One week

カム

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金曜日、午後1時(レヴィン編)

9 お使い

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『初めまして。あなたは誰ですか?私は忙しいので、知らない人に構っている時間はありません。それでは失礼します』

「待て」

 ヒィィ。
 捨て身で知らないふりをしたけどやっぱり通用しなかった。
 逃げたいのに、盗賊のアニキにがっちり体を押さえつけられていて身動き取れない。いや、それ以前に人が多すぎて身動き取れないんだけど。

「お前やっぱり面白れぇな」
『ありがとうございます』

 面白いって……顔が笑ってないぞ。
 真顔怖い。
 盗賊のアニキは俺の耳元に顔を近づけると、ドスの利いた声で
「お前、人殺したことあるか?」
と囁いた。

 ヒィィ。
 誰か助けてくれ!目の前でマジックショーに歓声を上げている奴らが羨ましい。俺もさっきまでは呑気に歓声を上げていたのに!
 十八年間まっとうに生きてきたんだぞ。人殺しなんてした事ある訳ないだろ。俺のやった最大の暴力といえば、ゾンビをフライパンで殴った事だけだ。

 ブンブン首を振って
『ないです。ごめんなさい』
と謝ると、アニキは笑った。
 笑わなくても怖いが、笑っても怖い。

「だろうな。顔を見れば分かる。 お前は友達を庇うくらい優しいやつだからな」

 そう言いながらなでなでしてくるのがお尻なんですが。逆らったら殺されそうだからひたすら耐える。

「性格も面白ぇし、俺から黙って逃げた事は許してやるから……」

 良かった。よくわからない理屈だけど許された。

「……今日から俺のペットになれ」

 え?ペット?

 わあっ、と一際大きな歓声が上がり、マジックショーは佳境に入った。派手な演出のショーなのに全然頭に入ってこない。

『ペットって……』

 アニキの手が、俺の服の内側に進入してくる。肌の上をゆっくりと撫でられて心臓が跳ねた。砦で首筋にナイフを突き付けられた事を思い出して背中に震えが走る。

「返事は?」
「……ワン」
「……なんだそれは」

 日本語なので通用しなかった。
 ペットとか絶対に嫌だけど、はっきり嫌と言う勇気もない俺。相手は盗賊だ。怒らせたら何をするか分からない。

「まあいい。お前が逆らったら、お前の大好きなお友達のあいつ、確か石工の街のリックだったか?あいつをペットにするからな」
「……!」

 失敗した。
 俺が砦でやるべき事は、逃げ出すことじゃなくて、兵士に相談してこいつを捕まえる事だったんだ。今さら後悔しても遅いけど。

『リックは関係ありません』

 勇気を出して睨むと、アニキは少し嬉しそうな顔をした。

「お前を躾けるのは楽しそうだな」

 ヒィィ。勇気が一秒で萎えた。

***

 読めない文字のラベルが貼られた瓶がずらりと並んだ棚の前で、俺は手に持っている瓶と同じものを探していた。

「何かお探しかい?」

 小さな眼鏡をかけた店主のおじさんが声をかけてきて、無駄に緊張が走る。

『っ、これと……同じ物、ください』

 手にしている瓶を見せると、店主は眼鏡をずらしてラベルの文字を読んだ。

「これは痛み止めの薬だね。在庫はあるけど、少し高価だよ」
『……これで足りますか?』

 俺はのろのろと、背負っていたリュックからお金を取り出した。

「これだけいただくよ」

 おじさんは俺の持っていた異世界のお金の大部分を取り、茶色と赤色の硬貨を数枚返してくれた。
 ケビンに高い餌を買ってあげようと思っていたのに。
 おじさんが瓶を紙袋に包んでくれるのを見ながら、ぼんやりとそんな事を思う。

「はい、これ。君どこか痛いのかい?顔が赤いけど」
「え!?」

 聞かれてドキリとする。

『だ、大丈夫です……ありがとう、ございました』
「痛みがひどかったら病院に行くんだよ。王都には腕のいい魔法使いの医者がいるから」
『……はい』

 親切な店主のおじさんに頭を下げ、俺はゆっくりと店を出た。

 ここは道の駅のメインストリートから外れた路地裏にある店だ。
 俺は店の壁にもたれて息をつく。メインストリートではマジックショーが終わって、次は珍しい動物達のショーがあるらしい。
 観光客は次のショーを見るためにメインストリートに集まっているから、路地裏にはほとんど人がいなかった。

「ああ……もう」

 誰もいないのを確認して、俺は服の上から自分の股間を押さえて座りこんだ。
ぎゅうと握ると、電流が流れているような快感が断続的に伝わってくる。
 本当はズボンを脱いでひたすら扱きたいのだけど、道ばたでそんな事をする訳にはいかなかった。なんとか立ち上がって、壁に手をついてヨロヨロと進む。

 こんな事になったのも、すべては変態エロアニキのせいだ。
 マジックショーが終わる少し前に、盗賊のアニキがペットへのプレゼントと称してとんでもないものを俺にくれた。

「これはな、砂ワニの内臓と紫斑花の蜜を角馬の角でコーティングしたものだ。お前に飲ませた薬より効き目は薄いが、使えば何度でも快感が味わえるし、角馬の角が溶けるまで効果が持続する。嬉しいだろ」

 そんな恐ろしい説明とともに見せられた、大きめの弾丸によく似たそれを、アニキは無理矢理俺のお尻に突っ込んだのだ。
 俺の悲鳴はマジックショーの歓声にかき消された。

「……くそーっ」

 確かに、前回飲んだ薬より効き目は薄い(前回は発狂するかと思った)
 でも、座薬より大きめのボディが中をじわじわと刺激して、体は熱くなるしムスコは元気になるし、服が擦れるだけで気持ちいい。
 動くたびにうっかり声が出そうになるのに、刺激が微妙すぎてイクほどでもない。結果として蛇の生殺しのような快感がだらだらと続くのだ。

 そんな俺にお使いを頼むとか……アニキは本当に鬼畜だ。
 どこからか俺を見て笑ってると思っていたけど、路地裏にはアニキの姿は見えなかった。

 俺は壁に手をついて息を整えながら、今のうちに兵士に助けを求めようか、それとも先にトイレで扱くべきか真剣に悩んだ。
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