3 / 50
第1章 変態フィーバー★
第3変 アグレッシブ☆変態さん
しおりを挟む
「はあ……朝――か」
衝撃的な変態ストーカーさんとの出会いから一夜明け、キラキラ輝く爽やかな朝日が天蓋越しに届く。
新世校から与えられた女子部屋は、可愛らしいピンクとフリルが基調となっていて未だに慣れない。
そんな部屋に不釣り合いな錆色の手錠を両腕から外し、うーんと伸びをした。
(寝てる間は怪力の制御ができないから制御装置が必要なのは分かってるんだけど――肩はこるし、窮屈だから苦手なんだよね……)
自由になった手首を軽く回しながら大きな鏡の前に立つと、長く艷やかな黒髪にマゼンタ色のくりくりとした猫目が特徴的な私の姿が映った。フードに猫耳が付いているピンクのパーカーは、私のお気に入りのパジャマだ。
「よし、今日も頑張るぞ!」
朝の大仕事のために、私は気合いを入れてパチンと両頬を挟むように叩いた。
朝の大仕事――それはこの大きくて張りのある理想的な胸に関係がある。前世ではぺったんこだった私だが、この世界では良い感じに育った女の武器――この胸を一回り小さい軍服に詰め込むのが朝の仕事だ。
胸が大きすぎて困っちゃう☆
なんて、前世の私だったら血涙案件ではあるが、ボタンが結構ギリギリで何かの弾みで弾けやしないか心配だし、圧迫されてちょいと苦しいしで、問題は多々ある。
(あの時、面倒くさがらずにちゃんと採寸してもらえば良かったなあ……)
そう、入学前に採寸へと行ってさえすれば、オーダーメイドの軍服を無料で用意してもらえたはずだったのだ。それなのに、私は自身の背丈にあった既製品を注文した。
(まさか、胸がひっかかるとは――まあ、嬉しい誤算ではあるけど、主人公……胸デカかったんだなあ)
しみじみと思いながら襟元をただす。
(ああ、でも、胸抜きにしても慣れないなあ……やっぱり息苦しい)
大学のような学校なのに軍服があるのは、種族特有の民族衣装等で種族がばれるのを防ぐためだ。いい例が私の種族。長年獣人族特有のゆるゆるした民族衣装に慣れていたせいか、私は三週間経った今でもキチッとした 軍服には慣れることができない。
(地球の時は中高ずっと制服だったのにね……)
ふと転生前のことを思い出し、苦い顔になる。正直、転生前の学校にはあまり良い思い出がない。だからこそ、私はこの 新世校で改めて学生生活というものを頑張りたい。そして、最後には良い獣人生だったって笑って逝けるようになりたいと思っている。
「さあ、昨日の変態さんのことなんか忘れて、ご飯ご飯~♪」
軽く鼻歌交じりにドアを開け――
「おはよう。ル――」
バタンッ――即閉めた。
「……ア、ハハ、おっかしいなあ。私、まだ寝ぼけてるみたい☆ あの変態さんの幻覚が見えるなんて――」
笑いながらもう一度扉を開けてみる。
「ハァハァ、おは――」
さっきよりも息が荒く、頬を上気させた変態がいた。さっきよりも勢い良く扉を閉める。
「いや、コレ現実だ。一瞬脳が理解を拒んだけど、紛うことなき実物の変態さんだった……え、何、怖いんだけど、なんでいるの!? ああ、でも、今は変態さんがここにいる理由とか過程じゃなく、これをどう乗り切るか考えなくちゃ!! 」
(扉には変態さんがいる……なら、出口はただ一つ!!!)
