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古城
しおりを挟む「おーい、るしさん?いきなり止まってどうしたんですかい?」
アルザスの声が聞こえ、ハッと我に返る。
ここは…向日葵の森?
ソロモンはっ!?
「るしーどうしたのー?顔色悪いよー?」
「ソロモ…。皆、どこ行ってたの?心配したよ」
「ん?俺らずっと一緒にいたじゃんか」
「えと、霧は?」
「霧?そんなものは見なかったげすが…」
そんな馬鹿な。
…夢?
…幻影?
「あれ?るし、その指輪は…」
手にぴっちりと付いた黒い手袋の上から嵌められている指輪、それは去り際にソロモンがくれたもの。
怪しく煌めく青玉が星を連想させる。
「これは、大事なものなんだ」
ソロモンを助ける手がかりになるものだ。
「あれ?ヴィネとベリトは?」
「んー?いないよー?」
そっか。
ここにはいないということは、家に帰ったのだろう。
ソロモンは、大悪魔ならいつでも来れるみたいな事を言っていたから、今度頼んで連れて行ってもらおう。
「大丈夫ですかい?るしさん、休憩しやすか?」
「ん、ごめんね。変な事言ってたね。大丈夫、先に進も?」
「ならいいんだけどーるしー早くー」
ソロモンはいつか助ける。
オフィールの景色を胸に仕舞い、先を進む仲間を追いかけた。
いつしか向日葵の森を超え、平野を進む。
暗い空を白い鳥が優雅に踊り、死にかけているモンスターを啄んでいる。
このフィールドに入ってから死臭が鼻から離れない。
「帝国はまだー?」
「まだー」
今、私達はマップの端にいる。
帝国はちょうど中央にあり、そこに着くにはあと2日はかかりそうだ。
ズドッ
近くの地面に穴が空いた。
この攻撃は、上空を飛んでいる白い鳥だ。
ここに来るまでに何度もその奇襲ともいっていい攻撃を受け続けている。
【鑑定】する間もなく地面に突き刺さって自滅していくため、名前と持っているスキルが判別できない。
「るしさーん!1匹撃ち落としました!」
ナイスアルザス!!
ちょうど今【鑑定】したいなと思ってたんだよぉ!
アルザスから受け取った白い鳥は痺れているのか時折ビクンッと動く。
痺れが取れる前に【鑑定】だ!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
種族 キャリーデス ☆3
Lv 10
HP 200/200 MP 150/150
アクティブスキル
・死嗅(死が近い者を察知できる)
・毒液__ポイズン__#
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
死を運ぶ鳥さんね。
誰かが死ぬ前夜の家の屋根に留まってそう。
「るしさん、鑑定終わりやしたか?」
「うん、ありがと」
アルザスは手慣れた手つきで「キャリーデス」の生命を狩った。
南無阿弥陀仏。
しっかし、帝国に近づくにつれて雲行きは怪しくなるなぁ。
やばい鳥も出てくるし、一体どれだけ危ない国だというのだろう。
頭上に降ってくる鳥を【残月】で斬り、前へ前へと進む。
「るしよ、これだけ死臭が凄いとのぉ、アンデッドが出てきてもおかしくはないのぅ」
「バレンシア、フラグ立てないで!!」
「ふらぐとはなんぞ?」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
うっわぁ、回収されたわぁ。
早くね?
前方の地面を突き破り、多数のゾンビが襲来した。
リアルホラー映画だ。
目玉が飛び出したりしてるやつとか、腹から内蔵が飛び出ていたりするやつもいる。
ここは、【鎮魂歌】の出番だな。
こんな光景長いこと見てられない。
精神がやられるね!
うわぁぁ、怖いよ…。
「るしさん、あのゾンビ達って名前あるんでゲスかね」
…ありそうだ。
一応【鑑定】をかけておこう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
種族 ゾンビ ☆3
名前 タータン
Lv 9
HP 350/350 MP 200/200
アクティブスキル
・腐食魔法(ものを腐らせる魔法)
・毒液
・再生(特定の属性攻撃をされない限り、何度でも甦る)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
うわぁ、うわぁ。
【腐食魔法】には当たりたくないねぇ。
腐るんだよ?
