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六月
登校初日 3
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授業を終えて帰り支度をはじめると、またクラスメイトに取り囲まれた。五人ほどの顔ぶれは昼休みの時とほとんど同じで、賑やかな性格の人たちらしいとひとまとめにして覚えてしまった。
「遊び行こうよ、街案内するし」
「街って駅の辺り? ぶっちゃけ、そんなに拓けた感じじゃなかったけど」
最寄り駅は徒歩三十分ばかりの距離で、学校近辺よりはちゃんと店もあったが、遊べそうな雰囲気ではなかった。つい昨日通ったばかりの街並みを思い出して、失礼とは思いつつ首を傾げる。すると皆揃って気まずそうな表情を見せた。
「あー、まあ……」
「拓けてはいないけどさあ……」
「でもゲーセンくらいはあるんだよ」
「……裏通りの寂れたやつがね」
「カラオケもあるし」
「寂れたゲーセンの上の階に、煤けたやつがね」
「いちいち貶すなよ!」
「ハードル下げてやってんだろうが」
懸命に提案する度に却下されて、ついに怒鳴ったのが赤田。律儀に貶していったのが川口。呆れた風に二人を眺めているのが白沢と大原で、取りなす術を探す風に苦笑しているのが丸山。
遊びに行くのも悪くないけど、やっぱり疲れたなと内心考え、視線を逃がす。このままだと参加の流れだ。さてどうしよう、迷っていると、教室の前の扉ががらりと開いた。
「氷川まだいるか? あ、いるな。ちょっといいか。あと文月も、学年室に来てくれ」
そう呼ばわったのは、担任の夏木だ。少しほっとして、クラスメイト達に手を上げて見せた。
「ごめん、呼ばれちゃったから行くね。また誘ってくれる?」
「うん。じゃあ先帰るな」
「頑張れよー」
ひらひらと手を振って、赤田を筆頭に五人まとまって帰って行く。きっと寂れたゲームセンターか、煤けたカラオケで遊ぶんだろう。それを見送って、氷川は鞄を手に取った。
「一緒に行こう」
「ありがとう、助かる」
同じく荷物を手にした文月の気遣いに感謝して、一緒に学年室に向かう。夏木は彼自身の机で何か作業していた。氷川らに気付いて、手を止め別の書類を引っ張り出す。
「すいません、お待たせしました」
「いいよ、さっそく友達ができたみたいで何よりだ。ところで、氷川は前の学校では部活とかやってた?」
「いえ、何もやってません」
部活に入るような精力的な生徒ではなかった氷川は、あっさり否定する。文月が少しばかり意外そうな表情で視線を寄越した。
「そうなのか?」
「うん。運動は得意じゃないし、入りたい部もなかったから」
「そうか……この学校が文武両道を謳ってるのは知ってるよな。氷川も何か部活動をやるといいと思って、文月に案内を頼もうと思ったんだが」
言い止して、夏木が氷川を見上げる。言わんとすることを何となく察して、氷川は僅かに肩を落とした。理事長や学院長らに挨拶した際のことを思い出したのだ。特例で転入を認めた以上、普通の生徒では困るというところか。
「何か部に入らせるように言われました?」
「命令ではないよ。そのほうが早く馴染めるし、楽しいだろうからって」
「そうですが」
どう言葉を用いた所で、学院長のお願いは、一教師にとっては強制力に等しい効力を発揮する。末端の意思をすり潰す指示が手軽に下されるのは、トップダウン式の弊害だ。
氷川は溜息を飲み込んで、額にてのひらを当てた。
「分かりました。入れそうな所を探してみます。文月くん、案内お願いするね」
「分かった」
「頼む。悪いな」
「一応全部見て回ったほうがいいですか」
状況を理解した風に文月が訊ねる。夏木はそれに印刷物を一枚渡して、いいやと答えた。
「氷川の興味がある所だけでいい」
興味なんてありませんとも言えず、曖昧に頷いた。