窓を開け、新鮮な朝の空気を大きく吸い込み、晴れやかな空を眺める。
(落ち着けーー落ち着くんだ私。今の私には猫獣人の身体能力がある)
覚悟を決め、目下に広がる緑生い茂る庭を確認する。私がいる部屋は10階……人間だったらほぼほぼ確実にお亡くなりコースの高さだ。
(でも、今の私ならーー)
グッと踏み切り、軽く窓を越える。爽やかな風が頬を撫で一瞬の浮遊感の後、重力に従い下へ下へと身体が落ちていく。
トンッーー
「フッーー決まった。えへへ~、これくらい朝飯前ってね♪」
華麗な着地を決め、思わずドヤッてしまうくらいには余裕があった私は完全に気を抜いていた。
「いやあ、やっぱり君は最高だよ!!!」
「でしょ~、これぞ私の本領ーー」
上機嫌で返答しようとしたのだが、私の動きは完全に停止してしまった。ブリキのオモチャよろしく軋んだ動きで横を見ると、頬を染め、金色の瞳をキラキラさせている変態ストーカーとバッチリエンカウント……
「ぎぃやああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!? 変態退散ッッッッッッ!!!!!!」
完全に撒いたはずの変態ストーカーがそこにいて、私は大混乱のまま拳を繰り出した。
「ヘブッッッーーーー!!!」
お腹へとクリーンヒットした拳は、その勢いのまま変態ストーカーを空高く吹き飛ばした。
「ハッーー反射でやってしまった!! ヤバイ、つい全力でッ!!」
変態が飛んでいった方向へ木々の合間を縫って駆けていくと、予想よりも早い段階で茂みから野生の変態が現れた!
(いや、だいぶ頭が混乱してるな……野生の変態って何!?)
普通に茂みから歩いてきた変態は、私を見て一瞬驚いた顔をした。頭でも打って記憶が混濁しているのかもしれない。
「あ、頭は大丈夫!?」
「あぁ、痺れる辛辣な言葉の口撃!!! 扉での放置プレイに続き、腹部への容赦ない一撃、極めつけは頭の出来を心配されるという言葉責め……朝からご褒美のオンパレードで、俺はもうッもうッッッ!!!」
「しまった言い方色々間違えた……」
身悶えて喜んでいる変態はとても元気そうだ。むしろ私の方が疲労困憊だ。
(誰かこの変態さんをどうにかしてくれッ!!!)
新緑の香りと麗らかな木漏れ日の中、変態の周辺だけハアハアとピンク色寄りの何やらヤバイ空気を醸し出しており、私は全速力でその場を去ったのだった。
衝撃的な変態ストーカーさんとの出会いから一夜明け、キラキラ輝く爽やかな朝日が天蓋越しに届く。
新世校から与えられた女子部屋は、可愛らしいピンクとフリルが基調となっていて未だに慣れない。
そんな部屋に不釣り合いな錆色の手錠を両腕から外し、うーんと伸びをした。
(寝てる間は怪力の制御ができないから制御装置が必要なのは分かってるんだけど――肩はこるし、窮屈だから苦手なんだよね……)
自由になった手首を軽く回しながら大きな鏡の前に立つと、長く艷やかな黒髪にマゼンタ色のくりくりとした猫目が特徴的な私の姿が映った。フードに猫耳が付いているピンクのパーカーは、私のお気に入りのパジャマだ。
「よし、今日も頑張るぞ!」
朝の大仕事のために、私は気合いを入れてパチンと両頬を挟むように叩いた。
朝の大仕事――それはこの大きくて張りのある理想的な胸に関係がある。前世ではぺったんこだった私だが、この世界では良い感じに育った女の武器――この胸を一回り小さい軍服に詰め込むのが朝の仕事だ。
胸が大きすぎて困っちゃう☆
なんて、前世の私だったら血涙案件ではあるが、ボタンが結構ギリギリで何かの弾みで弾けやしないか心配だし、圧迫されてちょいと苦しいしで、問題は多々ある。
(あの時、面倒くさがらずにちゃんと採寸してもらえば良かったなあ……)
そう、入学前に採寸へと行ってさえすれば、オーダーメイドの軍服を無料で用意してもらえたはずだったのだ。それなのに、私は自身の背丈にあった既製品を注文した。
(まさか、胸がひっかかるとは――まあ、嬉しい誤算ではあるけど、主人公……胸デカかったんだなあ)
しみじみと思いながら襟元をただす。
(ああ、でも、胸抜きにしても慣れないなあ……やっぱり息苦しい)
大学のような学校なのに軍服があるのは、種族特有の民族衣装等で種族がばれるのを防ぐためだ。いい例が私の種族。長年獣人族特有のゆるゆるした民族衣装に慣れていたせいか、私は三週間経った今でもキチッとした 軍服には慣れることができない。
(地球の時は中高ずっと制服だったのにね……)
ふと転生前のことを思い出し、苦い顔になる。正直、転生前の学校にはあまり良い思い出がない。だからこそ、私はこの 新世校で改めて学生生活というものを頑張りたい。そして、最後には良い獣人生だったって笑って逝けるようになりたいと思っている。
「さあ、昨日の変態さんのことなんか忘れて、ご飯ご飯~♪」
軽く鼻歌交じりにドアを開け――
「おはよう。ル――」
バタンッ――即閉めた。
「……ア、ハハ、おっかしいなあ。私、まだ寝ぼけてるみたい☆ あの変態さんの幻覚が見えるなんて――」
笑いながらもう一度扉を開けてみる。
「ハァハァ、おは――」
さっきよりも息が荒く、頬を上気させた変態がいた。さっきよりも勢い良く扉を閉める。
「いや、コレ現実だ。一瞬脳が理解を拒んだけど、紛うことなき実物の変態さんだった……え、何、怖いんだけど、なんでいるの!? ああ、でも、今は変態さんがここにいる理由とか過程じゃなく、これをどう乗り切るか考えなくちゃ!! 」
(扉には変態さんがいる……なら、出口はただ一つ!!!)
窓を開け、新鮮な朝の空気を大きく吸い込み、晴れやかな空を眺める。
(落ち着けーー落ち着くんだ私。今の私には猫獣人の身体能力がある)
覚悟を決め、目下に広がる緑生い茂る庭を確認する。私がいる部屋は10階……人間だったらほぼほぼ確実にお亡くなりコースの高さだ。
(でも、今の私ならーー)
グッと踏み切り、軽く窓を越える。爽やかな風が頬を撫で一瞬の浮遊感の後、重力に従い下へ下へと身体が落ちていく。
トンッーー
「フッーー決まった。えへへ~、これくらい朝飯前ってね♪」
華麗な着地を決め、思わずドヤッてしまうくらいには余裕があった私は完全に気を抜いていた。
「いやあ、やっぱり君は最高だよ!!!」
「でしょ~、これぞ私の本領ーー」
上機嫌で返答しようとしたのだが、私の動きは完全に停止してしまった。ブリキのオモチャよろしく軋んだ動きで横を見ると、頬を染め、金色の瞳をキラキラさせている変態ストーカーとバッチリエンカウント……
「ぎぃやああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!? 変態退散ッッッッッッ!!!!!!」
完全に撒いたはずの変態ストーカーがそこにいて、私は大混乱のまま拳を繰り出した。
「ヘブッッッーーーー!!!」
お腹へとクリーンヒットした拳は、その勢いのまま変態ストーカーを空高く吹き飛ばした。
「ハッーー反射でやってしまった!! ヤバイ、つい全力でッ!!」
変態が飛んでいった方向へ木々の合間を縫って駆けていくと、予想よりも早い段階で茂みから野生の変態が現れた!
(いや、だいぶ頭が混乱してるな……野生の変態って何!?)
普通に茂みから歩いてきた変態は、私を見て一瞬驚いた顔をした。頭でも打って記憶が混濁しているのかもしれない。
「あ、頭は大丈夫!?」
「あぁ、痺れる辛辣な言葉の口撃!!! 扉での放置プレイに続き、腹部への容赦ない一撃、極めつけは頭の出来を心配されるという言葉責め……朝からご褒美のオンパレードで、俺はもうッもうッッッ!!!」
「しまった言い方色々間違えた……」
身悶えて喜んでいる変態はとても元気そうだ。むしろ私の方が疲労困憊だ。
(誰かこの変態さんをどうにかしてくれッ!!!)
新緑の香りと麗らかな木漏れ日の中、変態の周辺だけハアハアとピンク色寄りの何やらヤバイ空気を醸し出しており、私は全速力でその場を去ったのだった。
4
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜
みおな
恋愛
転生したら、乙女ゲームのモブ令嬢でした。って、どれだけラノベの世界なの?
だけど、ありがたいことに悪役令嬢でもヒロインでもなく、完全なモブ!!
これは離れたところから、乙女ゲームの展開を楽しもうと思っていたのに、どうして私が巻き込まれるの?
私ってモブですよね?
さて、選択です。悪役令嬢ルート?ヒロインルート?
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる