転生したら神子さまと呼ばれています

カム

文字の大きさ
25 / 112
ep.1目覚め

7 アルバートに同情

しおりを挟む
 ずっと眠っていたから胃にやさしそうなスープを最初に飲むことにした。病院で飲んでいたスープよりずっと美味しくて身体にしみわたる。お肉も柔らかくて、ソースは見た目より味が濃くない。果物も瑞々しくてとれたてみたいな新鮮さだ。神子さまの身体って本当に健康なんだな。

「美味しい」

 夢中になって食べていたので、少し離れた場所に人だかりができているのに気づかなかった。顔を上げるとキリアン司祭さまやエリンと同じ服を着た大勢の男の人がくいいるようにこっちを見ている。食べ方、汚かったかな。マナーとか何も気にしてなかった。

「かなめ様、口元が汚れていますよ」
「ありがとう」

 シリンが口元を柔らかい布で拭いてくれる。

「みんなあんな所で何してるんだろう」
「神子さまのお姿を少しでも長く見ていたいのです」
「みんなも一緒に食べたらいいのに」
「神子さまと一緒に食事をとることは一神官には許されていません。本来ならお姿を見られるだけでも幸運なのです。かなめ様が気になるようでしたら追い払いますよ」
「いや、それはしなくていいよ」

 今までずっと眠っていた人が起きたんだから、きっと珍しいんだろうな。有名人ってこんな感じなのか。

 残さないように食べようと思ったのに、あまりに品数が多くて半分も食べられなかった。

「ごめん。もうお腹いっぱい。残りは明日食べるよ」
「いえ、神子さまに料理を召し上がっていただけただけでも私は……」

 料理長が感極まっているので、シリンとエリンにお願いして料理を下げてもらった。代わりに温かい飲み物がティーポットみたいな陶器に入れられて運ばれてくる。エルトリアで飲まれているお茶みたいだ。少し花の香りがする。

 お腹が満たされたので、下の様子を眺める。アルバートは俺が食べてる間もずっと誰かと話したり、乾杯してお酒を飲んでる。あんなに飲んで大丈夫かな。やっぱり俺も行った方がいいんだろうか。

「かなめ様、気に入った者がいれば呼びましょうか?」
「えっ?」

 エリンが大真面目な顔で告げる。ここに呼ぶってことか? 面食らっていると、シリンもそばに来て小声で続けた。

「もしアルバート殿が気に入らなければ、私たちに仰ってくださいね。いくらでも代わりの者がいますから」

 アルバートが気に入らなければ、って今日結婚した相手じゃないのか? 気に入らなければ即離婚ってこと?

「二人ともかなめ様が困っておられる。変なことを吹き込むんじゃない」

 キリアン司祭様がそばに来てお茶を注いでくれた。

「かなめ様は長い間眠っておられたので、国が独断で占術師を通して最適な結婚相手、つまりアルバート殿をお探しいたしました。結果としてかなめ様は長い眠りから目覚められたので、この結婚が上手く行ったことは間違いありません。ですが、かなめ様はびっくりなさったことでしょう。もしもアルバート様にご不満がおありなら、遠慮なく私どもにお申し付けください。我々神官は全てかなめ様の味方です」

「うん。ありがとう……」

 複雑な気分になったけど、とりあえずお礼を言っておいた。ご不満もなにも、アルバートはさっき会ったばかりで性格もほとんど知らない。二人っきりの時とみんなの前で性格が違うことくらいしか。

「アルバートが俺を不満に思うことはないかな」

 軽く聞いてみただけなのに、みんな大袈裟に首を振った。

「そのようなこと絶対にありません!」
「美しく神聖な神子さまと結婚できるなど最高に名誉なことです! 神殿には神子さまと結婚したいという方の嘆願書が殺到していたのですよ!」
「聖騎士は神子さまの盾のようなもの。不満を持つなんて不敬にもほどがあります!」

「わ、分かったよ。もう言わない」

 なんだかアルバートに同情したい気分になってきた。

 しばらく一階の楽しそうな雰囲気を眺めてお茶を飲んでから、俺の要望でこの神殿を散歩させてもらう事にした。建物の他の部分や、外の景色も見てみたい。それに自分の足がどこまで歩いても根を上げないから、地面の上を思い切り走ってみたくなった。
 でもこの要望は却下された。今日は結婚式で来賓の数が多いから庭の散歩はやめた方がいいそうだ。代わりに俺の部屋の外にあるテラスと屋上庭園に行くことになった。屋上からエルトリアの街の風景も見えるみたいだ。考えただけでわくわくする。

「護衛としてアルバートを呼び戻しましょう」
「いいよ。少し散歩するだけだから」
「いいえ、護衛のための結婚相手です。ちゃんと仕事をしてもらわなければ」

 神官たちが口を揃えていうのを聞いて、やっぱりアルバートに同情したくなった。
しおりを挟む
感想 244

あなたにおすすめの小説

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

後宮に咲く美しき寵后

不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。 フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。 そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。 縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。 ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。 情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。 狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。 縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。

処理中です...