部活棟は教室のある棟から少し離れて建てられている。校庭や体育館、武道場などを練習場所にする運動部に配慮した立地なのだろう。校内を移動し、渡り廊下を抜けながら、部活の説明を受ける。
文月の説明によると、ここの学校では中等科と高等科の部活動は分かれておらず、運動系・文化系共に上級生が下級生の指導に当たるのが一般的であるらしい。運動部は一般的な高校よりも一年早く、高二のインターハイ後、秋くらいに引退することが多いそうだ。今から入部するのはどう考えても適切ではないので、文化系に標準を絞ることにした。文化系なら高三の春頃までは在籍できる。一年弱参加すれば、文句も言われまい。まあ、浮くだろうが仕方ない。
夏木から渡された、部活棟の見取り図と部活一覧に視線を落とす。
文化部は――演劇部・合唱部・吹奏楽部・軽音部は論外だ。途中参加できる類いじゃない。話しながら半分くらいに×印をつけたところで、文月が顔を上げた。
「そろそろ行こうか。どこもいつでも見学は受け付けてるし、大丈夫だ」
背中を押すように肩を叩かれて、思いの外緊張していた自分に気付いた。
「うん。行こう」
自分に発破をかけるつもりで声に出すと、文月がおかしそうに笑った。
――とはいえ、参加できそうな部活、というのは案外少ない。文才など皆無だと自覚している氷川には文芸部の門を叩くのは困難だ。料理などしたことがないのに調理部に行っても仕方がない。華道も茶道も嗜みがないし、星座にも興味がない。ボードゲーム全般はルールも知らず、サブカル系はなんだか抵抗感が強い。
迷った末、とりあえず新聞部は避けずに覗いてみた。ノートやファイル、スクラップ、印刷物などで雑然とした室内には生徒が一人だけいて、すぐに気付いて手を振ってくれる。落ち着いた雰囲気の真面目そうな生徒だったことに安心して、部室にお邪魔した。
「見学者?」
「はい。大丈夫ですか?」
「歓迎歓迎、あ、そっちの彼は転入生くんでしょ、知ってるよ」
羽積と名乗った人物は三年生の前部長だそうで、人懐こい笑顔で氷川を示す。面識のない相手に言い当てられて、氷川は半歩下がった。
「どうも、初めまして。なんで俺が転入生だって知ってるんです?」
「新聞部だもん。報道の基本は情報収集だからね。それで、うちに入ってくれるの? 記者はいつでも募集中だよ」
「いやあ、文章上手くないんですよね」
婉曲な拒絶を笑って、羽積が椅子を勧めてくれる。あまり長居するつもりはないけれど、考えながら一応腰掛けた。手元に積まれた紙を渡されて、自然と目を向ける。A3サイズを二つ折りにした紙の表紙右上には、大字で如水学院新報と銘打たれている。この部の発行物らしい。
「これが今週号ね。新聞部では毎週一回、定期的に校内新聞を発行してます。校内の各掲示板に張り出す他、一部百円で配布してるよ。部内で取材して記事を書いて、写真は自前で用意する他、美術部の写真科に協力を頼むこともある」
「……美術部の写真家?」
「この学校、写真部がないんだ。写真も芸術って扱いで、美術部の中に写真の部門がある」
横から嘴を挟んだ文月に気分を害した風もなく頷いて、羽積が中面の写真を指差した。学内の庭園らしい、美しい木花の写真が載っていた。
「こういう写真らしい写真は彼らに頼むわけ。報道写真は自前だけどね。記事は、叩き台を用意してくれれば、文章の上手い奴が推敲するから文才の心配はいらない。それより重要なのは生徒が興味を持ってくれる記事のネタを見つけること。今週は君がいたからそれでひとつ見出しができたけど、普段はこれといったこともない学校生活だから」
言われて見れば、一面の左下に“転入生来る”と打った欄がある。写真のない文字だけのもので、クラスと名前くらいしか書いていない。盗撮されなかったことに安堵しつつ、名前が売れてしまったことには不安を覚える。目立つのは苦手だ。
「生徒が興味を持つネタですか……」
