頭がまだごちゃごちゃしてるのに初歩魔導書を渡され、属性を計られ、その属性の魔導書も渡された。

 そして、今日中に的を壊すように言われた。
 どうみてもミスリル…
 はいと答えたものの無理でしょ…という気持ちが強かった。

「ちなみに俺は2歳の時初めて魔法を使ってあれを壊したぞ」

 それを聞いて理解した。
 これはある意味試験なのだろう。
 これを突破できたなら昨日言っていた理由とやらを言ってくれるのかもしれない。
 まだ第1試験の可能性もある。

 頑張らねば!こんな所で見限られる訳にはいかない!

 これは人生の分かれ道だ!
 彼のそばから離れるのはなんだが虚しいし…

 ・
 ・
 ・

「『凍てつかず氷プライザサライク』!」

 バキンと、的が壊れる音がする。

「やった…!」

 正直できるか不安だった。むしろ先に夜が来てしまう可能性も十分あった。
 ひたすらに魔法を打ち続けていたのが良かったのかもしれない。
 その時、視界にご主人様が写った。

「あっ!見ました?今の!出来ました!もしかしてそろそろ出来ると思って出てきたんですか?」

 やっぱり凄い…!

 ただ、なんだかご主人様は不機嫌そうで…
 もしかして、遅すぎた?
 ダメだ。このままじゃ捨てられる。もっと強くならないと…

 あれ?意識が遠のいていく…



 ◇◇アクトク・リョウシュ◇◇

 くそ!もう今までの訓練では俺がボコられて終わる…
 ならば!

 ダッシュでお父さんの元に。

「お父さん!前言ってた自聖騎士ラウンライトの廃棄予定だった訓練ミスリルってまだ倉庫にあるよね!」

「ああ、あるが何に使…」

「ありがとう!」

 自聖騎士ラウンライトとは貴族や領主などが抱える護衛の騎士のようなものだ。
 当然、腕利きばかり。
 そいつらの訓練所は大きいに決まっている。
 そしてそこに使われていたミスリルの人型の人形のような物がずっと使われていたので何個かバッキバキに壊れてしまっていたらしい。
 その廃棄に悩んでいたお父さんをよく覚えている。

 これと…もうひとつ用意するのは修復の魔法陣だな。

 確か倉庫にこれもあったはず。

 魔法陣というのは紙などに書かれた紋章で魔力を込めるだけでその力が使える。
 修復の魔法陣は1時間だけ物を新品の状態に戻すものだ。

 準備は完了した。
 クックック!明日が楽しみだぜ!

 ・
 ・
 ・

「今日は剣術をやる。まずはお手本を見せてやる」

 そう言って俺は1時間ほど前に修復したミスリルの人形を目の前に立てる。
 そして木の剣を持った。

 そして、さながら日本の抜刀術のような構えをとる。

「え?それはミスリルですよね。木の剣なんかじゃ…」

 3.2.1、今だ!
 俺は少し手元を動かす。

 そして1時間ほど前に修復したミスリルの訓練用人形はバッキバキに壊れた。

 外から見れば木の剣でミスリルの訓練用人形を一瞬でバッキバキにしたように見えたはずだ。

「え?そんな…どうやって?鍛治スキルエンチャント?」

「違う。魔法は一切使っていない」

 この世界では不便なことに魔法を使う時に少し身体が光るのだ。

 それが無いということは魔法を使っていないということなのだ!

「じゃあ、どうやって…」

「光速で剣を動かせばいいだけの話だ。もうひとつ技を見せてやろう」

「え?まだあるんですか…?」

 他のミスリルの訓練用人形を彼女に遠くに置いてきてもらう。
 およそ距離は100メートルほど。

 この人形達は少し先程の人形とずらして治してある。
 そろそろだな。

 手を少し動かす。
 その瞬間、遠くにあった人形がバラバラになった。

「これは本で読んだ、レベル7の剣に魔力を乗せるもの?でも光っていない…」

「その通りだ。今、俺は一切魔法を使っていない。魔法無しでこれくらいやって見せねばな」

 彼女は絶望したような顔をしている。
 へっ!イキリ野郎!ざまぁ!

