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ep6.王族と神子
5 占術師
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ロバみたいな馬に揺られて進む。夢の中のアルの言葉や仕草を何度もリピートしては涙ぐみ、現実のアルバートの体温に安心しているうちに二回目の鐘が聞こえた。
しばらくしてアルバートが馬を止める。数メートル先に古くなった看板と枝分かれした洞窟の入り口が見える。
「この先の道がエルトリア出口だな。だが……」
アルバートが言葉を濁した。言いたいことは分かる。
出口に続く細い洞窟の前に、フードを深く被った知らない人が数人立ってる。あの人達を素通りして出口に向かうのは無理みたいだ。
自警団にもイルケデニアスの住民にも見えない。杖や武器を手にしてる。呪術師の黒い衣装じゃないけど、魔法使いなら油断できない。
「あっ、おもち……」
ガルーダのおもちが杖を持った人の肩に乗っていた。餌をもらってる。
「あいつ、誰にでも餌付けされてるな」
なんとなくショックを受けていると、おもちを肩に乗せたマント姿の人物が俺たちを見つけてこちらへ歩いてきた。
「エルトリアの神子さまですね」
フードを脱ぐとまだ若い女性だった。額に模様を描き、髪を複雑に編み込んでいる。アルバートが俺の後ろで
「占術師か」と呟いた。
「お初にお目にかかります。私はサデの占術師のヴィカ。エルトリアの神子さまがお目覚めになり、ここを通る予見を授かりましたのでお待ちしておりました」
「初めまして、ヴィカさん。俺に何か用でしょうか?」
「予見通り、とてもお美しい方ですね。それに魔力も大陸一と言っても差し支えないほど。あなた様は神々に愛されていらっしゃるのでしょう」
そんな言葉を聞いて少し悲しくなった。辛いことばかりの前世だったのに、神様に愛されているなんて思えない。
「そんなことは……」
「神子さま、サデのことはご存知ですね。国はほぼ闇にのまれ、王族たちはここイルケデニアスに避難しております。エルトリアの神子さまにお願いがございます。王の体調を診ていただきたいのです」
「王様……」
八百年前にエルトリアの王様から何度も召集されたことを思い出し、身体が震えた。
「申し訳ないが、サデの国のことは自国民だけで対処してもらえないだろうか。神子はいなくても神官くらいいるだろう。我々も追われているし、神子さまは魔力を使いすぎて疲弊されている。正式な依頼なら我々が国に戻ったあと、大神殿を通してもらえれば検討する」
アルバートが断ってもヴィカさんは動じなかった。
「神子さまは慈愛の象徴のはず。サデの王は命の危険に晒されております。お見捨てになるのですか?」
「命の危険に晒されているのはこちらも同じだ。それもサデの国の呪術者集団が原因だ。神子さまに助けを求める前に、自国の呪術者をとうにかしてくれないか」
アルバートが言うと、ヴィカさんの後ろにいた数人が俺たちを取り囲んだ。それぞれ剣や杖を構えている。
「私どもも呪術師には苦しめられております。いわば呪術師は共通の敵。手を組むのは悪いことではないと思いますが。お願いを聞いていただければ私の予見をお聞かせいたします」
アルバートが耳元で囁く。
「カナ、あの動けない魔法を使って突破するのと、従うふりをして隙をみて逃げるのとどちらにする?」
「おもちが従ってるし……王様がどのくらい怪我をしているのか分からないからとりあえず会ってみるよ。変な人たちなら隙を見て逃げる」
「やれやれ。お前は神子の鑑だな」
洞窟の出口まであと少しだったけど、俺たちはヴィカさんとサデの兵士たちについて行くことにした。
移動中、おもちが飛んできて俺の肩にとまる。
「ピィ」
「お前、餌をもらったからって誰にでもついて行くな。お前のせいで面倒なことになったぞ」
おもちはアルバートの言葉を無視して俺のポケットに潜り込んだ。
「おもちが持っていたサデの飾りって、王様かヴィカさんのだったんじゃないの?」
「やはり換金するべきだったな」
***
サデの王様がいたのは洞窟の中なのに草原のように植物がたくさん生えた場所だった。場所はエルトリア出口から近いけど、主要な通路からは少し外れていて見つけにくい場所にある。ヴィカさんが魔法で結界を作っていて、そこを通り抜けるとテントが複数建てられた野営地のような場所が現れた。馬や護衛の兵士達がテントの周りを取り囲んでいる。
兵士だけじゃなく、大人も子供もいる。みんな元気がなくて疲れているけど、占術師を見て礼をとった。
中央の一番大きなテントまで来ると、俺とアルバートは馬をおりた。
