大書楼の司書姫と謎めく甜食

鳩子

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第一章 珍奇で美味なる菓子

謁見待機中

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 翌日、娃琳ゆりんは、鴻を伴って、兄王に謁見を申し入れた。

 当初、多忙の為、謁見できないとのことだったが、大茶会の準備の為というと、二刻後、謁見が終わった後に、四半刻だけ時間をとってくれることとなったのは、幸運なことだった。

「なあ」と鴻が、控え室として通された、黄金宮の一室を、きょろきょろと見回しながら、言う。「大茶会っていうのは、そんなに、重要な祭祀なのか?」

「祭祀、と言うのとは少し違うな」

 娃琳は鴻の言葉をやんわりと否定して、続ける。「大茶会は、この国にいるものならば、誰でも参加できる茶会だ。職業身分上下の関係なく、だれでも参加できる。旅人でも参加できるから、勿論、あなたも参加できるよ」

「へぇ……凄いな。それは、王様も参加するのか?」

「ああ。参加なさる」

「だから、その為のお菓子が必要なのか。……けれど、『珍奇で美味な菓子』だったか? そんなのは、いくらでもありそうな気がするが」

 鴻の言葉は、もっともだった。

 珍しくて美味しい菓子など、この世の中にごまんとあるだろう。だが、それだけではならないはずだった。

「なんとなく、思うことだが、兄王は、おそらく、答えを知って居て、私にこんな無理難題を押しつけたんだと思う」

「でも、それならば、答えがあるって事だろう。まだ、なんとかなるさ。それに、おそらく、国中の人が集まる茶会だったら、大量のお菓子が必要だから、きっと、一気に作ることが出来るものだよ」

 鴻の言葉を聞いた娃琳は、目が覚める思いだった。

 大茶会となれば同じ菓子を幾つも用意しなければならない。しかし、それでは、珍奇の意味が薄らぐ。大量に作れるモノならば、珍しさは半減するだろう。

「私が用意するのは、皇太子殿下にお出しする為だけの菓子で良いのだろう。……そして、珍しく、珍奇とは、おそらく、皇太子殿下にとってと言うことだ」

「皇太子?」

 鴻が聞き返す。

「言っていなかったか? ……今回、游帝国の皇太子殿下が大茶会に参加されるのだ」

「游帝国の皇太子が、なんでまた」

「代々の皇太子殿下は、ほう国に留学される。前の皇太子は、現在の仙花大女皇帝せんかだいじょこうてい陛下のご夫君であった、仙花大帝君せんかだいていくんも、堋国で過ごしたよ」

 へえ、と鴻は呟く。



 仙花大帝君せんかだいていくん

 仙花大女皇帝せんかだいじょこうていの即位に伴い、与えられた諡号である。

 娃琳にとっては、えい遊嗄ゆうさという名前のほうが馴染みがある。

 娃琳が、結婚を固辞しているのはその、遊嗄の為だ。

 ―――彼は、娃琳の初恋の人だった。

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