「はい!頑張ります!いつか!必ず!」

 え?そんなに純粋に言われると…心が痛む。
 まぁ、元々の良心が欠片くらいしかないから実は痛くないんだけど…

「そして今日の課題なのだが…」

「はい…!」

 彼女がいきを飲む。

「素振り3万回」

「へ?」

「素振り3万回」

 時間的に1秒に1回やれば9時間もかからない。
 うん。良心的だ。

 ふっ!心折られろ!

「これくらい普通だぞ?俺は10万回やってた」

「そ、そうなんですか!?」

 んなわけあるか!
 そんな頭おかしい世界じゃないわ。

「あの技を出すには地道な特訓も必要だからな」

「はい…!」

 ふへへ。フハハ!ぐえっへへへ!
 クックック!

 その間に俺はこいつが出来なかった時に煽れるように準備しとこう。
 どう煽ってやろうか!

 ・
 ・
 ・

 家で準備の為に早起きしたぶん昼寝して庭で素振りをしているクソイキリ野郎!を見たり…
 昼頃になった時に気づいた。

 あれ?俺一度も昼飯あげてなくね?
 夕飯と朝ごはんはたっぷり食わしたが(めっちゃ感動してた)訓練とかに夢中になって昼ごはん全然あげてなくね?
 やっべ!もっていこ!



 ◇◇エイリ視点◇◇

「今日は剣術をやる。まずはお手本を見せてやる」

 また剣にもどった。
 交互にやるのかもしれない。

 そうして出されたのはミスリルの訓練用人形。
 そして彼が持っているのは木の剣。
 ゑ?

「え?それはミスリルですよね。木の剣なんかじゃ…」

 彼が構えていた剣を少しだけ動かした。
 その瞬間、ミスリルの訓練用人形はバラバラになっていた。
 信じられない…
 エンチャントかと思って聞いたが違うらしい。
 確かに魔法を使っている形跡は見当たらない…

「光速で剣を動かせばいいだけの話だ。もうひとつ技を見せてやろう」

 光速!?
 そんなの、勇者だってできっこない!
 人間にできることじゃないだろう。そんなわけ、ないだろう。
 泣きたくなるほど格の違いを見せつけられた気がした。

 次に彼は100メートルほど人形を遠ざけると構えた。
 またもや少し手を動かしただけ。私には切ってるところさえも見えない。
 100メートル先にあった人形がバラバラになった。

 なんだ。これは。

「これは本で読んだ、レベル7の剣に魔力を乗せるもの?でも光っていない…」

 僅かな可能性にかけてそう聞いた。
 魔法を使ったのだろうと。人間にこんな事はできないだろうと。

 ただ、答えは残酷だった。

「その通りだ。今、俺は一切魔法を使っていない。魔法無しでこれくらいやって見せねばな」

 ああ、私は弱いんだ。
 最初に1本取れたからっていつか追い抜かせるかもしれないなんて甘かった。
 この人は、何処までも高みにいる。
 きっと、この世界の誰だってこの人に勝つことは出来ないだろう。
 ただ、その剣を美しいと思った。
 欲しいと思った。
 その高みへと、登りたいと思った。

 そのためなら、どんな試練でも受けて見せよう。

「そして今日の課題なのだが…」

「はい…!」

 今日も手合わせか?

「素振り3万回」

「へ?」

「素振り3万回」

 1秒に1回でも9時間ほどかかる…

「これくらい普通だぞ?俺は一日に10万回やってた」

「そ、そうなんですか!?」

 10万回…1秒に1回感覚で28時間弱…

「あの技を出すには地道な特訓も必要だからな」

 彼のあの技を先程才能だと決めつけてしまったが、それはもしかすると努力のおかげだったのかもしれない。

「はい…!」

 ならば私が今すべきことは努力する事だ。
 そして、昨日で分かったこと。
 それは彼の言う課題は必要最低限の事だ。
 つまり、彼に認められるには…!




 ◇◇アクトク・リョウシュ◇◇

 俺が見たのは、聞いたのは、信じられない光景だった。

「3万6400!3万6401!ってご主人様!?」

 ん?3万?まだ昼だぞ?

「3万を超えました!まだまだいけます!」

 もしかすると頭がおかしいのかな?
 さっきからまだ5時間ほどしか経っていないのに3万??
 間違いなく1秒に1回以上やってるよね。
 てか休憩してる?
 体力おばけ?
 もしかして昨日の魔法訓練も休んでなかった?

 え?もうきっしょ!人間じゃねぇよ!

