運極さんが通る

スウ

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王との対面

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 コンコン
「るし、ノックはいらん。ここはこうするのだ」
「えっ?」

ヴィネは右足に臙脂色のオーラを溜め始めた。
いやいや、ドアを蹴り破るのはアカンでしょ。
作法的に。

 ガチャ
「は~い。お客さんかな……おうぇっ!?」

扉が開いた瞬間、ヴィネの蹴りが炸裂し、目の前の人の鳩尾に入った。

「…やっちゃった」
「よくやった。45柱。」

鳩尾を抑え、蹲っている人を尻目にハイタッチをする2人。
実は仲がいいのかな?
って、その前に、この人は誰?

「…っこの蹴りはっ!!ヴィネかぁぁぁぁあ!!!久しぶりにあったというのに、これはないんじゃないか!!?」

髪は白をベースに髪先に向かって水色のグラデーションがかかっている。
その長い髪は地面にはつかずに浮いている。
光が入る具合によって目の色が変わるのが特徴的だ。
夜空に在る星々のようだ。

「すまぬ、王よ。まさか王が開けるとは思っていなくてな」
「嘘つけっ!お前ら大悪魔は未来を見通せるって知ってるんだからな!」
「おい、王。久しぶりだな?我に目をくれないとはどういうことだ?うん?」
「げぇっ…ベリト」

王と言われているということは、王様!?
そんな王様と目が合った。
が瞬く。

「ん?そこのお嬢さんは?」
「…綺麗」
「おや?新手のナンパかな?」

はっ…心の声が漏れていたようだ。
弁解しなくてはっ!

「えと、その、違うです!!目が星みたいだったので…」

その言葉にニマニマと笑みを広げていく王様。
そこにベリトの拳が飛ぶ。

 ゴンッ
「痛いなぁ!!ふんっ!もう怒ったぞ!!さっきのヴィネの所業、ベリトの所業は許されるものではない!!よって、ベリト、ヴィネの両柱がこの家に入ること、近づくこと、覗くこと全てを禁ずる」
「「なっ!?」」

直後、2人の身体が階段の方まで飛ばされた。
それを見て満足気に王様は頷き、こちらを見た。

「さて、お嬢さん。立ち話もなんだから僕の家にお上がりよ」
「えと…お邪魔します」

家に入ると、スピリットと思われる妖精がふよふよと歓迎してくれた。
うん、スピリットはいつ見ても可愛いね。

部屋を見渡しての第一印象。
・飾ってあるインテリアの趣味が良い。
・私好みだ。
・スピリットが可愛い。
・甘い匂いがする。

「ここに座って。僕はお茶を入れてくる」

王様に言われるがまま、椅子に座る。
うーん。
どうにも落ち着かない。
人の家って何だかソワソワするよね。
ここはMPバーの回復様子でも見ていよう。
…あ、満タンだ。





「おまたせ。どうぞ」
「ありがとうございます」

王様が持ってきたカップから湯気がたち、お茶の香りが室内を満たす。
口に含むと甘い果実の味がした。
…どこかで食べたことがある気がする味だ。

「美味しいです」
「うん、ありがとね。実はこのお茶っ葉、世界樹の葉を使っているんだ」

噎せた。
道理で食べたことがあったんだ。
でもさ、待ってよ王様。
普通に世界樹の葉を使う貴方はギムレットと同じくらいやばい人なのでは?

「大丈夫かい?」
「大丈夫です。あの、世界樹って…」
「あぁ、世界樹というのはね、この世界を覆っていたとある神聖な大樹のことだよ。身のうちに莫大な魔力を秘めていて、力ある者達が我がものにしようと狙っているんだ。そんな誰もが喉から手が出る程欲しがる大樹を1人で守っているのが水精霊王。水精霊王というのはね、水を司る精霊王で、アルフヘイムにいる数ある精霊王のうちの1人なんだ。そんな水精霊王は時々ここに遊びに来て、世界樹の葉っぱやら果実やらを置いていってくれるんだけど、最近は顔を見せなくなってね。…もしかしてスヴァルトアルフヘイムに狩られたのかな」

水精霊王って多分、ギムレットの事だよね?
まさかの目の前の王様と繋がりがあったとは。
それにしても、聞いたことがない言葉が出てきたな。

「えと、アルフヘイムとスヴァなんたらとは何なんですか?」
「ん?そうか。この時代を生きる子達には分からない言葉だったようだね。じゃあ、まずはアルフヘイムから説明するとしよう。アルフヘイムとは、光のエルフが住む大陸の事だよ。そこには、精霊王を束ねる神フレイが住んでいるんだ。スヴァルトアルフヘイムは、闇のエルフが住んでいる。この二つの大陸同士は犬猿の仲でね、しょっちゅう戦争ばかりしているんだ。そんな中、水精霊王が勝手に世界樹をこの世界から剥がした。盗んだとも言った方がいいかもね。水精霊王は一応アルフヘイムに所属しているから、スヴァルトアルフヘイムは世界樹をアルフヘイムが独占していると勘違いして更に戦争が悪化したんだ。おっと、少し脱線してしまったようだ。ごめんね。因みにこの二つの国は海を渡った先にあるからね」
「おぉー!今のお話たいへん興味深い話でした。ありがとうございました」

アルフヘイムとスヴァルトアルフヘイム…ね。
今度行ってみたいなぁ

「いやぁ、久しぶりに人と話すのは楽しいなぁ!興が乗ったから昔話もしてあげよう」
「是非っ!!」

この人の話は面白い。
ずっと聞いていたいくらいだ。
…ちょっと難しいんだけどね。

王様は棚の上に置いてあった水晶玉を机の上に持ってきた。

「これを覗いてご覧」

言われるがままに水晶玉を覗き込む。
すると、水晶玉から眩い光が漏れだした。
思わず目を瞑ってしまう。

「こらこら、目を瞑ってはいけないよ。君が今から見るのは真実なのだから」

王様の言葉にゆっくりと目を開くと、目の前に宇宙が広がっていた。

ふぁっ!!
空気が無い!!
息がぁぁっ!!
息が…でき…る?

「あははっ。そんな金魚のように口をパクパクしなくても大丈夫だよ。これは記憶。今見ているものは幻なんだ」

そうだったのか…。
いきなり【テレポート】したのかと。

「幾ら僕でもそんなことはしないよ。さて、昔話を始めようか。あれを見てご覧」

王様の指さす方向に丸い地球の様な球体が浮いていた。
そんな球体から大きな木が生え、根が周りを覆っていた。

「アレが昔の世界樹。物語はあの世界樹が消えた日から始まる。

  昔々、それこそ何千年も前の話だ。
  この世界は世界樹に覆われ、魔力に満ちていた。
  そこには大陸や海というものはなく、階層ごとに次元分けされていたんだ」

階層?
次元分け?
それは何の為にだろう。

「まずは階層から。
 実はね、昔の世界には海も大陸も存在しなかったんだ。
 なんて言うかなぁ…。
 そう、あの球体を9つに等分した感じで、下から1階層で1番上が9階層。

 1階層、「アースガルズ」には、アース神族が住んでいる。
 ここには、ヴァルハラ宮殿もあるぞ。
 あっと、因みにアース神族というのは、オーディンを主神とする神々のことだよ。

 2階層、「ヴァナヘルム」には、ヴァン神族が住んでいる。
 ヴァン神族には、主にニョルズやフレイヤとかがいるよ。
 あ、神様ね。
 実はアース神族とは仲が悪いんだ。

