56 / 92
実技試験
3 試験スタート
しおりを挟む
「君が治療士? 赤の魔法書なのに災難だな」
サイラス委員長に言われて、シンは本当は黒なんですけど、と言いたい気持ちを抑えた。
「回復魔法はほとんど使った事がないので、自信がありません。どのくらい回復出来るかも分からないし……」
「回復しなくてすむような戦い方をするのが一番だな。これはチーム戦の基本だが、メンバーがバラバラに行動するのだけはやめておけ。どれだけ能力が高くても、単独行動は今回の試験では評価されないし、治療士役なら全員の位置を把握しておかないと魔法が使えないからな。嫌いな奴がいても守備範囲内で戦った方がいい。チームのメンバーの能力を早い段階で見極めて、自分がどう動けばいいか考えるんだ」
「分かりました」
委員長の言葉に頷いたシンだったが、この後の実技試験で、どれだけその言葉の通りに行動するのが難しいか身をもって体験する事になるのだった。
***
実技試験の当日、シン達候補生は朝から門の前に整列して馬車を待っていた。それから大型の馬車に十人程度乗せられて都の外れまで移動だ。
かろうじて人が乗れるような内装になってはいたが、まるで荷物か、犯罪者を護送する馬車のようだとシンは不吉なことを考えた。
シンが会場に着いた時、試験が始まる森の前の広場にはすでに沢山の馬車が到着していて、学園の教師と騎士や魔法使い候補生が集まっていた。
広場は大型の柵で魔物の出る森と仕切られていて、四つほど各エリアに通じる門が見える。
シンは東エリアのスタート地点に移動して、チームの全員が到着するのを待った。
兄の姿をさがそうと思ったが遅かった。クラス順に馬車を使用したためか、北エリアに向かうAクラスの生徒のチームはすでに試験を開始しているらしい。
まだ来ないDクラスやEクラスのメンバーを待つ間、シンは荷物の確認をする事にした。
シンはカバンの中を昨日から嫌になる程確認していたし、忘れ物があってもいまさら取りに帰れないのだが、不安な気持ちをおさえるために何かしていないと落ち着かなかった。
シンの鞄の中には魔法書、それに傷薬、解毒薬、東エリアの地図、簡単な魔物辞典、学園から支給された紙とペンのセット、携帯できる保存食が入っていた。それらをもう一度確認する。兄のために何かお守りを作ってあげれば良かったとシンは後悔していた。それに自分も兄から何か貰いたい。そうすればもっと頑張れるような気がするから、試験が終わったら頼んでみようと思った。
集まった候補生達は、教師に名前をチェックされて注意事項を聞いた後、鍵のかかった門からエリアに入っていく。
試験は日没まで。当然先に入った方が有利だった。
シンのチームメンバーが全員集まり、門の前に移動する。シンにとって長く苦しい実技試験がスタートした。
サイラス委員長に言われて、シンは本当は黒なんですけど、と言いたい気持ちを抑えた。
「回復魔法はほとんど使った事がないので、自信がありません。どのくらい回復出来るかも分からないし……」
「回復しなくてすむような戦い方をするのが一番だな。これはチーム戦の基本だが、メンバーがバラバラに行動するのだけはやめておけ。どれだけ能力が高くても、単独行動は今回の試験では評価されないし、治療士役なら全員の位置を把握しておかないと魔法が使えないからな。嫌いな奴がいても守備範囲内で戦った方がいい。チームのメンバーの能力を早い段階で見極めて、自分がどう動けばいいか考えるんだ」
「分かりました」
委員長の言葉に頷いたシンだったが、この後の実技試験で、どれだけその言葉の通りに行動するのが難しいか身をもって体験する事になるのだった。
***
実技試験の当日、シン達候補生は朝から門の前に整列して馬車を待っていた。それから大型の馬車に十人程度乗せられて都の外れまで移動だ。
かろうじて人が乗れるような内装になってはいたが、まるで荷物か、犯罪者を護送する馬車のようだとシンは不吉なことを考えた。
シンが会場に着いた時、試験が始まる森の前の広場にはすでに沢山の馬車が到着していて、学園の教師と騎士や魔法使い候補生が集まっていた。
広場は大型の柵で魔物の出る森と仕切られていて、四つほど各エリアに通じる門が見える。
シンは東エリアのスタート地点に移動して、チームの全員が到着するのを待った。
兄の姿をさがそうと思ったが遅かった。クラス順に馬車を使用したためか、北エリアに向かうAクラスの生徒のチームはすでに試験を開始しているらしい。
まだ来ないDクラスやEクラスのメンバーを待つ間、シンは荷物の確認をする事にした。
シンはカバンの中を昨日から嫌になる程確認していたし、忘れ物があってもいまさら取りに帰れないのだが、不安な気持ちをおさえるために何かしていないと落ち着かなかった。
シンの鞄の中には魔法書、それに傷薬、解毒薬、東エリアの地図、簡単な魔物辞典、学園から支給された紙とペンのセット、携帯できる保存食が入っていた。それらをもう一度確認する。兄のために何かお守りを作ってあげれば良かったとシンは後悔していた。それに自分も兄から何か貰いたい。そうすればもっと頑張れるような気がするから、試験が終わったら頼んでみようと思った。
集まった候補生達は、教師に名前をチェックされて注意事項を聞いた後、鍵のかかった門からエリアに入っていく。
試験は日没まで。当然先に入った方が有利だった。
シンのチームメンバーが全員集まり、門の前に移動する。シンにとって長く苦しい実技試験がスタートした。
0
あなたにおすすめの小説
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
狼領主は俺を抱いて眠りたい
明樹
BL
王都から遠く離れた辺境の地に、狼様と呼ばれる城主がいた。狼のように鋭い目つきの怖い顔で、他人が近寄ろう者なら威嚇する怖い人なのだそうだ。実際、街に買い物に来る城に仕える騎士や使用人達が「とても厳しく怖い方だ」とよく話している。そんな城主といろんな場所で出会い、ついには、なぜか城へ連れていかれる主人公のリオ。リオは一人で旅をしているのだが、それには複雑な理由があるようで…。
素敵な表紙は前作に引き続き、えか様に描いて頂いております。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる