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ep6.王族と神子
4 八百年後
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***
「カナ……カナ」
ぎゅうっとアルの服を掴んで泣いていたら、頬を触る気配がした。それからぷにぷにと頬を摘まれる。
「起きろ」
起きろ……?
不思議に思って目を開けると、アルが俺の顔を覗き込んでいた。いつの間にか横たわってる。そんな俺の身体に腕をまわして、アルが俺を見つめてる。暗闇だけど、二人の周辺だけぼんやりした光に照らされてる。
アルの顔に傷がない。それが不思議でそっと頬に触れる。俺が治したのかな。でも傷痕を完全に消すことは俺にもできない。
額から頬にかけてなぞって、指を耳たぶに移動させる。俺のあげた耳飾りじゃない。すごく似ているけど、魔力の込められていない銀色の飾り。
「アルバート……?」
八百年後だ。
八百年後のイルケデニアス。目の前にいるのは幼なじみのアルじゃなくて、聖騎士のアルバート。俺の結婚相手。びっくりするくらい成長したアルに似てる。傷はないし髪の毛はサラサラで肌も綺麗だけど、顔立ちはそっくりだ。声も仕草も全部似てる。
「アル……」
ぎゅっとしがみついて、もう一度アルバートの体温を確かめる。今まで見ていた鮮明な夢のせいで孤独に押しつぶされそうだった。
「過去の夢でも見てたのか」
「うん」
「よしよし。落ち着け」
アルバートがぐしゃぐしゃと髪を撫でてくれるから恐怖が少しだけ薄れた。良かった。アルバートがいてくれて良かった。あの時の辛い気持ちを抱えたまま、目覚めて一人だったら耐えられなかった。
しばらくアルバートに撫でてもらってなんとか落ち着いた。
「ありがとう。もう大丈夫」
「冷たい地面に寝るのがよくないんだろうな。明日から考えないとな」
アルバートが俺を自分の膝の上に抱えあげて、変なことを呟いてる。
「別に地面のせいじゃないと思うよ」
「いや、冷たくて硬い場所で寝るのはよくない。明日からは俺の上で寝るか」
「そ、それはちょっと……」
アルに似ているアルバートだけど、一つだけ違うところがある。アルバートは護衛だったアルよりエロい。アルとは一度しかキスしてないのに、アルバートは出会ったその日から濃厚なキスをしてきたし。それとも結婚相手だからそういう態度なだけで、護衛のアルもそういうこと考えてたのかな。
「そう心配するな。そろそろこの暗い地下道から出られるから、今日泊まるところはもっとマシな場所になるはずだ」
「本当?」
「まあ、ベッドでも俺の上に寝てもいいけどな」
「アル……!」
「何だよ。俺が大好きなんじゃなかったのか?」
「それとこれとは別! って、うわ!」
アルが服の上からお尻をモミモミしてきて、焦って慌てて距離をとった。アルバートは笑ってる。
「怒るよ!」
「そうだな。怒ってる方が泣いてるよりいい。お前は泣きすぎだ。目が腫れるぞ」
「……」
アルバートはずるい。怒ろうと思ったのに、優しくされるとそれ以上怒れない。心があったかくなって、辛い気持ちが少し楽になった。
***
近くの川で顔を洗って水を飲む。昨日自警団の団長に分けてもらった食料をアルバートと二人で胃におさめていると、おもちが飛んで帰ってきた。
「おもち、どこかに行ってたの?」
「ピィ」
おもちはまた何か咥えてた。金色に光る何かだ。ブレスレットに見える。
「これは前回と同じ、サデの装飾品だな。今回のはかなり高価だ」
「さすがに貰えないよ。おもち、これどこから持ってきたの? 返してくるよ」
「いや、やめた方がいい」
「どうして?」
「どう見ても王族か貴族の持ち物だ。関わるとろくなことがない。オモチ、お前これは自分で返してこい。分かったな」
おもちは目を細めてアルバートを見た(ような気がする)あと、俺の顔をじっと見つめる。もしかして指示を待ってるのかな。
「ごめんね、おもち。これ返してきて。怖そうな人だったらすぐ飛んで逃げるんだよ」
「ピィ」
おもちは金のブレスレットを咥えて飛び立った。
「あいつ、ゼフィーより賢いのは確かだな」
ロバみたいな馬に餌をあげて、俺とアルバートも出発することにした。
おもちが飛び立った方向に馬を進める。遠くで鐘の音が響いた。時刻を知らせる一度だけ。魔物はあれから出ていないみたいでホッとする。
「あと半日も進めば、おそらく地下道の出口があるはずだ。ようやく陽の光を拝めるな」
「うん。でも、おもちが合流してから出てね」
「分かったよ」
たった数日しか離れていないはずなのに、もうずっとエルトリアに帰っていないみたいだ。懐かしいみんなに早く会いたい。
「カナ……カナ」
ぎゅうっとアルの服を掴んで泣いていたら、頬を触る気配がした。それからぷにぷにと頬を摘まれる。
「起きろ」
起きろ……?