「認めて!くださいましたか?私は!まだまだぁ…」

 あ、倒れた。
 …一応ポーション飲ませた。

 てか認めるって何?ここまで鬼畜なことをやってる覚えは無いのだが…(十分鬼畜)

 あ!(察し)
 もしかして訓練つける理由的なやつはぐらかした時のこと?
 なんか意味深げに言ったからなんか凄いことと勘違いしてる?
 それ知るためにここまで頑張ったの?
 健気~!
 まぁ、理由なんてないんだけど…
 でもここで理由なーし!とか言ったら当然ぶち殺される。
 なんか考えとこ。

 ・
 ・
 ・ 

 やっと起きた。
 え?めっちゃ可愛いんやけど。
 毛がちょっと跳ねてるし。
 きゅんとしちゃうじゃない!


「おはよう」


 彼女は自分が寝てた(気絶)ことにきづくと、慌てたように頭を下げた。


「すみません!すぐに訓練に…!」


 いやいや、そこまで言った覚えはないよ?
 傍からみたら俺がくそ鬼畜ゴミ野郎みたいじゃん。


「いやいや、休憩していきなよ。話したいこともあるしな」


 思いっきり思わせぶりな顔をしてみる。


「俺が、何故君に訓練をつけるか。だよ」

「!?」


 驚きながらも嬉しそうな顔だ。


「今の世界の現状を知ってるか?辺境貴族は政治により税金は上げる一方。民は一揆を企てるが税金で雇われた騎士によって抑えられる」


 ま、本に書かれていることを適当に日本人としての感性から述べるだけだけどね。


「善政なんてほとんどない。中央の貴族は贅沢ばかり。政治をほとんど王様はしていない。そんな状況だ」


 この世界の貴族は中央貴族と辺境貴族に分けられる。
 中央貴族は政に関わっていることが多いので立場が大抵大きい。
 俺の父さんは辺境なのに四大貴族。四大貴族の中での立場は低いが凄くない?


「政治を王様がしていない!?誰かに裏で操られているということですか?でもそんなこと聞いた事が…」


 なんかめっちゃマニアックな書庫の奥にあったホントノ・コトカクさんの本で読んだ。
 こいつ以外はそんな説唱えてないんだけど…
 こういう世界にはお決まりの展開でしょ!
 多分合ってるだろ!きっと!およそ!
 2パーセント位の確率で!
 あとなんかこういう設定燃えるじゃん!
 かっこいいやん!


「そんなんで何故政治が回っていると思う?」

「確かに…何処かで破綻しそうな経済なのに農民はちゃんと税を納められてるし…」


 税金は上がり、貴族は贅沢三昧、税金で雇われた騎士で一揆は止められる。
 そんなどう考えても財政が破綻するはずだ。
 どこから財源がきてるのか。


「魔物だよ」

「え?魔物?それは100年前に勇者によって全て全滅させられたと…」


 そう、100年前、魔王と共に勇者は朽ちた。
 だれもが知っている伝説。
 魔物を倒すために磨かれた魔法や剣の技術、もう必要ないその技術。
 衰退しててもおかしくないはずだ。(なろう系だとだいたいそう)
 なのにむしろそれは進化している。
 何故かは聞くまでもなく戦争の為だ。
 魔物によって手を取り合っていた3つの大国は戦争状態になった。
 今は停戦しているが終戦では無い。
 そんな状態だから国は戦力をどんどん増強させていった。
 騎士や魔道士育成のための学園をつくり、研究所をつくり…
 とてもじゃないが上がった分の税金でどうこうできる物じゃない。


「魔王は勇者によって討たれていない。討たれたのは魔王でなく勇者だ。同士討ちではなく、勇者のみが死んだ」

「そ、それは!」


 だいたいおかしいんだ。税金が上がっているはずなのに村人の生活は豊かになっている。
 税金が上がっていると思わされているだけ。
 父さんの税金からの収入は増えていなかった。
 補助金などの額が増え、むしろちゃんとお金が行き渡るようになった。

 何故こんな回りくどい事をしているのか。理由は簡単、あることを他の国に隠蔽する為だ。


「この国の政治を動かしているのは魔王だよ」

「!?」

「魔王によるほぼ半永久的な財産。それがある事を知られてしまえば2つの大国両方を相手にすることになる。だから隠蔽しているんだ」


 うん。なかなかよく出来た創作じゃないか?俺は小説家を目指した方がいいかもしれん。


「それをぶっ壊すのが、俺ってことだよ」


 ん?でもこの話だと魔王のおかげで村人の生活豊かになってない?
 これ「その生活を俺が壊してやんよww」
 みたいなサイコ悪役構文になってない!?