それは嫌だ。
しかもコイツも【毒液】を持ってやがる。
ここは、【毒耐性】とかない人にはちょっと厳しい場所だね。
「アルザス、名前あるみたい」
「マジでげすか」
「タータンだってさ」
アルザスは、「ゾンビ」に向かい、合掌した。
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」
「ゾンビ」達が走るのが早いのなんの。
もうすぐそこまで来てるよ。
さ、【鎮魂歌】を歌いましょか。
ピロリん。
『Lvが上がりました』
『2ポイント獲得しました。任意のステータスに割り振ってください』
『“ジン”のLvが上がりました』
『“ウォッカ”のLvが上がりました』
『“ベルモット”Lvが上がりました』
『“バレンシア”のLvが上がりました』
お、全員Lvが上がったね!
イエーイ!
私は嬉しいよ!!
さて、「ゾンビ」の全滅が終わったところでここは走り抜けましょう。
リポップされたらたまりませんからね。
「ゾンビ」が這い出てきた場所を通り過ぎると、ちょうど背後からボコボコと地面を突き破る音が聞こえた。
「るしー僕、ゾンビ嫌いー」
「分かるっ!分かるよー!」
どうやらリポップしたようだ。
…最悪です。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「嫌ぁぁあ!!気持ち悪いのじゃ!!」
バレンシアが手当り次第に火を吹いている。
吹いても吹いても湧いてくる「ゾンビ」。
アンデッドはある意味で不死だ。
日に当たったり、水で攻撃されなければ。
バレンシアの火によって炭になった「ゾンビ」達は、うぞうぞと再生していく。
気持ち悪いのなんの!
もう1度【鎮魂歌】を歌おうとしたその時、頬に水滴が落ちた。
ポツリポツリと天から降ってくるそれは、「ゾンビ」に効果抜群な水、雨だ。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ゾンビ」達が一斉に成仏していく。
それと同時に雨も激しさを増す。
「るしさん、一旦雨宿りできる場所を探しやしょう!俺達はともかく、テイムモンスターが風邪をひいたら大変でげすから!!」
「そうだね!!皆、どこかに雨宿りできそうな場所があったら教えて!」
「「「了解!」」」
いよいよ本降りに差し掛かった時、バレンシアの目に古城が見えたという情報が入った。
暫く泥濘を走っていると、私の目にも古城が見えてきた。
「皆!もう少しだから!」
帝国から少し遠のくが、今は屋根が惜しい。
門を潜り、屋根の下に入る。
とりあえず【生活魔法】を使って身体を乾かす。
「誰か身体がだるい人とかいない?」
「大丈夫ー!」
「ピンピンしてるぜ?」
「大丈夫じゃ!」
「きゅ!」
「俺達も大丈夫ですぜ!」
それは良かった。
モンスターの身体って丈夫に出来ているのかな?
チラリと空を見るが、大粒の雨が途切れることなく降り注いでいる。
…当分はここで過ごすことになりそうだ。
ドガァァンッ!!
「うわぁぁ!!!」
バッと頭を抱え、しゃがみ込む。
ふぉぉぉ、いまの雷だよね!?
すっごい近くに落ちたよね!!
「お前さんは雷が怖いのか?愛いのぅ。まだ雨は止まぬようじゃし、外は冷えるから中に入らんかの?」
「そ、それいいね!みんな入ろう!」
「るしー雷怖いのー?」
「俺がるしを守るからな!」
木製の扉を押すと、ホコリが舞う。
壁にかけられている松明には炎が灯っており、中は明るかった。
明かりに照らされた騎士の甲冑が鈍く光る。
「人の気配はせぬが、この生活感ある暖かさは不気味じゃのう」
バレンシアの言う通りで、人の気配はしない。
だのに、暖かい。
…アンデッド系が住んでる感じですか?
それは困ります。
私、泣いちゃいますよ?
「…今日はもう休みやしょう。雨の中の移動は結構重労働でげすからね」
うん。アルザスの言う通りだ。
取り敢えず移動したいところなのだが、私は先頭を歩く勇気はない。
先頭、譲りますよ?
「バレンシア、前行って」
「ん?無理じゃ。妾、アンデッドは苦手じゃからな。ジンとウォッカに頼めば良い」
「ジン、ウォッカー!」
「分かったよー僕とウォッカが前に出るねー」
「じ、ジン!!お前何言ってんだよー!先頭って、怖いんだぞ!!」
ウォッカの猛抗議の結果、先頭がジン、2番目が私、3番目がウォッカとなった。
どこに寝室があるか分からないため、一室一室をゆっくり開いて確認し、寝室を確保していく。
大きい部屋はるしのね、と言われて配分された自分の部屋のベッドに横たわる。
ーた……て
…気のせいだね。
なにも聞こえなかった。
ここはもうログアウトしておこう。
怖くなんてないさ、お化けなんていないさ。
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