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火曜日、午後3時(ラウル編)
5 動物は自分が思うより頭がいい
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俺はオッサンからケビンの一日分の餌の入った袋と、木製の水筒を手渡され、ケビンの世話について簡単にレクチャーを受けた。
それが済むと、オッサンは今度はケビンの頭を撫でて、俺の面倒を見るように頼んだ。
「兄ちゃんを王都までよろしくな」
「ケビン、よろしく」
ケビンは鼻を鳴らして返事をする。その横顔は、任せておけ、と言っているように見える。頼もしい……。
『お世話になりました!!』
辛気臭い顔は止めて、オッサンに明るく言うと、俺は深々と頭を下げた。
「おう!気にするな。時間がないから早く行け」
ケビンは少し名残惜しそうにオッサンとメアリーを見ていたが、すぐに向きを変えて歩き始めた。
『ありがとう、オッサン!』
メアリーにまたがってタバコをふかしているオッサンは、遠目から見てもやっぱりかっこよかった。叫びながら、ちらっと、オッサンの名前を聞いておけば良かったと思った。
***
歩き始めてしばらくすると、西の空に残っていたかすかな明るさも消え失せ、辺りが暗闇に包まれていった。
……夜、歩くのは危険だって桃花村の人達が言ってなかっただろうか。
道の周囲には草原が広がっていて、遠くにぽつぽつと岩山や木々が存在しているのが見えるけど、街のような灯りは一切見えない。
寒くなってきたので、俺は回収していた裾がぼろぼろのTシャツを着る事にした。幸いもう乾いていたので(槍はオッサンに返したので持っていない)上から木こりベストを着て、さらにオッサンに借りたマントをはおってみた。
つなぎと同じ、オッサンのタバコの匂いがする。ラウルが嗅いだら怒りそうだ。
「ケビンが一緒で良かったよ」
声に出して言ってみる。
道は整備されてても、暗いと怖い。もともと幽霊とか大嫌いだし、ピンク花や花カブトみたいな変な動植物がいる世界だからな。昼間は楽天的な思考で楽しく生きてる俺だが、夜はかなりのビビりになる。それはもう別人並みにだ。
「ケビン、頼りにしてるからな!危険な事から俺を守ってくれよな」
そう言って俺はケビンの首にしがみついた。
ケビンと俺はもくもくと夜の道を進んで行った。
歩いている途中で一回、何かの動物とすれ違った。ケビンが足を止め、道の脇に避けたのでぶつかる事はなかったけど、その動物はけっこうなスピードで横を通りすぎて行った。何かの大型動物とそれに騎乗する人間。シルエットしか見えなかったので怖さも倍増だ。あんなにスピードの出る動物もいるんだな。絡まれなくて良かった。
しばらく歩いたところでケビンが道から外れた。
「ケビン?」
草原に足を踏み入れ、鼻を鳴らして何かを探しているようだ。それが何かはすぐに分かった。
少し道からそれた場所に、湧き水が出ている場所を見つけた。ケビンは俺を下ろすと、美味しそうに水を飲みはじめ、満足するとじっと俺の顔を見た。餌をくれの合図だ。
俺はリュックからケビンの餌を取りだし、口元に持って行った。どうみても美味しそうに見えない餌だが、ケビンは美味しそうに食べている。
餌を食べ終わると近くの岩にもたれるように寝そべった。もう寝ますの合図だ。
オッサンが言うにはケビンは睡眠を邪魔されるのが何より嫌いらしい。無理に起こして歩かせようとすると置いて行かれる可能性大だそうだ。つまり、俺もここで野宿決定という事になる。
怖いな……。
でもケビンがいるからマシか。できるだけくっついて寝よう。
リュックから桃花村のお母さんにもらった保存食を取り出して俺も質素な夕食を取る事にした。
今日の夕食はクッキーと固い肉と水筒の水だ。お母さんには感謝だけど、全然足りない。
俺は空腹を水でごまかし、水筒に水を継ぎ足した。次の街におにぎりとか売ってないかな。無性に米が食べたい。せめてお米みたいな物がないか聞いてみよう。
