立日の異世界冒険記

ナイトタイガー

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0004.外の世界へ

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 たいまつの明かりが消えた事によりフードの男達は何を言っているかは分からないが大声で騒ぎ始めた。
 まだだ。続けて健は闇の中でフードの男達に向けて今度は見えない緑の音を放った。次の瞬間、フードの男達は耳を押さえて叫びながらしゃがみ込んだ。どうやら、健の放った見えない緑の音によって全員、耳がやられたようだ。
「今だ。俺は行くぞ。」
 闇の中で健は2人に声をかけた後、走り出した。健は闇の中だと思えないほど一直線に階段に向かい、すぐに駆け上がって行った。これも立日一族の能力なのだろうか。それどころか不思議な事に階段の途中で扉があると、まるで暗闇等ないかのように扉を手早く確認する。残念ながら途中の扉はどれも鍵がかかっていて開かなかった。
「くそっ。一番上の部屋には入れるだろうな。」
 健は悪態をつきながら異世界で最初に到着した部屋に向かった。幸い一番上の部屋に通じる扉は開け放しとなっており、健はすんなり部屋に入ることができた。
 部屋は最初に見た時と同じ状況だったが、中に誰もいなかった。健は部屋の壁に駆け寄るとバッと分厚いカーテンを横に押しやった。外の明るい日差しが健の目に入り、眩しさのあまり健は顔を背けた。
「やったぞ。外だ。」
 健は素早く窓を開けると、陰湿な部屋の中に爽やかな風が強く吹き込んできた。どうやらその部屋は地面から30メートル位の高さにあり、窓の外には荒野が広がっていた。右前方には大きな森も見える。
 健は躊躇なく窓の外に飛び出した。すると、どういうことか健の体は落下せずにそのまま森の方に滑空しながらゆっくりと高度を下げていった。よく見ると健の体が超高速の微小振動をしているので何か仕組みがあるのかもしれない。
「4つも力を使っちまった。爺ちゃんにバレたら殺される。だけど、命の危機だし、許されるよな。それにここは多分、現実世界じゃねーし。」
 健は自分に言い訳しながら森を目指した。森の手前で健は地面に舞い降りた。幸いにしてフードの男達の仲間はいない。と言うか、まったく人気がない。後ろを振り返って見ると健がいた部屋は塔の一室であった。塔の周りには高い塀があり、その下の様子は分からなかった。
 健が森の中に入り、一番近くの木の陰に身を隠した次の瞬間、塔の部屋の窓から最初にいたフードの老人と思しき人物が顔を出し、キョロキョロと辺りを見回している。相変わらず怒った様子だが、健の姿が近くに見当たらないのでまだ塔の中に隠れていると思ったのか、すぐに顔を引っ込めて窓を閉めた。
「危なかった。奴らはしつこそうだし、姿を見られるずに済んで良かった。」
 健は木の根元に座り込んで少し休憩をすることにした。
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