鬼憑きの姫なのに総モテなんて!

鳩子

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第一章 花の宴の夜は危険!

12.下着ドロボー

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 とにかく、早く休まないと夜が明けてしまうということで、私は、姫さまのお部屋にて休むことになった。

 まあ、なんというか、激動の一日だったわ。

 お邸の女房勤めが大変だとは聞いていたけれど、ここまでだとも思わなかったし。

 まあ、宴も無事に終わったようだし、あとは、我が家へ帰るだけだわ。

 私の邸は、山科と言うところにある。京から東へ行く街道の途中にある鄙びた場所だけれど、里の者は親切だし、裏の山で取ってきたばかりの山のさいなども、本当に美味しい。

 一応、うちの父親は、都にも邸を持っているけれど、内裏からは遠く離れた八条のあたりなので、郊外ね。八条のあたりは、下々の者たちも多く居るし、市も近くに立つことがあるので、気ぜわしいし、煩い感じもする。ここ、関白様のお邸は二条なので、帝が腹痛で苦しんでおられるなどと聞けば、即座に出仕できる好立地だ。

 上達部かんだちめなどのお住まいならば、やはり、出仕のことを考えて、内裏近くが良い。だけど、このあたりは、一件一件が広大な敷地を誇るお邸なので、数えるほどしか邸は無い。

 この関白邸だって、お庭には大きな池があって(近くにこれは、湧き水が溢れるところがあっと、そこから水を引いているのだという)、豊かな水を湛えていた。なんと、そこに双頭が竜の船に伶人れいじんをのせて、管絃かんげんなどをするのだという。

 お邸も、広い母屋の他に、東の対、西の対、北の対、ついでに北西の対まである広大なもので、侍(警護の為に雇っている私兵)たちの控える侍廊も東西にあった。

 私、他のお邸というのを見たことがないのでよく解らないけれど、おそらく、都で一番広くて立派な建物なのだと思う。

 姫さまのお部屋は、北西の対にある。というか。割合小ちんまりした北西の対自体が、姫さまの為に作られたような気がしてならない。

 御殿の周りには、溝が作られて水が巡らせてある。そのさらさらとした流れを聞いていると、うとうとと仕掛ける。早く眠らなければ……と思うのに、小袖が肌に馴染まないでなんだか、居心地が悪い。

 先ほど、小袖一枚で歩いていた私だけど、今は、それも剥ぎ取られて、小袖は女房の小少将さんの小袖を借りている。私の小袖と違って、生地も上質だ。(私の小袖は、父親の妾(側室)が作って下さったのだけど、生地は、ちょっと、デコボコしているところがある)

 姫さまのお部屋に空薫きされている香にも、高価な香木を惜しげもなく使ったもので……。

 上等な小袖、美しいお邸、麗しい薫り……。

 貧乏な下級貴族の姫として育った私には、本当に落ち着かなくて、困る。

 でも、もう眠らなきゃ。明日も、こちらのお邸で長々惰眠を貪るわけには行かないのだし……。

 そして、本格的に、意識がもうろうとし始めたとき、ギシッと廊下の軋む音がした。

 だれか、来たのかしらね……と暢気に思っていたけれど、足音は、近づいてくる。そして、ゆっくりと、御簾を上げて姫さまの部屋のひさしすのこよりも内側に作られた空間)に入ってくる。

 人影は……男のようだった。

 よく解らないけれど、烏帽子は付けているように思えるし、おそらく、狩衣姿だ。

 どうしよう。これは、小少将さんを起こした方が良いのかしら。

 そして、そこからの男の動きは、素早かった。

 半蔀はじとみからにょっきり手を伸ばして、几帳に掛けてあった私の小袖をさっと引き抜いて、持って行って仕舞ったのだ。

 そして、そそくさと、男は去って行く。

 えー? 何、どういうこと? よく解らなかったけど、下着ドロに、私の下着は盗まれたらしい!

 ちょっとー! 折角作って貰った下着なのにっ!

 口惜しいのと怖いので、とにかく、私は眠れなかったので、そのまま、夜が明けるのを待つしか無かった。

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