「そう。先月、先々月は体育祭と選挙で持たせたし、今月は生徒会の新体制の話である程度は繋げるけど、それだけで紙面を作るわけにもいかないでしょ。部長の交代なんて、部員しか興味ないしさ。文化祭の時期まではネタ探しに苦労するんだよね」
「文化祭って秋でしたっけ」
「十一月だね。確か毎年、十月くらいから文化祭の特集組んでますね」
「そうそう。よく読んでくれてるんだね、嬉しいな。君、入部しない?」
羽積がにこやかに文月を勧誘する。先程も少し思ったが、なんとなく食えない表情だ。本心ではない感じがする。
「折角ですが、学級委員は意外と仕事が多くて忙しいので」
「ああ、委員長なんだ。それで、一緒に回ってるんだね」
「ええ。ご期待に添えなくてすみません」
「気にしないでいいよ。えーっと、氷川くんだっけ」
二人のやりとりを眺めていると、矛先が急にこちらに向いた。少し驚いて、居ずまいを正す。
「はい?」
「新聞部の活動は任意だけど、毎週月曜日発行、金曜日締めで校内新聞を発行してます。記者あるいは編集者として参加すると、必然的に校内に気を配ることになるから、この学校について早く詳しく知りたいならお勧めだよ。ただ、企画を立てるのも記事を書くのも紙面構成を考えるのも楽じゃないから、半端な気持ちじゃできない。それを踏まえて、参加するつもりがあるならいつでも歓迎するよ。検討してみて」
「……お遊びじゃない、ってことですね」
「そういうこと」
満足そうに頷く羽積を見て、気付いた。食えないと感じたのは当然だ。彼はまるで面接官のように氷川と文月を検分し、観察していた。それが自然になるほどの洞察力が必要なのかと戦慄する。自分には向いていない、やめておこう。そう判断して、氷川は話を終わらせることにした。
「考えてみます。他も覗いてみたいんで、今日は失礼します。説明ありがとうございました」
「どういたしまして。あ、そうだ、これお土産」
「一部百円じゃないんですか?」
一部取って渡された校内新聞を手に、目をまたたく。財布を出そうとしたのを止めて、羽積が口端を上げた。
「資料代わりに奢ってあげる。次は君が部員として来てくれるのを待ってるからね」
ひらひらと手を振る羽積に見送られて、新聞部の部室を後にした。
「遊び行こうよ、街案内するし」
「街って駅の辺り? ぶっちゃけ、そんなに拓けた感じじゃなかったけど」
最寄り駅は徒歩三十分ばかりの距離で、学校近辺よりはちゃんと店もあったが、遊べそうな雰囲気ではなかった。つい昨日通ったばかりの街並みを思い出して、失礼とは思いつつ首を傾げる。すると皆揃って気まずそうな表情を見せた。
「あー、まあ……」
「拓けてはいないけどさあ……」
「でもゲーセンくらいはあるんだよ」
「……裏通りの寂れたやつがね」
「カラオケもあるし」
「寂れたゲーセンの上の階に、煤けたやつがね」
「いちいち貶すなよ!」
「ハードル下げてやってんだろうが」
懸命に提案する度に却下されて、ついに怒鳴ったのが赤田。律儀に貶していったのが川口。呆れた風に二人を眺めているのが白沢と大原で、取りなす術を探す風に苦笑しているのが丸山。
遊びに行くのも悪くないけど、やっぱり疲れたなと内心考え、視線を逃がす。このままだと参加の流れだ。さてどうしよう、迷っていると、教室の前の扉ががらりと開いた。
「氷川まだいるか? あ、いるな。ちょっといいか。あと文月も、学年室に来てくれ」
そう呼ばわったのは、担任の夏木だ。少しほっとして、クラスメイト達に手を上げて見せた。
「ごめん、呼ばれちゃったから行くね。また誘ってくれる?」
「うん。じゃあ先帰るな」
「頑張れよー」
ひらひらと手を振って、赤田を筆頭に五人まとまって帰って行く。きっと寂れたゲームセンターか、煤けたカラオケで遊ぶんだろう。それを見送って、氷川は鞄を手に取った。
「一緒に行こう」
「ありがとう、助かる」
