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0058.黒い祠
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雪見の宴を皆で満喫した後、健達は2人に声をかけた。
「よし、今日はゆっくり休もう。明日からが勝負だ。」
火の精は、元々寝る必要がないのかもしれないが興奮して走り回っている。だが、銀髪の女は、健の介護で疲れ切っていたのか、そのまま静かに眠りに落ちた。
「俺ももう寝ることにする。何かあったらすぐ起こしてくれ。」
「ガッテン、承知だぜ。」
だが、超感覚を身に付けた健は、例え眠っていても周囲に異変があったらすぐ感知することができるようになっていた。そして、健はなぜかそのことを本能的に理解していた。おかげで、まったく心配せずにそのまま眠りについた。
健達が洞窟で安らかに眠っている時、健達を襲った3人のうちの生き残りの2人が猛吹雪をものともせずに雪の広がる大地を激走していた。目つきの悪い女が、横を走る長身の男に話しかける。
「まさか、ムーラ様があんなにお怒りになるとは。でも私達だけじゃ、あいつのあの恐ろしい力を撃ち破ることは難しいわ。癪だけどガイルを連れて行くしかないわね。」
長身の男が黙って頷く。2人は、実は健が命がけで見えない黒い音を使っていたことを知らなかった。そして、死の淵から舞い戻ったことによって、健が本当に手強い相手になったことも知らなかった。
高速で走っていた2人は、前方に雪の積もった怪しげな黒い祠を見つけると、その前まで進んで急停止する。
「確かここのはずよ。」
耳を澄ますと念仏のような不気味な低い唸り声が聞こえてくる。
「いつ来ても気味が悪いわね。」
目つきの悪い女は舌打ちする。
「あのお札を剥がす必要があるようね。悪いけど、あんたの方が背が高いしやってくんない。」
長身の男は黒い祠の入口の上部に貼ってある古いお札に手を伸ばすと破りとった。まだ、お札は三枚ある。長身の男は、順番に破りとっていく。そして、最後のお札を破った瞬間、長身の男は体をくの字に曲げて、口から血を吐いた。
「ゴフッ。」
「レンドン。どうしたの。」
長身の男の腹には大きな風穴が空いている。そして、そのまま、その場に倒れこんだ。横には黒い毛むくじゃらの巨体が立っている。長身の男が子供に見えるほどの巨体だ。
「ガイル、じゃないわね。あんたは何者。」
目つきの悪い女は後ずさりしながら臨戦体制をとる。今度は後ろから声がした。
「俺に何の用だ。」
後ろを振り向くと、黒い仮面を被った男が立っている。
「ガイル。あんたの力を借りに来たのよ。殺して欲しい奴がいるの。」
「ほう。だが、その前に自分の命の心配をした方がいいんじゃないのか。」
仮面の男が指を差した先には先程の黒い毛むくじゃらの巨体がおり、ゆっくりと歩み寄って来ていた。
「よし、今日はゆっくり休もう。明日からが勝負だ。」
火の精は、元々寝る必要がないのかもしれないが興奮して走り回っている。だが、銀髪の女は、健の介護で疲れ切っていたのか、そのまま静かに眠りに落ちた。
「俺ももう寝ることにする。何かあったらすぐ起こしてくれ。」
「ガッテン、承知だぜ。」
だが、超感覚を身に付けた健は、例え眠っていても周囲に異変があったらすぐ感知することができるようになっていた。そして、健はなぜかそのことを本能的に理解していた。おかげで、まったく心配せずにそのまま眠りについた。
健達が洞窟で安らかに眠っている時、健達を襲った3人のうちの生き残りの2人が猛吹雪をものともせずに雪の広がる大地を激走していた。目つきの悪い女が、横を走る長身の男に話しかける。
「まさか、ムーラ様があんなにお怒りになるとは。でも私達だけじゃ、あいつのあの恐ろしい力を撃ち破ることは難しいわ。癪だけどガイルを連れて行くしかないわね。」
長身の男が黙って頷く。2人は、実は健が命がけで見えない黒い音を使っていたことを知らなかった。そして、死の淵から舞い戻ったことによって、健が本当に手強い相手になったことも知らなかった。
高速で走っていた2人は、前方に雪の積もった怪しげな黒い祠を見つけると、その前まで進んで急停止する。
「確かここのはずよ。」
耳を澄ますと念仏のような不気味な低い唸り声が聞こえてくる。
「いつ来ても気味が悪いわね。」
目つきの悪い女は舌打ちする。
「あのお札を剥がす必要があるようね。悪いけど、あんたの方が背が高いしやってくんない。」
長身の男は黒い祠の入口の上部に貼ってある古いお札に手を伸ばすと破りとった。まだ、お札は三枚ある。長身の男は、順番に破りとっていく。そして、最後のお札を破った瞬間、長身の男は体をくの字に曲げて、口から血を吐いた。
「ゴフッ。」
「レンドン。どうしたの。」
長身の男の腹には大きな風穴が空いている。そして、そのまま、その場に倒れこんだ。横には黒い毛むくじゃらの巨体が立っている。長身の男が子供に見えるほどの巨体だ。
「ガイル、じゃないわね。あんたは何者。」
目つきの悪い女は後ずさりしながら臨戦体制をとる。今度は後ろから声がした。
「俺に何の用だ。」
後ろを振り向くと、黒い仮面を被った男が立っている。
「ガイル。あんたの力を借りに来たのよ。殺して欲しい奴がいるの。」
「ほう。だが、その前に自分の命の心配をした方がいいんじゃないのか。」
仮面の男が指を差した先には先程の黒い毛むくじゃらの巨体がおり、ゆっくりと歩み寄って来ていた。
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