 3階層、「アルフヘイム」。
 ここには、さっきも言った通り、光のエルフが住んでいるよ。
 彼らは気難しい性格でね、よく揉めたものだよ。

 4階層、「スヴァルトアルフヘイム」には、これもさっき言った通り、闇のエルフが住んでいるよ。

 5階層、「ミズガルズ」。
 ここには多種の生き物が住んでいる。
 まぁ、この大陸のことだね。
 ここの名前の意味は、中央の囲い、だよ。

 6階層、「ヨトゥンヘイム」は、霧の巨人族と丘の巨人族が住んでいるね。
 僕はもう行きたくないけど。

 7階層、「ムスペルヘイム」には、文字通り、ムスペルっていう炎の巨人が住んでいるんだ。
 確か防衛スルトがやってたな。

 8階層、「ヘルヘイム」。
 ここは死者達が住む静かな場所さ。
 この階層の王は綺麗なんだけど、おっかなくてね。

 9階層、「ニヴルヘイム」には、氷の巨人が住んでいる。
 寒いから防寒具は大事だよ。

 そんな巨大勢力同士が同じ土台で大きな戦争を起こすと、神聖な世界樹は地面を染める血によって穢れ、崩壊してしまうから、次元を切り分けて階層を作った。
 このことを次元分けって言うんだ。
 世界樹が崩壊すると、この世界の魔力量は激減してしまうからね。
 その事を分かっていたのか、彼らは各階層から出てこようとしなかった。
 階層ごとには王がいてね、あの時の王達は賢王だった。
 まぁ、アルフヘイムとスヴァルトアルフヘイムは小競り合いは絶えなかったけどね。
 そんな中、世界最大級とも言える事件、「世界樹消失」が起こったんだ。
 名前の通り、世界樹が世界から消失した」

それは大変だ。
世界樹が消失すると、魔力が激減しちゃうんでしょ?

「うん。その通りだ。
 だから王達は世界樹が消失した原因を探した。
 そして彼らは一つの真実に辿り着いた。
 アルフヘイムの水精霊王が自分の欲に逆らえずに世界樹を盗んだ、ということに。
 彼らは怒り、嘆いた。
 だが、無くなった世界樹はどう探しても見つからない。
 魔力量も減り続ける。
 世界の秩序が崩れ、混沌と化した。
 そんな時、ミズガルズの王が立ち上がった。
 彼は人の身でありながらも世界を変える力を持ち、その事を隠し続けていたのだ。
 だが、彼は世界を救う為に隠し続けてきた自身の力、世界改変魔法「聖杯ホーリーグレイル」を使う事を決心し、実行した。
 9つの階層は9つの大陸に、魔力は自然から生み出されるものである、この世界の残り魔力量を図るための道具は海とする、ということを世界に認識させ、見事「聖杯ホーリーグレイル」は成功した。
 階層の…基、大陸の王達は歓喜した。
 そして、この世界を救ったミズガルズの王を救世主メシアと呼び、世界の王とした。
 だが、大陸の王達はミズガルズの王の力を恐れた。
 そして、自分も王としての最高の椅子に座りたいと欲した。
 結果、ミズガルズの王は殺された。
 信じてた仲間に裏切られてね」

そんな、酷い!

「仕方のない事だったんだよ。
 人には過ぎた力だった。
 はい、おしまい。」

身体を引っ張られる感覚がし、気づけば椅子に座っていた。

「あの、せめてミズガルズの王の名前だけでも聞いてもいいですか?」

聞いた方がいい気がした。
聞かなくてはいけない気がした。

王様はゆっくりと目を開き、言った。

「ミズガルズの王の名は、ソロモン。…僕のことだね」
「…っ!?」

あまりにも悲しい表情だった。
…王は、ソロモン王は死んだのだ。
…殺されたのだ。
最愛なる仲間に。
あんまりじゃないか。
あんなに頑張ったのに。
あんまり過ぎるよ。

「ソロモン王がぁ…うぅっ…ぐすっ…」
「あぁっ、泣かないでおくれ?ほら、僕ここにいるじゃないか。生きてる、生きてるよ?」
「だっで…死んだって…」
「あれは、ある意味での真実。でも、僕の真実は生きている方にあるからね?」
「どういうこと…?」
「僕は殺される瞬間、大悪魔達が世界改変魔法並に強い結界を破って助けに来てくれたんだ。あれは泣けたね。嗚咽が止まらなかったよ…。でもそのせいで彼らは教会に捕まっちゃってね。ホントに申し訳ないことをしたよ。…でも、嬉しかったんだ」

そうだったのか…。
大悪魔達はいい人ばかりなんだね。
でも、何でそこに教会が出てくるのだろう。

「ふふふっ。それは君が見極めるんだよ。僕はこれ以上は言えないからね。あ、そうそう、僕はまだ君の名前を知らないんだよね。君だけが僕の名前知ってるって何かずるくない?あと、敬語禁止ね。僕、敬語大嫌いなんだ」
「え、でも…」
「ん?拒否権は?」
「ないです」

おぉう…。
大悪魔達と違ったプレッシャーを掛けてきますね。
笑顔のプレッシャーほど怖いものはありません。

「えと、私はるし。今更だけど、よろしく」
「うん、よく出来ました。るし、か。いい名前だね。差詰めルシファー辺りから名前をとってきたんだろう?」

凄い。
流石ソロモン。

「ふふ。褒めてくれてありがとね。さて、るしちゃん。昔話から180°、いや、300°話が変わるけど、僕は君に、王として問わなければいけないことがあるんだ。それが、今回君をこの家に招待した理由にも繋がる」

