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第六章 因縁と家族
第5話 姉妹のこと
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「わたくしを守るため、そうだとしたら、――ライラ、ごめんなさい」
「え?」
お嬢様の声は震えて、語尾は消え入った。そこに、先ほどまでの強い姿はない。まるで別人かと疑いたくなるような、そんなお嬢様に、私は困惑した。それでも、お嬢様の言いたいことは、すぐに分かった。
「わたくしが原因だったのよ。アンナ様と最初から打ち解けていれば――、お母様だって人を殺めずに済んだのかもしれない。アンナ様は生きていたかもしれないのに……」
アンナ様が亡くなった事実は、変わらない。お嬢様を守るために、その悲劇が起きたのなら、自分が原因だとお嬢様が思うことも不思議ではない。でも……。
「いいえ、お姉様」
私の気持ちを代弁するように、ライラ様が首を振った。ライラ様の隣には、王子とジルが付き添っている。
「奥様はただお嬢様のことを愛していただけ。お姉様も、悲しんだだけ。だれも、悪くなんてないはずです」
蠟燭に照らされた影がゆらゆら揺れて、頼りない。
誰も、なにも言えなかった。悲しいほどにすれ違った家族の姿に、なんて言葉をかければいいのか、私には分からない。きっと、誰にも分かっていなかった。もし何かを言える人がいるとすれば、それは、当事者だけだ。
「お母様もきっと、お姉様たちを怨んでなんかいません。お母様は、優しかったから。だから、いいんです。もう、いい。大丈夫……」
ライラ様はぎゅっと拳を握った。大丈夫、と何度も繰り返す。その声が、次第に震えていった。身を縮めて、なにかにこらえるように、うつむく。
「私も、怨んだりしない。そんなこと、しません……。私、分かっています。だれも悪くないって……、分かってるんです」
ライラ様の肩に、王子が触れる。ライラ様はすこしだけ顔を上げて、王子を見た。その瞳に、涙の膜がはって、雫になった。
「分かってるから、私、こんなこと、思っちゃいけないはずなんです、でも……」
小さく、しゃくりあげる声がした。
「それでも、私は」
ライラ様がお嬢様の肩に、額を押しつける。美しい髪が、彼女の表情を隠す。見えないけれど、どんな顔をしているのかは、すぐに分かってしまった。
「お母様が死んでしまったのは、悲しいし、悔しい。死んでほしくなんて、なかった。生きて、側にいてほしかった……!」
何年も抱えてきたはずの、ライラ様の叫びが、胸を突き刺す。とても、痛い。押し殺すような嗚咽から、目を逸らしたくなる。
「……ええ、そうよね」
ライラ様の身体は小さく震えていた。お嬢様も顔を伏せて、ライラ様を抱きしめた。
痛い。とても痛くて、苦しい。
私たちは、悲しむ姉妹を見つめることしかできなかった。
旦那様も、また、無言で姉妹の姿を見つめていた。
「え?」
お嬢様の声は震えて、語尾は消え入った。そこに、先ほどまでの強い姿はない。まるで別人かと疑いたくなるような、そんなお嬢様に、私は困惑した。それでも、お嬢様の言いたいことは、すぐに分かった。
「わたくしが原因だったのよ。アンナ様と最初から打ち解けていれば――、お母様だって人を殺めずに済んだのかもしれない。アンナ様は生きていたかもしれないのに……」
アンナ様が亡くなった事実は、変わらない。お嬢様を守るために、その悲劇が起きたのなら、自分が原因だとお嬢様が思うことも不思議ではない。でも……。
「いいえ、お姉様」
私の気持ちを代弁するように、ライラ様が首を振った。ライラ様の隣には、王子とジルが付き添っている。
「奥様はただお嬢様のことを愛していただけ。お姉様も、悲しんだだけ。だれも、悪くなんてないはずです」
蠟燭に照らされた影がゆらゆら揺れて、頼りない。
誰も、なにも言えなかった。悲しいほどにすれ違った家族の姿に、なんて言葉をかければいいのか、私には分からない。きっと、誰にも分かっていなかった。もし何かを言える人がいるとすれば、それは、当事者だけだ。
「お母様もきっと、お姉様たちを怨んでなんかいません。お母様は、優しかったから。だから、いいんです。もう、いい。大丈夫……」
ライラ様はぎゅっと拳を握った。大丈夫、と何度も繰り返す。その声が、次第に震えていった。身を縮めて、なにかにこらえるように、うつむく。
「私も、怨んだりしない。そんなこと、しません……。私、分かっています。だれも悪くないって……、分かってるんです」
ライラ様の肩に、王子が触れる。ライラ様はすこしだけ顔を上げて、王子を見た。その瞳に、涙の膜がはって、雫になった。
「分かってるから、私、こんなこと、思っちゃいけないはずなんです、でも……」
小さく、しゃくりあげる声がした。
「それでも、私は」
ライラ様がお嬢様の肩に、額を押しつける。美しい髪が、彼女の表情を隠す。見えないけれど、どんな顔をしているのかは、すぐに分かってしまった。
「お母様が死んでしまったのは、悲しいし、悔しい。死んでほしくなんて、なかった。生きて、側にいてほしかった……!」
何年も抱えてきたはずの、ライラ様の叫びが、胸を突き刺す。とても、痛い。押し殺すような嗚咽から、目を逸らしたくなる。
「……ええ、そうよね」
ライラ様の身体は小さく震えていた。お嬢様も顔を伏せて、ライラ様を抱きしめた。
痛い。とても痛くて、苦しい。
私たちは、悲しむ姉妹を見つめることしかできなかった。
旦那様も、また、無言で姉妹の姿を見つめていた。
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