57 / 92
実技試験
4 治療担当
しおりを挟む
「なんだこいつら、ザコばっかりだな」
自称リーダーの騎士がそう言って、三匹目の魔物を倒す。それは小さな魔物で、鋭い牙と角があり凶暴な事をのぞけば他の動物とたいして変わらない。
東エリアに入ってしばらくは他のチームのメンバーもたくさんいたのに、三時間もすれば自分たち以外のチームの人間は誰も見なくなった。
これまでに倒した魔物は三匹。どれも同じ魔物だ。
すべてリーダーの騎士が何撃か剣を振るって倒したため、シンや同じチームのメンバーは何もしていない。
「たいしたレベルの魔物じゃねえな」
騎士の一人が魔物の身体の中から現れた魔法石を取り出して袋に入れた。
魔物はどんな魔物でも魔力の大きさによって体内に石を持っている。そこが普通の動物と違うところだ。そしてその石を取り出すまで決して安心はできない。骨になった魔物に魔法石を与えると再生するという噂まであるのだ。
この実技試験では、どれだけのレベルの魔物をどのくらいの数倒せたか魔法石の数で判断される。各チームに袋は一つ。誰がどれだけ活躍しようと、チーム全員の成果になる。
シンは魔物の死骸から目を背けたい気持ちでいっぱいだった。もともと血を見るのが苦手だ。自分の血でも、魔物の血でも。
交戦的なチームリーダーが、瀕死の魔物にトドメを刺す。魔物から流れ出す血を見て、自分は魔法使いにさえ向いていないんじゃないかと思い始めていた。
(シン、よくやった。しばらく自由にしてやる。美味いものも食わせてやろう。いい血をつくるためにな)
唐突に悪夢の中で言われた言葉を思い出し、身震いする。
あれは誰の言葉だっただろう。いい血というのはなんだったのだろう。夢の中で血のしたたる腕を舐められた感触まで思い出して血の気がひきそうだった。
「おい!」
「えっ?」
「お前、ぼーっとしてんじゃねえよ。聞いてないのか?」
「す、すみません」
目の前にチームリーダーが立っていた。悪夢を思い出して上の空だったシンに腕を突き出す。その腕には一筋の傷があり、赤い血が滲んでいた。
「あの……」
「さっさと回復しろよ。お前が治療担当だろうが」
シンは我にかえって魔法書を取り出した。
こんなかすり傷で……と内心思う。
アルフレッドは練習中にどれだけハードな傷を負っても平気な顔をしていた。この間カフェで会った時も、兄の両手には包帯が巻かれていた。実家にいた時でもセラさんに治療を頼む時はよほど酷い怪我の時だけだ。
それは兄が回復魔法は消耗品だという事を知っているからだ。魔法はほとんどが消耗品で、魔法書に覚えた魔法も、何度も使ううちに消えて無くなる。使用回数には個人差があり、何度使えば消えるのかは誰にも分からない。表紙の色と違う系統の魔法は特に使用回数が少ないらしい。だから魔法書の表紙が黒のシンにとって回復魔法は貴重品なのだ。
こんな男のかすり傷じゃなく、兄さんの傷を治してあげたかったとシンは思った。
「お前の魔法書、白じゃねえの?」
「あっ、はい。攻撃系の方が得意です」
「なんだよ。使えねえな。攻撃って、お前まだ何にもしてねえだろ。それでよく得意とか言うよな」
その場にいた騎士全員が笑った。シンは唇を噛み締めて男の腕を治療した。
自称リーダーの騎士がそう言って、三匹目の魔物を倒す。それは小さな魔物で、鋭い牙と角があり凶暴な事をのぞけば他の動物とたいして変わらない。
東エリアに入ってしばらくは他のチームのメンバーもたくさんいたのに、三時間もすれば自分たち以外のチームの人間は誰も見なくなった。
これまでに倒した魔物は三匹。どれも同じ魔物だ。
すべてリーダーの騎士が何撃か剣を振るって倒したため、シンや同じチームのメンバーは何もしていない。
「たいしたレベルの魔物じゃねえな」
騎士の一人が魔物の身体の中から現れた魔法石を取り出して袋に入れた。
魔物はどんな魔物でも魔力の大きさによって体内に石を持っている。そこが普通の動物と違うところだ。そしてその石を取り出すまで決して安心はできない。骨になった魔物に魔法石を与えると再生するという噂まであるのだ。
この実技試験では、どれだけのレベルの魔物をどのくらいの数倒せたか魔法石の数で判断される。各チームに袋は一つ。誰がどれだけ活躍しようと、チーム全員の成果になる。
シンは魔物の死骸から目を背けたい気持ちでいっぱいだった。もともと血を見るのが苦手だ。自分の血でも、魔物の血でも。
交戦的なチームリーダーが、瀕死の魔物にトドメを刺す。魔物から流れ出す血を見て、自分は魔法使いにさえ向いていないんじゃないかと思い始めていた。
(シン、よくやった。しばらく自由にしてやる。美味いものも食わせてやろう。いい血をつくるためにな)
唐突に悪夢の中で言われた言葉を思い出し、身震いする。
あれは誰の言葉だっただろう。いい血というのはなんだったのだろう。夢の中で血のしたたる腕を舐められた感触まで思い出して血の気がひきそうだった。
「おい!」
「えっ?」
「お前、ぼーっとしてんじゃねえよ。聞いてないのか?」
「す、すみません」
目の前にチームリーダーが立っていた。悪夢を思い出して上の空だったシンに腕を突き出す。その腕には一筋の傷があり、赤い血が滲んでいた。
「あの……」
「さっさと回復しろよ。お前が治療担当だろうが」
シンは我にかえって魔法書を取り出した。
こんなかすり傷で……と内心思う。
アルフレッドは練習中にどれだけハードな傷を負っても平気な顔をしていた。この間カフェで会った時も、兄の両手には包帯が巻かれていた。実家にいた時でもセラさんに治療を頼む時はよほど酷い怪我の時だけだ。
それは兄が回復魔法は消耗品だという事を知っているからだ。魔法はほとんどが消耗品で、魔法書に覚えた魔法も、何度も使ううちに消えて無くなる。使用回数には個人差があり、何度使えば消えるのかは誰にも分からない。表紙の色と違う系統の魔法は特に使用回数が少ないらしい。だから魔法書の表紙が黒のシンにとって回復魔法は貴重品なのだ。
こんな男のかすり傷じゃなく、兄さんの傷を治してあげたかったとシンは思った。
「お前の魔法書、白じゃねえの?」
「あっ、はい。攻撃系の方が得意です」
「なんだよ。使えねえな。攻撃って、お前まだ何にもしてねえだろ。それでよく得意とか言うよな」
その場にいた騎士全員が笑った。シンは唇を噛み締めて男の腕を治療した。
0
あなたにおすすめの小説
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
狼領主は俺を抱いて眠りたい
明樹
BL
王都から遠く離れた辺境の地に、狼様と呼ばれる城主がいた。狼のように鋭い目つきの怖い顔で、他人が近寄ろう者なら威嚇する怖い人なのだそうだ。実際、街に買い物に来る城に仕える騎士や使用人達が「とても厳しく怖い方だ」とよく話している。そんな城主といろんな場所で出会い、ついには、なぜか城へ連れていかれる主人公のリオ。リオは一人で旅をしているのだが、それには複雑な理由があるようで…。
素敵な表紙は前作に引き続き、えか様に描いて頂いております。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる