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第四章 後宮には危険が一杯!
30.誰が敵で誰が味方か
しおりを挟む女房一人遣わす……という陽の意見は、関白殿下には、存外、新鮮に映ったらしい。
「それはいい。ちょうど、春のごあいさつ……」
喜色満面にいう関白殿下に、千種さんが、わりと容赦ない勢いで、ぴしゃりと。
「済ませました」
「あぁ、もう、済んでいたのか……困ったなあ」
頭を抱えた関白殿下に、陽は、にっこりほほえみながらいう。
「関白殿下。ちょうど、鬼ちゃんは、うちに来ることですし、うちの女房として、鷹峯へ伺えば良いのではありませんか?」
関白殿下は、一瞬、ぐっ、と詰まった。
確かに、鷹峯院のお邸へ行くならば、陽の提案がベストなのは、関白殿下にも、わかってはいるようだけど、なんとなく、嫌なのだろう。
「鷹峯院の所に、鬼の君がいたら、どうするの、山吹?」
あ、これ、私が鷹峯院のお邸に行くの、確定だ。
他の女房さん、立ててくれれば良いのにさあ、と思ったけど、今回、調べている人は……つまり、鬼の君は、非常にデリケートな問題がある方だ。
事情を知るものを、増やすのは、ちょっと……というか、かなり危ない。
だからこそ、関白殿下は、この話をする為に、淑景北舎まで、私を拉致ったのだろうから。
鬼の君に会ったら……。
鬼の君が、なにか、危険な復讐でも考えているのだとしたら、なんとか、思い留まってほしい。
「鬼の君に、お会いできたら、なにをなさるおつもりなのか、聞きます」
「それで?」
「もし、恐ろしいことを企てておいでなら、必ず、止めます。
でも、もし、ご自身の名誉の為に動いておいでなら、なんとか、調べて差し上げたいです」
関白殿下は、ふむ、と頷いてから、
「その方向が、平和かなあ。私も、万が一の備えだけはしておくけどね」
「関白殿下、ずっと気になっていたんですけど、二条廃帝が、ご母堂さまの登華殿の女御さまを呪詛した……という、証拠は、なにかあるんですか?」
「証拠、か」
「はい。証拠もなく、帝が廃帝に追い込まれるなんて、おかしなことですけど、帝にお味方するかたの一人も居なかったということですよね?」
「確かに、そうだな。私の父も、その事については、全く動いた様子はない。ただ、当時の私は、二条廃帝がお腹を召された寺にて、血塗れの部屋を見ただけだ。
あれは、なかなか、凄惨な現場だったぞ? 天井まで、血が飛び散って」
なのに、死体はなかった。
私は、そのあと、山科で鬼の君と出逢っている。しかも、鬼の君は、検非違使に追われていたのだ。……一体、誰が、検非違使を動かした?
いや、違う。
一体誰が、検非違使を動かせた?
なにやら、妙な感じがするけど。
「僕も不思議だとは思っていたのですけど、登華殿の女御さまの呪詛という話が出た時、鷹峯院は、なにも仰せにならなかったのでしょうか?」
「えっ?」
関白殿下が、不意打ちを食らったように、驚いた声を上げた。
「あっ! そうよね。鷹峯院は、ご自身の子が、死罪になるかもしれないって時なのよね! それなのに、何もなさらなかったというのなら、鷹峯院だって、十分怪しいんじゃ?」
自分で言って、緊張して、手に汗が滲み始めた。
これ、鷹峯院のお邸行くの、ヤバいかもしれない……。
鷹峯院が、もし、呪詛事件とか、何かに関わっていたとしたら……ご自身の后を、手に掛けたと言うことになる……。
まさか、そんな、怖いこと……。
私は、手が震えて、止まらなくなるのを、必死で隠した。
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