「王様、エルトリアの神子さまをお連れしました」
「ご苦労だった。入ってくれ」
王様の声、思ったより若い気がする。テントに入った俺は王様の姿を見て絶句した。
しばらくしてアルバートが馬を止める。数メートル先に古くなった看板と枝分かれした洞窟の入り口が見える。
「この先の道がエルトリア出口だな。だが……」
アルバートが言葉を濁した。言いたいことは分かる。
出口に続く細い洞窟の前に、フードを深く被った知らない人が数人立ってる。あの人達を素通りして出口に向かうのは無理みたいだ。
自警団にもイルケデニアスの住民にも見えない。杖や武器を手にしてる。呪術師の黒い衣装じゃないけど、魔法使いなら油断できない。
「あっ、おもち……」
ガルーダのおもちが杖を持った人の肩に乗っていた。餌をもらってる。
「あいつ、誰にでも餌付けされてるな」
なんとなくショックを受けていると、おもちを肩に乗せたマント姿の人物が俺たちを見つけてこちらへ歩いてきた。
「エルトリアの神子さまですね」
フードを脱ぐとまだ若い女性だった。額に模様を描き、髪を複雑に編み込んでいる。アルバートが俺の後ろで
「占術師か」と呟いた。
「お初にお目にかかります。私はサデの占術師のヴィカ。エルトリアの神子さまがお目覚めになり、ここを通る予見を授かりましたのでお待ちしておりました」
「初めまして、ヴィカさん。俺に何か用でしょうか?」
「予見通り、とてもお美しい方ですね。それに魔力も大陸一と言っても差し支えないほど。あなた様は神々に愛されていらっしゃるのでしょう」
そんな言葉を聞いて少し悲しくなった。辛いことばかりの前世だったのに、神様に愛されているなんて思えない。
「そんなことは……」
「神子さま、サデのことはご存知ですね。国はほぼ闇にのまれ、王族たちはここイルケデニアスに避難しております。エルトリアの神子さまにお願いがございます。王の体調を診ていただきたいのです」
「王様……」
八百年前にエルトリアの王様から何度も召集されたことを思い出し、身体が震えた。
「申し訳ないが、サデの国のことは自国民だけで対処してもらえないだろうか。神子はいなくても神官くらいいるだろう。我々も追われているし、神子さまは魔力を使いすぎて疲弊されている。正式な依頼なら我々が国に戻ったあと、大神殿を通してもらえれば検討する」
アルバートが断ってもヴィカさんは動じなかった。
「神子さまは慈愛の象徴のはず。サデの王は命の危険に晒されております。お見捨てになるのですか?」
「命の危険に晒されているのはこちらも同じだ。それもサデの国の呪術者集団が原因だ。神子さまに助けを求める前に、自国の呪術者をとうにかしてくれないか」
アルバートが言うと、ヴィカさんの後ろにいた数人が俺たちを取り囲んだ。それぞれ剣や杖を構えている。
「私どもも呪術師には苦しめられております。いわば呪術師は共通の敵。手を組むのは悪いことではないと思いますが。お願いを聞いていただければ私の予見をお聞かせいたします」
アルバートが耳元で囁く。
「カナ、あの動けない魔法を使って突破するのと、従うふりをして隙をみて逃げるのとどちらにする?」
「おもちが従ってるし……王様がどのくらい怪我をしているのか分からないからとりあえず会ってみるよ。変な人たちなら隙を見て逃げる」
「やれやれ。お前は神子の鑑だな」
洞窟の出口まであと少しだったけど、俺たちはヴィカさんとサデの兵士たちについて行くことにした。
移動中、おもちが飛んできて俺の肩にとまる。
「ピィ」
「お前、餌をもらったからって誰にでもついて行くな。お前のせいで面倒なことになったぞ」
おもちはアルバートの言葉を無視して俺のポケットに潜り込んだ。
「おもちが持っていたサデの飾りって、王様かヴィカさんのだったんじゃないの?」
「やはり換金するべきだったな」
***
サデの王様がいたのは洞窟の中なのに草原のように植物がたくさん生えた場所だった。場所はエルトリア出口から近いけど、主要な通路からは少し外れていて見つけにくい場所にある。ヴィカさんが魔法で結界を作っていて、そこを通り抜けるとテントが複数建てられた野営地のような場所が現れた。馬や護衛の兵士達がテントの周りを取り囲んでいる。
兵士だけじゃなく、大人も子供もいる。みんな元気がなくて疲れているけど、占術師を見て礼をとった。
中央の一番大きなテントまで来ると、俺とアルバートは馬をおりた。
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「ご苦労だった。入ってくれ」
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