同じく荷物を手にした文月の気遣いに感謝して、一緒に学年室に向かう。夏木は彼自身の机で何か作業していた。氷川らに気付いて、手を止め別の書類を引っ張り出す。
「すいません、お待たせしました」
「いいよ、さっそく友達ができたみたいで何よりだ。ところで、氷川は前の学校では部活とかやってた?」
「いえ、何もやってません」
部活に入るような精力的な生徒ではなかった氷川は、あっさり否定する。文月が少しばかり意外そうな表情で視線を寄越した。
「そうなのか?」
「うん。運動は得意じゃないし、入りたい部もなかったから」
「そうか……この学校が文武両道を謳ってるのは知ってるよな。氷川も何か部活動をやるといいと思って、文月に案内を頼もうと思ったんだが」
言い止して、夏木が氷川を見上げる。言わんとすることを何となく察して、氷川は僅かに肩を落とした。理事長や学院長らに挨拶した際のことを思い出したのだ。特例で転入を認めた以上、普通の生徒では困るというところか。
「何か部に入らせるように言われました?」
「命令ではないよ。そのほうが早く馴染めるし、楽しいだろうからって」
「そうですが」
どう言葉を用いた所で、学院長のお願いは、一教師にとっては強制力に等しい効力を発揮する。末端の意思をすり潰す指示が手軽に下されるのは、トップダウン式の弊害だ。
氷川は溜息を飲み込んで、額にてのひらを当てた。
「分かりました。入れそうな所を探してみます。文月くん、案内お願いするね」
「分かった」
「頼む。悪いな」
「一応全部見て回ったほうがいいですか」
状況を理解した風に文月が訊ねる。夏木はそれに印刷物を一枚渡して、いいやと答えた。
「氷川の興味がある所だけでいい」
興味なんてありませんとも言えず、曖昧に頷いた。
部活棟は教室のある棟から少し離れて建てられている。校庭や体育館、武道場などを練習場所にする運動部に配慮した立地なのだろう。校内を移動し、渡り廊下を抜けながら、部活の説明を受ける。
文月の説明によると、ここの学校では中等科と高等科の部活動は分かれておらず、運動系・文化系共に上級生が下級生の指導に当たるのが一般的であるらしい。運動部は一般的な高校よりも一年早く、高二のインターハイ後、秋くらいに引退することが多いそうだ。今から入部するのはどう考えても適切ではないので、文化系に標準を絞ることにした。文化系なら高三の春頃までは在籍できる。一年弱参加すれば、文句も言われまい。まあ、浮くだろうが仕方ない。
夏木から渡された、部活棟の見取り図と部活一覧に視線を落とす。
文化部は――演劇部・合唱部・吹奏楽部・軽音部は論外だ。途中参加できる類いじゃない。話しながら半分くらいに×印をつけたところで、文月が顔を上げた。
「そろそろ行こうか。どこもいつでも見学は受け付けてるし、大丈夫だ」
背中を押すように肩を叩かれて、思いの外緊張していた自分に気付いた。
「うん。行こう」
自分に発破をかけるつもりで声に出すと、文月がおかしそうに笑った。
――とはいえ、参加できそうな部活、というのは案外少ない。文才など皆無だと自覚している氷川には文芸部の門を叩くのは困難だ。料理などしたことがないのに調理部に行っても仕方がない。華道も茶道も嗜みがないし、星座にも興味がない。ボードゲーム全般はルールも知らず、サブカル系はなんだか抵抗感が強い。
迷った末、とりあえず新聞部は避けずに覗いてみた。ノートやファイル、スクラップ、印刷物などで雑然とした室内には生徒が一人だけいて、すぐに気付いて手を振ってくれる。落ち着いた雰囲気の真面目そうな生徒だったことに安心して、部室にお邪魔した。
「見学者?」
「はい。大丈夫ですか?」
「歓迎歓迎、あ、そっちの彼は転入生くんでしょ、知ってるよ」
羽積と名乗った人物は三年生の前部長だそうで、人懐こい笑顔で氷川を示す。面識のない相手に言い当てられて、氷川は半歩下がった。
「どうも、初めまして。なんで俺が転入生だって知ってるんです?」