水を汲んで、眠っているケビンのもとに戻ろうとした時、その灯りが見えた。
それが済むと、オッサンは今度はケビンの頭を撫でて、俺の面倒を見るように頼んだ。
「兄ちゃんを王都までよろしくな」
「ケビン、よろしく」
ケビンは鼻を鳴らして返事をする。その横顔は、任せておけ、と言っているように見える。頼もしい……。
『お世話になりました!!』
辛気臭い顔は止めて、オッサンに明るく言うと、俺は深々と頭を下げた。
「おう!気にするな。時間がないから早く行け」
ケビンは少し名残惜しそうにオッサンとメアリーを見ていたが、すぐに向きを変えて歩き始めた。
『ありがとう、オッサン!』
メアリーにまたがってタバコをふかしているオッサンは、遠目から見てもやっぱりかっこよかった。叫びながら、ちらっと、オッサンの名前を聞いておけば良かったと思った。
***
歩き始めてしばらくすると、西の空に残っていたかすかな明るさも消え失せ、辺りが暗闇に包まれていった。
……夜、歩くのは危険だって桃花村の人達が言ってなかっただろうか。
道の周囲には草原が広がっていて、遠くにぽつぽつと岩山や木々が存在しているのが見えるけど、街のような灯りは一切見えない。
寒くなってきたので、俺は回収していた裾がぼろぼろのTシャツを着る事にした。幸いもう乾いていたので(槍はオッサンに返したので持っていない)上から木こりベストを着て、さらにオッサンに借りたマントをはおってみた。
つなぎと同じ、オッサンのタバコの匂いがする。ラウルが嗅いだら怒りそうだ。
「ケビンが一緒で良かったよ」
声に出して言ってみる。
道は整備されてても、暗いと怖い。もともと幽霊とか大嫌いだし、ピンク花や花カブトみたいな変な動植物がいる世界だからな。昼間は楽天的な思考で楽しく生きてる俺だが、夜はかなりのビビりになる。それはもう別人並みにだ。
「ケビン、頼りにしてるからな!危険な事から俺を守ってくれよな」
そう言って俺はケビンの首にしがみついた。
ケビンと俺はもくもくと夜の道を進んで行った。
歩いている途中で一回、何かの動物とすれ違った。ケビンが足を止め、道の脇に避けたのでぶつかる事はなかったけど、その動物はけっこうなスピードで横を通りすぎて行った。何かの大型動物とそれに騎乗する人間。シルエットしか見えなかったので怖さも倍増だ。あんなにスピードの出る動物もいるんだな。絡まれなくて良かった。
しばらく歩いたところでケビンが道から外れた。
「ケビン?」
草原に足を踏み入れ、鼻を鳴らして何かを探しているようだ。それが何かはすぐに分かった。
少し道からそれた場所に、湧き水が出ている場所を見つけた。ケビンは俺を下ろすと、美味しそうに水を飲みはじめ、満足するとじっと俺の顔を見た。餌をくれの合図だ。
俺はリュックからケビンの餌を取りだし、口元に持って行った。どうみても美味しそうに見えない餌だが、ケビンは美味しそうに食べている。
餌を食べ終わると近くの岩にもたれるように寝そべった。もう寝ますの合図だ。
オッサンが言うにはケビンは睡眠を邪魔されるのが何より嫌いらしい。無理に起こして歩かせようとすると置いて行かれる可能性大だそうだ。つまり、俺もここで野宿決定という事になる。
怖いな……。
でもケビンがいるからマシか。できるだけくっついて寝よう。
リュックから桃花村のお母さんにもらった保存食を取り出して俺も質素な夕食を取る事にした。
今日の夕食はクッキーと固い肉と水筒の水だ。お母さんには感謝だけど、全然足りない。
俺は空腹を水でごまかし、水筒に水を継ぎ足した。次の街におにぎりとか売ってないかな。無性に米が食べたい。せめてお米みたいな物がないか聞いてみよう。
水を汲んで、眠っているケビンのもとに戻ろうとした時、その灯りが見えた。
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