お助けキャラは変態ストーカー!?

雪音鈴

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第1章 変態フィーバー★

第3変 アグレッシブ☆変態さん

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「はあ……朝――か」

 衝撃的な変態ストーカーさんとの出会いから一夜明け、キラキラ輝く爽やかな朝日が天蓋てんがい越しに届く。

 新世校しんせいこうから与えられた女子部屋は、可愛らしいピンクとフリルが基調となっていて未だに慣れない。

 そんな部屋に不釣り合いな錆色の手錠を両腕から外し、うーんと伸びをした。

(寝てる間は怪力の制御ができないから制御装置が必要なのは分かってるんだけど――肩はこるし、窮屈だから苦手なんだよね……)

 自由になった手首を軽く回しながら大きな鏡の前に立つと、長く艷やかな黒髪にマゼンタ色のくりくりとした猫目が特徴的な私の姿が映った。フードに猫耳が付いているピンクのパーカーは、私のお気に入りのパジャマだ。

「よし、今日も頑張るぞ!」

 朝の大仕事のために、私は気合いを入れてパチンと両頬を挟むように叩いた。

 朝の大仕事――それはこの大きくて張りのある理想的な胸に関係がある。前世ではぺったんこだった私だが、この世界では良い感じに育った女の武器ほうまんなむね――この胸を一回り小さい軍服せいふくに詰め込むのが朝の仕事だ。

 胸が大きすぎて困っちゃう☆

 なんて、前世の私だったら血涙案件ではあるが、ボタンが結構ギリギリで何かの弾みで弾けやしないか心配だし、圧迫されてちょいと苦しいしで、問題は多々ある。

(あの時、面倒くさがらずにちゃんと採寸してもらえば良かったなあ……)

 そう、入学前に採寸へと行ってさえすれば、オーダーメイドの軍服せいふくを無料で用意してもらえたはずだったのだ。それなのに、私は自身の背丈にあった既製品を注文した。

(まさか、胸がひっかかるとは――まあ、嬉しい誤算ではあるけど、主人公……胸デカかったんだなあ)

 しみじみと思いながら襟元をただす。

(ああ、でも、胸抜きにしても慣れないなあ……やっぱり息苦しい)

 大学のような学校なのに軍服せいふくがあるのは、種族特有の民族衣装等で種族がばれるのを防ぐためだ。いい例が私の種族。長年獣人族特有のゆるゆるした民族衣装に慣れていたせいか、私は三週間経った今でもキチッとした 軍服せいふくには慣れることができない。

(地球の時は中高ずっと制服だったのにね……)

 ふと転生前のことを思い出し、苦い顔になる。正直、転生前の学校にはあまり良い思い出がない。だからこそ、私はこの 新世校しんせいこうで改めて学生生活というものを頑張りたい。そして、最後には良い獣人生だったって笑って逝けるようになりたいと思っている。

「さあ、昨日の変態さんのことなんか忘れて、ご飯ご飯~♪」

 軽く鼻歌交じりにドアを開け――

「おはよう。ル――」

 バタンッ――即閉めた。

「……ア、ハハ、おっかしいなあ。私、まだ寝ぼけてるみたい☆ あの変態さんの幻覚が見えるなんて――」

 笑いながらもう一度扉を開けてみる。

「ハァハァ、おは――」

 さっきよりも息が荒く、頬を上気させた変態がいた。さっきよりも勢い良く扉を閉める。

「いや、コレ現実だ。一瞬脳が理解を拒んだけど、紛うことなき実物の変態さんだった……え、何、怖いんだけど、なんでいるの!? ああ、でも、今は変態さんがここにいる理由とか過程じゃなく、これをどう乗り切るか考えなくちゃ!! 」

(扉には変態さんがいる……なら、出口はただ一つ!!!)

 窓を開け、新鮮な朝の空気を大きく吸い込み、晴れやかな空を眺める。

(落ち着けーー落ち着くんだ私。今の私には猫獣人の身体能力がある)

 覚悟を決め、目下に広がる緑生い茂る庭を確認する。私がいる部屋は10階……人間だったらほぼほぼ確実にお亡くなりコースの高さだ。

(でも、今の私ならーー)

 グッと踏み切り、軽く窓を越える。爽やかな風が頬を撫で一瞬の浮遊感の後、重力に従い下へ下へと身体が落ちていく。



 トンッーー



「フッーー決まった。えへへ~、これくらい朝飯前ってね♪」

 華麗な着地を決め、思わずドヤッてしまうくらいには余裕があった私は完全に気を抜いていた。

「いやあ、やっぱり君は最高だよ!!!」

「でしょ~、これぞ私の本領ーー」

 上機嫌で返答しようとしたのだが、私の動きは完全に停止してしまった。ブリキのオモチャよろしく軋んだ動きで横を見ると、頬を染め、金色の瞳をキラキラさせている変態ストーカーとバッチリエンカウント……

「ぎぃやああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!? 変態退散ッッッッッッ!!!!!!」

 完全に撒いたはずの変態ストーカーがそこにいて、私は大混乱のまま拳を繰り出した。

「ヘブッッッーーーー!!!」

 お腹へとクリーンヒットした拳は、その勢いのまま変態ストーカーを空高く吹き飛ばした。

「ハッーー反射でやってしまった!! ヤバイ、つい全力でッ!!」

 変態が飛んでいった方向へ木々の合間を縫って駆けていくと、予想よりも早い段階で茂みから野生の変態が現れた!

(いや、だいぶ頭が混乱してるな……野生の変態って何!?)

 普通に茂みから歩いてきた変態は、私を見て一瞬驚いた顔をした。頭でも打って記憶が混濁しているのかもしれない。

「あ、頭は大丈夫!?」

「あぁ、痺れる辛辣な言葉の口撃!!! 扉での放置プレイに続き、腹部への容赦ない一撃、極めつけは頭の出来を心配されるという言葉責め……朝からご褒美のオンパレードで、俺はもうッもうッッッ!!!」

「しまった言い方色々間違えた……」

 身悶えて喜んでいる変態はとても元気そうだ。むしろ私の方が疲労困憊だ。

(誰かこの変態さんをどうにかしてくれッ!!!)

 新緑の香りと麗らかな木漏れ日の中、変態の周辺だけハアハアとピンク色寄りの何やらヤバイ空気を醸し出しており、私は全速力でその場を去ったのだった。
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