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黒い髪の弟
7 赤と黒
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これじゃ歩けない……。
逃げられない、ここから。血を止めてほしいのに。死んでしまう。
兄上!助けて!
いくら叫んでも、彼の口からは何一つ言葉が出なかった。
突然、ろうそくの炎が揺らめき、誰かが部屋にやってきた。シンは恐怖で体をこわばらせた。
「……だいぶ取れたようだ」
男の低い声がする。彼の血の事を言っているのだろうか。
「これだけあれば申し分ない」
男は彼の横たわっている台のそばに立つと、台の下から透明な容器を取り出した。そこにはシンから流れた血が入れられている。
それから男はシンの手を取ると、傷口からあふれた血をべろりと一舐めした。シンの背筋に悪寒が走る。
男の顔は光が届かずに見えないけど、恐怖でガタガタと震え足枷がカチャカチャ鳴った。
「シン、良くやった。しばらく自由にしてやる。うまい物を食べさせてやろう。いい血を作るためにな」
男はそう言いながら、震えるシンの顎に手をそえた。
***
「!!」
突然体が動くようになり、シンは目を覚ました。手を誰かに握られている事に気づき、とっさに恐怖で振り払おうとする。
「シン!?」
声が聞こえて、ぎゅっと抱きしめられた。
「あ……あにうえ?」
「大丈夫か?」
夢を見ていたらしい。
そこはシンの部屋のベッドの上だった。彼は手も足も動かせるし、声を出す事もできた。
「あにうえ……」
「シン、ごめんな」
アルフレッドはシンの背中をゆっくりと撫でてくれた。シンの手を握っていたのは兄だった。あの恐ろしい男じゃない。
「僕は……」
「木から落ちたんだ。俺のせいで……。シンは今まで眠ってた。ごめん」
ここはあの暗い場所じゃない。半年前にやってきた、光にあふれた幸せな家だった。
本当の父上と母上がいて、優しい兄がいる。シンは心から安堵した。兄のおかげで身体の震えは少しずつ収まっていく。
「お前もしかして、高い所怖いのか?」
「え?」
アルフレッドが真面目な顔で聞いてくる。
別にそんな事はなかったけど、口にすれば現実の記憶になってしまいそうで、今見た夢を説明するのが怖かった。
「あんまり高いところに行ったことがないから」
「そっか。悪かった」
シンは謝る兄の、その燃えるような赤い髪と瞳に見とれた。
真っ黒な記憶の中から抜け出して初めて見た兄の赤い髪と瞳の色が、シンの世界を鮮やかな色に染めていた。
逃げられない、ここから。血を止めてほしいのに。死んでしまう。
兄上!助けて!
いくら叫んでも、彼の口からは何一つ言葉が出なかった。
突然、ろうそくの炎が揺らめき、誰かが部屋にやってきた。シンは恐怖で体をこわばらせた。
「……だいぶ取れたようだ」
男の低い声がする。彼の血の事を言っているのだろうか。
「これだけあれば申し分ない」
男は彼の横たわっている台のそばに立つと、台の下から透明な容器を取り出した。そこにはシンから流れた血が入れられている。
それから男はシンの手を取ると、傷口からあふれた血をべろりと一舐めした。シンの背筋に悪寒が走る。
男の顔は光が届かずに見えないけど、恐怖でガタガタと震え足枷がカチャカチャ鳴った。
「シン、良くやった。しばらく自由にしてやる。うまい物を食べさせてやろう。いい血を作るためにな」
男はそう言いながら、震えるシンの顎に手をそえた。
***
「!!」
突然体が動くようになり、シンは目を覚ました。手を誰かに握られている事に気づき、とっさに恐怖で振り払おうとする。
「シン!?」
声が聞こえて、ぎゅっと抱きしめられた。
「あ……あにうえ?」
「大丈夫か?」
夢を見ていたらしい。
そこはシンの部屋のベッドの上だった。彼は手も足も動かせるし、声を出す事もできた。
「あにうえ……」
「シン、ごめんな」
アルフレッドはシンの背中をゆっくりと撫でてくれた。シンの手を握っていたのは兄だった。あの恐ろしい男じゃない。
「僕は……」
「木から落ちたんだ。俺のせいで……。シンは今まで眠ってた。ごめん」
ここはあの暗い場所じゃない。半年前にやってきた、光にあふれた幸せな家だった。
本当の父上と母上がいて、優しい兄がいる。シンは心から安堵した。兄のおかげで身体の震えは少しずつ収まっていく。
「お前もしかして、高い所怖いのか?」
「え?」
アルフレッドが真面目な顔で聞いてくる。
別にそんな事はなかったけど、口にすれば現実の記憶になってしまいそうで、今見た夢を説明するのが怖かった。
「あんまり高いところに行ったことがないから」
「そっか。悪かった」
シンは謝る兄の、その燃えるような赤い髪と瞳に見とれた。
真っ黒な記憶の中から抜け出して初めて見た兄の赤い髪と瞳の色が、シンの世界を鮮やかな色に染めていた。
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