「新聞部だもん。報道の基本は情報収集だからね。それで、うちに入ってくれるの? 記者はいつでも募集中だよ」
「いやあ、文章上手くないんですよね」
婉曲な拒絶を笑って、羽積が椅子を勧めてくれる。あまり長居するつもりはないけれど、考えながら一応腰掛けた。手元に積まれた紙を渡されて、自然と目を向ける。A3サイズを二つ折りにした紙の表紙右上には、大字で如水学院新報と銘打たれている。この部の発行物らしい。
「これが今週号ね。新聞部では毎週一回、定期的に校内新聞を発行してます。校内の各掲示板に張り出す他、一部百円で配布してるよ。部内で取材して記事を書いて、写真は自前で用意する他、美術部の写真科に協力を頼むこともある」
「……美術部の写真家?」
「この学校、写真部がないんだ。写真も芸術って扱いで、美術部の中に写真の部門がある」
横から嘴を挟んだ文月に気分を害した風もなく頷いて、羽積が中面の写真を指差した。学内の庭園らしい、美しい木花の写真が載っていた。
「こういう写真らしい写真は彼らに頼むわけ。報道写真は自前だけどね。記事は、叩き台を用意してくれれば、文章の上手い奴が推敲するから文才の心配はいらない。それより重要なのは生徒が興味を持ってくれる記事のネタを見つけること。今週は君がいたからそれでひとつ見出しができたけど、普段はこれといったこともない学校生活だから」
言われて見れば、一面の左下に“転入生来る”と打った欄がある。写真のない文字だけのもので、クラスと名前くらいしか書いていない。盗撮されなかったことに安堵しつつ、名前が売れてしまったことには不安を覚える。目立つのは苦手だ。
「生徒が興味を持つネタですか……」
「そう。先月、先々月は体育祭と選挙で持たせたし、今月は生徒会の新体制の話である程度は繋げるけど、それだけで紙面を作るわけにもいかないでしょ。部長の交代なんて、部員しか興味ないしさ。文化祭の時期まではネタ探しに苦労するんだよね」
「文化祭って秋でしたっけ」
「十一月だね。確か毎年、十月くらいから文化祭の特集組んでますね」
「そうそう。よく読んでくれてるんだね、嬉しいな。君、入部しない?」
羽積がにこやかに文月を勧誘する。先程も少し思ったが、なんとなく食えない表情だ。本心ではない感じがする。
「折角ですが、学級委員は意外と仕事が多くて忙しいので」
「ああ、委員長なんだ。それで、一緒に回ってるんだね」
「ええ。ご期待に添えなくてすみません」
「気にしないでいいよ。えーっと、氷川くんだっけ」
二人のやりとりを眺めていると、矛先が急にこちらに向いた。少し驚いて、居ずまいを正す。
「はい?」
「新聞部の活動は任意だけど、毎週月曜日発行、金曜日締めで校内新聞を発行してます。記者あるいは編集者として参加すると、必然的に校内に気を配ることになるから、この学校について早く詳しく知りたいならお勧めだよ。ただ、企画を立てるのも記事を書くのも紙面構成を考えるのも楽じゃないから、半端な気持ちじゃできない。それを踏まえて、参加するつもりがあるならいつでも歓迎するよ。検討してみて」
「……お遊びじゃない、ってことですね」
「そういうこと」
満足そうに頷く羽積を見て、気付いた。食えないと感じたのは当然だ。彼はまるで面接官のように氷川と文月を検分し、観察していた。それが自然になるほどの洞察力が必要なのかと戦慄する。自分には向いていない、やめておこう。そう判断して、氷川は話を終わらせることにした。
「考えてみます。他も覗いてみたいんで、今日は失礼します。説明ありがとうございました」
「どういたしまして。あ、そうだ、これお土産」
「一部百円じゃないんですか?」
一部取って渡された校内新聞を手に、目をまたたく。財布を出そうとしたのを止めて、羽積が口端を上げた。
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