赤い髪の騎士と黒い魔法使い

カム

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幕間(六年前)

1 黒の谷(sideジェイク)

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(六年前)

 黒の谷には暴風が吹き荒れていた。
 雨まじりの風は避難サークルの中にいる六人の身体を冷たく濡らす。防御力に優れた鎧もマントも雨に濡れてじっとりと重い。

 夜の闇に紛れて侵入するチームのメンバーは六人。たったの六人に最重要任務を課すというだけで、王宮の人手不足も知れるというものだ。それともそれだけこの六人が王宮に信頼されているという事だろうか。

「そろそろ時間か」

 そう口を開いたのはチームのリーダー、ダレン隊長だ。鬼のような性格の騎士隊長で、普段一緒にいるのは恐ろしいが、任務の時にはこれほど頼りになる人はいない。その騎士隊長は今までにないほど緊張した面持ちで、谷の奥にあるという館の方向を凝視していた。

「王宮からの指示はまだですが、どうしましょう」

 答えたのは一番下っ端の戦士マゴットだ。筋肉質で、鉄球を投げたり斧を振り回したりが得意のパワータイプの戦士だ。

「何か近づいてきます」

 魔法使いの一人が立ち上がって周囲を見回した。確か彼の名前はジオ、滅多にいない召喚師らしい。

 ジオは避難サークルの中央で陣をはっていた魔法使いを振り返った。
 このチームのリーダーはダレン隊長だが、隊長と同格の権限を持つ宮廷魔法使いが参戦していた。

「ジオの言う通り、何か近づいてるね。ここを目指している。ダレン、そろそろ行こうか」

 ユーシスというこの宮廷魔法使いは、確か俺より三才年上なのだが、宮廷魔法使い歴が長いので、同世代の戦士や魔法使いよりはるかに地位が高い。当然俺より上司だ。いわゆる天才という奴らしい。
 だが、こいつの天才ぶりは魔法バカの俺にも分かる。こいつが避難サークルとやらをはって以降、絶え間なかった魔物の襲撃がぴたりと止んだ。敵地のど真ん中にいて自宅のようにくつろげるとは思っていなかった。どうせなら雨と風も防いで欲しかったが。

「避難サークルの解除と共に防御、魔法防御を強化します」

 白いローブに身を包んだ魔法使い、今回のチームの中で唯一の女性であるセラが淡々と口を開いた。彼女は常に冷静だ。素顔は美人だと思うのに、分厚い眼鏡をかけて、いつも魔法書ばかり読んでいる。話しかけても睨まれるか無視される。自分がモテない事はよく理解しているが。

「それではこれから館への侵入を開始する。目的は……」
「反乱分子の殲滅」

 隊長が言いよどんだ言葉をユーシスが引き継いで、パチンと両手を合わせた。周囲を覆っていた何かが消えたのが、俺にも体感出来た。避難サークルが消えたのだろう。
 雨と風が強くなり、どこからか魔獣の咆吼のような叫び声が聞こえてきた。
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