 若干引かれてる気がする…
 嗚呼!泣きたい!

 って泣き出したァ!やばい!完全に悪役だと思われてる!
 怖がられてる!
 なんで!神様!俺なんでこんなに不幸なの!

 ◇◇エイリ視点◇◇

 聞いたのは衝撃の事実。
 世界観が変わってしまうような話だった。


「それをぶっ壊すのが、俺ってことだよ」


 彼は狂おしく笑う。悪役のように。
 それは、今豊かな村人の生活を壊すということに繋がる。だから彼はわざと悪役のようなことを言ったのだろう。
 私の覚悟をたしかめるために。
 直接言っていないが彼が言っているのは私たちが魔王軍となってしまうということ。

 そのような定めに彼一人で立ち向かわせる事などさせない。
 必ず、私も着いていく。


 嗚呼、やっと気づいた。分かった。

 もう二度と失いたくないものが出来た。
 短い時間しか一緒にいないが、私には彼が必要だと思う。
 初めて、わたしを見てくれて、必要としてくれた人。
 初めて、初めて、初めて、初めて!
 初めてを初めて、沢山くれた人。

 このどうしようも無い気持ちは何なのだろう。
 これが、恋なのかもしれない。愛なのかもしれない。

 きっと誰でも良かった。
 きっとこのひとじゃなくても私はこう思っていただろう。
 ただの偶然。ただ、私にはその偶然がどうしようもなく大事だ。

 私はきっと彼以外の人に助けられてもこの感情を抱いていた。
 つまり不純な恋だ。それに彼がこれを受けてくれるとは思えない。

 だから、この気持ちは一旦封印だ。
 全てが終わった時、この気持ちを伝えよう。
 もしかすると伝えれることは無いかもしれない。
 勿論玉砕されるだろう。諦めなければならないのだろう。
 それでも、それでも…

 なんで、なんで、今更、こんなに強い感情が溢れてるんだろう。
 なんでこの強い感情が彼に向かうのだろう。
 絶対に叶わないであろう、奴隷と主人という立場の恋。
 それも一方的な片思い。

 嗚呼、苦しいな。胸がチクチクする。
 きっと彼は貴族の女性と結婚してしまうのだろう。

 いや、こんな話じゃない。そもそも彼はこの国に反逆しようとしてるんだ。
 こんな感情をそんな運命を背負った彼に向けるべきでは無い。

 頭がごちゃごちゃして簡潔にまとまらない。
 ただ、1つ。
 私のこの気持ちはきっと諦めなければならない。
 閉じ込めておかねばならない。

 でも、でも、でも!
 今日だけ、今日だけでいいから…
 泣くのは最後にするから…

 この恋心を、ぶつけさせてください。

 目から涙が溢れ落ちる。
 彼が心配そうにしていたので胸を借りた。
 初めて嗅ぐ、いい匂いがした。
 泣きじゃくった。こんなに泣いたのは初めてかもしれない。

 なんでこんな人に初恋してしまったのだろう。
 しかも一生冷めないような熱量で。
 神様は残酷だ。
 だけどありがとう。この人と出会わせてくれて。

 私はこの人を支えよう。全力を持ってして。
 私はこの人を支えられるくらい強くなろう。
 私はこの人を支える仲間を募ろう。私一人ではこの人は大きすぎるから。
 私はこの人を愛そう。心の中で。

 ただの私のエゴなのかもしれない。
 小さな、まだ5年しか生きてない私だけど、病気のせいで時間はいくらでもあった。
 そこそこ大人びているはずだ。
 だから小さな時の誤ちだなんて思わない。

 私は心の底から、貴方のことを、愛しています。














──愛とはなにか。

歪んだ呪い、自己超越の力、他者との結合、一者、エロース、アガペー、フィリア…

沢山あるが、どれでもないのだ。


愛とは、愛だ。
愛と言う言葉でしか表せないからこそ、人はそれを愛と呼ぶ。
否、愛としか呼べない。


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