悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい

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第5章 執事の特訓!

(4)お嬢さまと執事

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「――シトリンって、イエローさんに信用されてるんだね」
「なに言ってるの。お嬢さまと執事は、そういうもんでしょ~?」

 さらりとしたシトリンの言葉。そういうもの、なのかな?

(わたしは、ロゼに信用されてる……?)

 ダンスは踊れないし、魔法も使えない。ロゼは休みの日にひとりでどこかに行っちゃうし。わたし、執事として、ちゃんと役に立ててるのかな……?

「リリイ~、どうしたの?」
「……ううん。なんでもない」

 いまはダンスの練習に集中しなきゃ。視線を、無理やり持ち上げた。すると、シトリンのきらきら笑顔が待っていた。……え、なんでそんなに笑顔? かわいいけど。

「ねえねえ、リリイ。気づいてる? わたしたち、ちゃんと踊れてるよ~」
「……ん? あれ!? ほんとだ!?」

 わたしの足は、自然とステップを踏んでいた。シトリンの足を踏むこともなく、踊りつづけてるんだよ。な、なんで!?

「リリイさ、つぎのステップが~、とか頭の中で考えて踊ってたでしょ?」
「そうだけど……」
「そのせいで、動きが固くなってたんだと思うよ。ガチガチの緊張しまくりって感じ」
「ガチガチ」
「うん。だからね、おしゃべりしながらだと、リラックスして踊れるんじゃないかな?」

 シトリンは「はい、終わり~」とわたしから離れた。

「本番もリラックスね。そしたら、絶対きれいに踊れるよ」
「本番なんて、いまより緊張しそうなのに……」
「だいじょーぶ! リリイはかっこいいから、ロゼさんとお似合いだよ~、自信もって」

 ……かっこいい、か。まだちょっと、心が落ち着かなくなる言葉だ。

(でも、ロゼとお似合いっていうのは、ちょっと、うれしいかも?)

 シトリンは煙に包まれて、もとの男の子の姿になった。

「せっかくの夜会なんだから、楽しんで。じゃ、ぼくはお嬢のとこにもどるから」
「あ、うん……! ありがと、練習つきあってくれて」
「いいよいいよ~。あ、レッスン料は、あとで払ってもらうけどね~」
「え、お金とるの!? 手伝うって言ったの、シトリンなのに!?」

 思わず叫ぶと、シトリンはぷっと噴き出した。

「ごめんごめん、冗談だよ~」

 あ、またわたし、からかわれたっぽい。悪魔って、ほんとやだ……!

 シトリンは笑いながら、「またね」と片手を上げて寮へ帰っていった。わたしはずっと待っていてくれたしーさんに、ぼふっと抱きつく。もふもふ……。しいさんも、「きゅう!」って、うれしそうにしっぽをふってくれた。

「ダンスを楽しむ。……それなら、できるかなあ」

 ロゼのためにも、頑張らなきゃ。このまま執事として役立たずなんて嫌だし。

(わたしは執事。ロゼの足を引っ張らない。役に立つよ、絶対……!)

 でも、やっぱりその日も、ロゼは夕方まで帰ってこなかった。理由は、やっぱり教えてくれない。……結局、わたしが「理由」を知ることになるのは、それから数日後のことだった。
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