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22話
しおりを挟む俺たちはあの場所から公園へと移動して、今はベンチで2人並んで座っている。悠は心なしか悲しそうな顔している。…あんなに遊んでた時は楽しそうだったのに…俺はあの2人に腹が立った。特に蓮の双子の隣にいた男…すごい嫌な目で悠のことを見てた。…悠はそれに気づいてずっと震えてた。悠とあいつとの関係はなんなんだ??…本当はずっと気になってた。あんなけ毎朝喧嘩してる理由とか、なぜあの時あんな幸せそうに笑ったのか…
すると、ずっと黙ったままだった悠がゆっくりと口を開いた。
「颯、ごめんね。今日せっかく楽しかったのに、俺のせいで嫌な日になっちゃったな。」
悠は申し訳なさそうに俺を見て言った
「悠のせいなんかじゃない。…それに今日は俺にとってとても楽しかった日だよ。」
これは嘘じゃない。本当に今日は楽しかった。
「ふふっ。やっぱり颯は優しいな…。
…俺な、今まで誰にも言ってこなかったことがある。いや、言えなかったんだ。だってそれは人を気持ち悪くさせることで……よくないことで……でも俺にとっては大切なことで…ずっと。ずっと苦しくて…」
悠はずっと今まで泣くのを堪えてたかのように、たくさんの涙が一気に溢れていた。…きっと悠は今まで我慢していたのだろう。俺はすごくつらなくなって、俺まで泣きそうになった。
「…でもね、颯なら話せると思った。だから今から聞いてくれる…??」
「もちろん。ゆっくりでいいよ。…いくらでも待つから。」
「…あのね、さっき花…俺の双子の隣にいた、蓮って言う男がいたでしょ?」
「…うん。」
「…俺ね、蓮のことが好きなんだ。」
…え?
頭が追いつかなかった。な、なんで?それじゃ毎朝喧嘩していたのは??
「男の俺が男を好きなんて気持ち悪いよね。でも、すっごく好きなんだ。…引いちゃった??」
「引くわけない。」
俺は食い気味で答えた。
だって俺だって男の悠が好きなのだから。
ただ一つ…やっぱり疑問が出る。
「…なぁ悠。少し質問していいか??」
「うん。いいよ。…どーぞ。」
「…悠ってさ毎朝あいつと喧嘩してたよな。」
「あー…知ってたんだ。」
「…好きなのになんで喧嘩してたんだ?」
「なんで言えばいいかわからないんだけど、蓮に蓮のことが好きなことバレないようにしてたら、いつの間にか毎日顔を合わせたら言い合いしちゃうような関係になっちゃった。…本当はしたくないのにね。」
おかしいでしょ?と泣きはらした目で悠は笑う。それがまた痛々しくて、胸が痛くなる。
「蓮はね,花のことが好きなんだ。それで花も蓮のことが好き。…だからといって俺は花が嫌いとかはないんだ。花は俺の大切な双子だからね。」
「…そうか。」
「それにね、今俺蓮に弁当作ってるんだ。もちろん蓮は俺が作ってるって知らない。花が作ってるって思ってる。」
「…ッなんで!?」
悠の大切な家族であることは、分かってはいるが、自分が弁当を作った程にして恋を成就させようとする花という奴が殺してやりたいと思うほど腹が立った。
そんな俺の様子に気づいたのか、悠は慌ててそいつを庇う。
「いや、別に花が悪いんじゃないよ?ただ俺のせいでいろいろとあってね。いつのまにかそうなっちゃったわけ。」
「…」
「…本当はね、こんなこと本当は言ったら駄目なんだろうけどッ…」
悠はまた大きくて丸い瞳に涙を浮かべる。
「…うん。」
「…俺だってッ…!俺だってッ蓮が好きなのにッ…!!俺だってっ…愛されたいッ…!!」
声を押し殺して泣いている悠の姿を見て俺は思わず抱き寄せた。
…今までどれだけの我慢をしてきたのだろう。自分の想いびとからはあれだけ酷い言葉を浴びせられて…でも誰にも相談できなくて…きっとこんな不器用な悠のことだから、泣くこともできなかったんじゃないのか。
実の妹と想いびとをくっつかせるために弁当まで作って…なんで悠だけ…なんで悠だけこんな辛い思いをしなきゃいけないんだ。こんなになるまで…
絶対俺なら…絶対俺なら悠を幸せにさせてあげるのに。
このまま悠に想いを伝えたかった。でもそれはしてはいけない。だって今悠にとって俺は友人で眼中にない。…そんな奴に今告られたら、きっと悠はやっと自分の苦しみを言える俺から離れようとするだろう。…それは俺にとっても辛いし、悠にとっても辛いはずだ。今、悠には気持ちを吐き出せる人が必要なんだ。だから俺は湧き出る想いを無理やり押し殺す。今は友達でいよう、と。
悠を、悠を俺が守んだ。
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