先程とは打って変わってピリッとした空気が漂う。

ソロモンが私に問いたいこととは何だろうか。
私に答えることが出来るのか不安だ。

グッと不安を抑え、ソロモンの目を見る。

「うん、いい目だ。では、僕は王として君に問う。君は「ソロモンの鍵」という世界を変えてしまうほどの力を得た今、何を成す?」

何を成すか?
…世界征服とか?
いやいや、私にそんな度胸はない。
ただただ毎日がワクワクとドキドキの中にあればいい。
そもそも、家に帰ればヴィネとベリトは当たり前のようにいるし、困ることはない。
あるとすれば、ベリトの性格かな。
うーん。成したいことがない。
ならやりたいことはどうだろう?
例えばMP消費なしで家族みんなで探検に行きたいとか?
…いいねぇ。
ほのぼのと暮らしたい、とか?
…いいねぇ。

「ソロモン王よ。私は成したいこと、大成がありません。ですが、やりたいことならばあります。それは、家族みんなでワクワクドキドキの世界を旅することです」

ソロモンは、眉間に皺を寄せている。
そんなに私の答えが気に入らなかったのかな。

「…敬語ダメ、絶対」
「ごめんなさい」

まさかの敬語でしたか。
あれは仕方ないです。
だって、王のプレッシャー半端ないですもん。

「もう一つ。君は、大悪魔達のことをどう思う?」

それは即答です。

「彼らは私の大事な家族だと思ってる。だけど、あっちは私のことをどう思ってるのか分かんないけどね」

そう、結局は人の心などわからないのだ。
もし見れたとしても見たくはない。
知るのが怖いからね。

「ふぅん、家族、ね。なんだ、君はやっぱりいい子だね。そう思わない?ヴィネ、ベリト」
「…あ、あぁ。るし、汝(おまえ)が我のことを家族だというのなら、我もまたそう思っているに決まっているではないか。王よ、るしはいい主であろう?」
「ふんっ!我が貴様と同じ位にいるだと?ほざけっ!」
「ベリト、君はなんでそんなに嬉しそうなんだい?」
「お、王の目は節穴だな!まったく」

ヴィネ、ベリト…私のことを家族だと思っててくれたんだね。
嬉しいよ。
感激して涙が出てきそうだ。
でも、いつの間にここに来たんだい?

「ん?僕がさっき魔法を解いたからね。あ、るしちゃん、泣かないで。」

スッと出された真っ白のハンカチで涙を拭う。
…いい匂いだ。
女子力がお高くていらっしゃる。

「さて、僕の問うべきことは終わったし、そろそろお別れの時間が近づいてきたようだね」
「えっ!?そんなっ!!」
「君達がここに長居すると、僕という存在がまだ生きているということがバレちゃうからね。…僕としては皆とずっと一緒にいたいところなんだけどね。あはは」

力なく笑うソロモン。
その笑みからは長年一人で生きてきた寂しさが伺えた。

「ヴィネとベリトの力ならソロモンを助けてあげられないの?」
「…無理だ。我らが王を連れ出したとしても、神との全面戦争には勝てぬ」
「ふんっ!」
「…そんなっ!」

何か方法がないのか?
一人にならない方法が。
助けられる方法が。

「るしちゃん、いいんだよ。もういいんだ」

何か、何かある筈なんだ!!
諦めちゃいけないんだ!!
そもそも、教会は何で大悪魔達を封印したんだ?
何か理由があるんじゃないか?
…全員を解放したらソロモンを助けられるんじゃないか?

「るしちゃん。…これをあげるよ。ヴィネ、ベリトまた遊びに来てね。バイバイ」
「ソロモンッ!!」

思わずソロモンの手を握りしめる。
こうしないと彼がどこかに行くような気がして。

「ごめんね。また会えたらいいね」

その言葉を最後に世界がぐるりと回転した。
私は思い出す。
この場所の逸話を。





マップ名「オフィール」。
それは、かつてソロモン王が黄金を手に入れた場所だとされている。
それ即ち、黄金郷。



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