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追放されたから冒険者ギルドへ
しおりを挟む波音はやっと城から追放されたので、まずは城下町を見てまわることに決めたようだ。
「あの姫さんから貰ったお金も有意義に使わなあかんな~。城の中とは打って変わって色んな人種がぎょうさんおるな。城で働けるのは人間だけなやろか?」
城とは違い城下町は人間だけではなくエルフや獣人、ドワーフなどがいる。でも、獣人は皆首輪をしていて表情が暗い。
「坊主どうした?迷子か??」
「迷子ちゃう!」
「チャウ?……なら母親とはぐれでもしたか?」
どうやら日本人の波音はここでも幼く見えるようだ。地球にいる時、日本人は外国人からすると幼く見えるのが異世界でもそうのようだ。そのため、無精髭の生えているおじさんも波音に迷子かと声を掛けたのだ。波音の身長は170cmと低めではあるが、17歳の為まだまだ身長は伸びるかもしれない。
「おじさん、僕なこれでも17歳なんよ!」
「坊主成人してんのか!?」
この世界では16歳が成人の為、波音はれっきとした大人なのだ。
「そ、それはすまねえな……で、坊主何してるんだ?」
「坊主……僕無職で職を探そうと思ってた所なんよ。で、冒険者?なら誰でもなれる聞いてな、冒険者ギルド探しつつ食べ歩きしてたんよ」
「お、なら俺が案内してやるよ」
「遠慮しとく。知らん人について行くんは危ないやん」
波音は今会ったばかりの人の案内はもしかしたら、路地裏に連れていかれ危ない目にあうかもしれないからと断った。
「危険はないぞ!俺はなここフェイラリン王国王都の冒険者ギルドのギルドマスターだからな!坊主ラッキーだぞ!」
波音はボソッと「ここフェイラリン王国なんや」と呟いたが、冒険者ギルドのギルドマスターには聞こえていなかったようだ。
「で?坊主名は?俺はゼンガだ」
「僕はナオや」
「ナオだな!ナオの喋り方って変わっているな」
どうやら城下町でも関西弁は変わっているようだ。
波音は「この喋り方はな、故郷の喋り方なんよ」と喋り空を見上げ地球を思い出していた。
「そうか。故郷は遠いのか?」
「物凄く遠いんよ。簡単には帰れない距離……なんよ」
「そうなのか」
波音は「で?ゼンガさん冒険者ギルド案内してくれるん?」とにぱっと笑い問いかけた。帰れないもんはしょうがないからクヨクヨなんかしていられないと思っているみたい。
「すぐそこだからもうちょい食べてから行くか?」
「もう、お腹いっぱいだからええかな」
「エエカナ?」
波音はええかなという意味は大丈夫いらないという意味だと教えた。
波音とゼンガが5分程歩くと大きな建物が見えてきた。
「あれが冒険者ギルドだ!王都のギルドだからどこよりも大きいぞ」
「へー、あれが冒険者ギルド……でっかいな~!」
波音とゼンガが冒険者ギルドに入ると、冒険者達が沢山いる。波音がゼンガといるからだろうか、波音は冒険者達の視線を集めている。だが、波音は周りが珍しすぎて自分が視線を集めているのを気づいていない。
「で?ナオお前戦えるのか?」
波音はゼンガを見ないで「さあ?どうやろ?僕戦ぉたことあらへんからわからへんなあ」とあっけらかんと言った。波音は結局どうにかこうにかなると思っている自由人なのだ。
「お、前!それで冒険者なろうとしてたのか!!」
「小学……10年位前は剣を習ぉうてたよ?だから多分戦えると思うんよ」
「……そうか。なら魔法は?」
波音はゼンガにだけしか聞こえないよう声を落とし全属性使えると伝えた。この世界では、火、水、土、緑、風、光、闇の7属性あり普通の人は2属性使えるのが当たり前だ。3属性、4属性と使えると優秀で全て使える者は滅多にいない。
ゼンガと波音はギルドマスターの部屋に入りソファーに向かい合いながら座った。
「俺がお前の対応をしていて良かった。他の奴だったら不味かった。他にお前の力知ってる奴は?」
「おらへんよ…あ、いないって意味やで」
「そうか。あんまり全属性だとは言うなよ」
「分かってる分かってる。あ、そうそう僕な冒険者にはなりたい訳では無いんよ。料理人になりたいんよ」
ゼンガは少し考え立ち上がり、机の引き出しから冒険者のタグを出し波音に渡した。
「それは冒険者の印だから失くすなよ。ランクはDだ。俺が連れて来たからDでも騒ぎにはならないだろう。お前自身の強さは分からないが全属性使えるんだからめちゃくちゃ弱いことは無いだろ。でだ、ここからが本題だしばらくこのギルドで料理人にでもなるか?というか、料理できるのか?」
「ええの?!できるできる!!僕料理上手やで!」と波音は興奮して机に手を置き身を乗り出した。
「そ、そうか。試しとして夜に冒険者達と職員に料理を作って貰えるか?」
「ええよ!!!」
この冒険者ギルドは冒険者とギルド職員が使える食堂が併設されている。もちろん冒険者でもギルド職員じゃなくても利用ができる。でも、冒険者とギルド職員は割引が効くのだ。
波音は夜の為に食堂に向かった。
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