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第21話 白銀の姫騎士

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 50メートル程の巨大な地龍だったが、何とか無事に倒すことが出来た。
 それにしても地龍を倒したことによって、SPが100,000も溜まったのはかなり大きい。
 俺は首を刎ねた地龍の死骸を眺める。

「とりあえず地龍の死骸だけど存在しているだけで脅威になりそうだから『異空間収納』へと仕舞い込むとするか」

 俺は地龍を『異空間収納』へと仕舞い込む。
 ファンタジー小説とかだと、ドラゴンの肉は超絶に美味だと聞く。
 これはドラゴンの肉を食する時が楽しみだな。

 そんなことを考えていると、地龍の尻尾の殴打を喰らった白銀の剣姫が足を引き摺りながら歩いてくる。

「大丈夫か? そんなボロボロの身体で」

 俺は今にも倒れそうな白銀の剣姫を抱き止める。

「ありがとうございます。何から何まで。情けない限りです……」

 蒼色の瞳には潤んでいて、雫が浮かぶ。
 そんな姿に俺は心がドキッとしてしまう。

 この剣姫は情けないというが、俺と歳が変わらないくらいで、それに加えて女の子だというのに、地龍に挑んで立ち向かったのだ。
 そんな女の子の何が情けないというのか。
 俺は剣姫の肩を抱いて、涙を拭いてやる。
 
 小っ恥ずかしいが、なんだかそれが正しいような気がした。
 流石にこのままだと息絶えてもおかしくない状態なので、上級回復薬ポーションを飲ませてやる。
 すると地龍との戦闘で出来た外傷がみるみると消え去っていく。
 虚脱感までは回復しないようで、まだぐったりとしている。

「ありがとうございます。大分楽になりました。本当に貴方には数え切れない程の事をして頂きました。本当に何をお返しすれば良いのか」

 白銀の剣姫はそんな事を言うが、別に俺は当たり前のことをしただけだ。

「いえいえ、俺は当たり前のことをしただけですから。困っている人が居たら助ける。貴方もそうでしょ?」

 白銀の剣姫の頬がまたも赤くなる。
 そんなところに後ろから『翼竜の翼』のメンバーがやってきた。

「お前、急に一人で地龍を倒しにいくっていって飛び出していくから!」
 ケインが息を切らしている。
 マリンも肩で息をしていて、

「本当よ、どんな足腰してんのよ。もう!」

 マルゴとサリネに関しては疲れ過ぎていて、全く喋れない様子。
 時間が経って落ち着いたようで、事情を説明した。 

 そして、『翼竜の翼』は俺が抱きとめている少女を見て、口をパクパクとさせている。

 ケインが慌てた様子を浮かべる。

「白銀の甲冑、そして白銀の髪に、蒼色の瞳」

 ケインが発した言葉に、さらに慌てた様子を浮かべる。
 そして、マリンの口から驚くべき言葉が出てくる。

「お、お、お、王女殿下!」

 俺はマリンの発言に驚きを隠せず自分が抱きとめている白銀の剣姫をもう一度見る。
 すると、白銀の剣姫は得意げな表情を浮かべ可憐に微笑んだ。

「こんな格好で挨拶するのは少し情けないけれど、私はアルトバルト王国、第3王女フィリナ・ティア・アルトバルトよ。この度は私の命の危機を助けていただき、誠にありがとうございます」

 俺は思わず、今自分が抱きとめていた少女の正体がこの国の王女殿下だと知り、思わず手を離してしまう。
「あ!」と思ったが、間に合わず王女殿下は倒れてしまう。

「イタタタタ…………突然放してしまうなんて」
 
 王女殿下は少しばかりムスッとした表情を浮かべている。
 そんな表情も可愛いなと思ってしまう。
 王女殿下は上級回復薬ポーションの効果のお陰か自力で立ち上がる。

 そして、立ち上がると同時に『翼竜の翼』のメンバーが膝をついて首を垂れる。
 俺もそれに並んで頭を下げる。
 だが、王女殿下はそれを制す。

「今更畏まらなくていいですよ。私の命の恩人なのですから、それより貴方達のお名前をお伺いしても宜しいですか?」

 各々にこの国の王女殿下に自己紹介をしていく。

「俺は『翼竜の翼』のソウタです。先程は大変失礼致しました」

「いえいえ、ソウタ様というのですね。命の恩人の貴方に感謝することはあれど、咎めるなんてことはできません。ただ少し寂しかったというだけです」

 王女殿下はクスクスと微笑む。
 何だな先程、地龍と戦っていた人とは思えないほどの乙女だななんて思う。
 
「挨拶は済みましたし、負傷の騎士たちの治療を優先した方が良いかと思います。私達も『翼竜の翼』も回復薬ポーションで治療致します」

 リーダーであるケインは王女殿下に進言する。
 我ながら度胸があるなと思うが、その度胸を地龍に対して発揮して欲しかったなと思う。

 王女殿下はケインの進言にも拒むことなく縦に首を振る。
 その後俺たちはフィリナ王女殿下専属騎士団の負傷者の手当をした。
 地龍の襲来によって、騎士団の何人かはもう既に息をしていなかった者もいた。
 フィリナ王女も悲しい表情を浮かべすれど、涙を流すことはなかった。

 フィリナ王女殿下は仲間の騎士達をこの場に埋葬していくと苦渋の決断をしていたが、流石に可哀想だと思ったので地龍と一緒に亡骸を『異空間収納』へと収納した。

『翼竜の翼』が手当をしているところ、フィンブルド伯爵令嬢シーリアの馬車の団体が後方から姿を表した。

 伯爵令嬢のシーリア、王女殿下の馬車に気が付いたのか凄い勢いで馬車の中から飛び出してきた。
 
 シーリアはフィリナ王女殿下と面識がある様子。

「フィー! 大丈夫だったの? 地龍に襲われ——」

 シーリアも既にボロボロ騎士達の惨状を見て、軽い事を言わないように口を結ぶ、
 シーリアの気遣いに気づいた王女殿下も

「なんとか私の命だけは助かったみたいです。私の命があるのも全てここにいらっしゃるソウタ様のお陰ですわ」

 王女殿下は俺の方をチラッと見る。
 すると、シーリアは俺の方を見て、

「あのSSS級の地龍を倒したのはやっぱりあんただったのね! 馬車の外に出たらあんたが居ないもの! 本当に心配したわよ! まぁ良くやったわ! この私が褒めてあげる!」

 シーリアはご満悦な笑みを浮かべる。
 王女殿下は俺とシーリアの関係が気になるようで、

「ソウタ様とシーリアはどんな関係でいらして?」

 俺はフィリナ王女殿下に「今回護衛依頼で雇われたのです」と言おうと思ったのだが。

 シーリアは自分の玩具を自慢するかのように、

「聞いて驚きなさいよね! 実はソウタは私だけの専属料理人なのよ!」

 俺は王都アルバ行きまでの話だろ、とシーリアに突っ込みたかった。

 それを聞いたフィリナ王女殿下は何かを企んでいるような顔をしている。

「そうですか……それは残念です……ですが、専属料理人って言う事であれば」

 クスクスとフィリナ王女殿下が笑っている。
 そんな空気をぶち壊す存在が1人いた。

「お嬢様~。何、王女殿下に嘘なんて付いているんですか~。ソウタ様は今回、護衛依頼したただの冒険者ですよ~」

 やはりその存在とは、シーリアの侍女ルミナだった。

「ちょっ! ルミナァァァ!」

 嘘をついたのがバレたシーリアは、バラしてしまったルミナをポコポコと叩いている。

 そして嘘と分かったフィリナ王女殿下は何故か勝ち誇った表情を浮かべている。

 謎の張り詰めた空気が伯爵令嬢シーリアと王女殿下フィリナの間に巻き起こっていたが、何故そんなことになっていたのか俺には分からない。


 そして、フィリナ王女殿下一行も予想通りに、王都アルバ行きということでフィンブルド伯爵一行と一緒に王都アルバへと向かうことになった。



 






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