不思議に思って目を開けると、アルが俺の顔を覗き込んでいた。いつの間にか横たわってる。そんな俺の身体に腕をまわして、アルが俺を見つめてる。暗闇だけど、二人の周辺だけぼんやりした光に照らされてる。
アルの顔に傷がない。それが不思議でそっと頬に触れる。俺が治したのかな。でも傷痕を完全に消すことは俺にもできない。
額から頬にかけてなぞって、指を耳たぶに移動させる。俺のあげた耳飾りじゃない。すごく似ているけど、魔力の込められていない銀色の飾り。
「アルバート……?」
八百年後だ。
八百年後のイルケデニアス。目の前にいるのは幼なじみのアルじゃなくて、聖騎士のアルバート。俺の結婚相手。びっくりするくらい成長したアルに似てる。傷はないし髪の毛はサラサラで肌も綺麗だけど、顔立ちはそっくりだ。声も仕草も全部似てる。
「アル……」
ぎゅっとしがみついて、もう一度アルバートの体温を確かめる。今まで見ていた鮮明な夢のせいで孤独に押しつぶされそうだった。
「過去の夢でも見てたのか」
「うん」
「よしよし。落ち着け」
アルバートがぐしゃぐしゃと髪を撫でてくれるから恐怖が少しだけ薄れた。良かった。アルバートがいてくれて良かった。あの時の辛い気持ちを抱えたまま、目覚めて一人だったら耐えられなかった。
しばらくアルバートに撫でてもらってなんとか落ち着いた。
「ありがとう。もう大丈夫」
「冷たい地面に寝るのがよくないんだろうな。明日から考えないとな」
アルバートが俺を自分の膝の上に抱えあげて、変なことを呟いてる。
「別に地面のせいじゃないと思うよ」
「いや、冷たくて硬い場所で寝るのはよくない。明日からは俺の上で寝るか」
「そ、それはちょっと……」
アルに似ているアルバートだけど、一つだけ違うところがある。アルバートは護衛だったアルよりエロい。アルとは一度しかキスしてないのに、アルバートは出会ったその日から濃厚なキスをしてきたし。それとも結婚相手だからそういう態度なだけで、護衛のアルもそういうこと考えてたのかな。
「そう心配するな。そろそろこの暗い地下道から出られるから、今日泊まるところはもっとマシな場所になるはずだ」
「本当?」
「まあ、ベッドでも俺の上に寝てもいいけどな」
「アル……!」
「何だよ。俺が大好きなんじゃなかったのか?」
「それとこれとは別! って、うわ!」
アルが服の上からお尻をモミモミしてきて、焦って慌てて距離をとった。アルバートは笑ってる。
「怒るよ!」
「そうだな。怒ってる方が泣いてるよりいい。お前は泣きすぎだ。目が腫れるぞ」
「……」
アルバートはずるい。怒ろうと思ったのに、優しくされるとそれ以上怒れない。心があったかくなって、辛い気持ちが少し楽になった。
***
近くの川で顔を洗って水を飲む。昨日自警団の団長に分けてもらった食料をアルバートと二人で胃におさめていると、おもちが飛んで帰ってきた。
「おもち、どこかに行ってたの?」
「ピィ」
おもちはまた何か咥えてた。金色に光る何かだ。ブレスレットに見える。
「これは前回と同じ、サデの装飾品だな。今回のはかなり高価だ」
「さすがに貰えないよ。おもち、これどこから持ってきたの? 返してくるよ」
「いや、やめた方がいい」
「どうして?」
「どう見ても王族か貴族の持ち物だ。関わるとろくなことがない。オモチ、お前これは自分で返してこい。分かったな」
おもちは目を細めてアルバートを見た(ような気がする)あと、俺の顔をじっと見つめる。もしかして指示を待ってるのかな。
「ごめんね、おもち。これ返してきて。怖そうな人だったらすぐ飛んで逃げるんだよ」
「ピィ」
おもちは金のブレスレットを咥えて飛び立った。
「あいつ、ゼフィーより賢いのは確かだな」
ロバみたいな馬に餌をあげて、俺とアルバートも出発することにした。
おもちが飛び立った方向に馬を進める。遠くで鐘の音が響いた。時刻を知らせる一度だけ。魔物はあれから出ていないみたいでホッとする。
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