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重たい体を起こし、寝不足でむくんだ顔を洗い、体を覚醒させるために外へ出日光を浴びる。
いつの間にか眠ってしまったのだろう、太陽は昇り始めではなく、もう随分時間が経っているようだった。時計を確認すれば午前9時、朝食の時間を2時間も過ぎていた。エリーさんとは普段から食事を共にしている。きっと自分が行かなかったことを心配しているだろう、そう思い慌てて部屋を出て、エリーさんの家の扉を叩いた。
「エリーさん、おはようございます。遅くなってごめんなさい」
「おはようレイちゃん。昨日はありがとう、それに忙しかったもの。仕方がないわ」
エリーさんの朝食は既に済んでしまっていていたかと思ったが、テーブルには二人分の配膳がされていた。
遅れた事を詫び席につきいつものように二人で食べる。
食事を終えお茶を入れ、昨日ヘイリーさんが届けてくれたミルクを入れた。甘くまろやかなミルクティーを飲みながら、今日はどうしましょうとエリーさんは話す。
「何時になるかしらねぇ、きっと早いわね。だって手紙じゃなく電報出来たんだもの。急に予定が空いたって事よね」
「あの、教授は良く帰ってくるのですか?」
聞いておきながら、知っている。自分が研究室に入ってから、余分な休みを取っていないことを。
「この間帰って来たのは何時だったかしら?もう四、五年会ってないわね」
「そんなに……」
忙しい、分かってはいるが、帰れる場所があるのにと、思ってしまう。
「寂しいと思うこともあるけれど、今はレイちゃんもいるしハンスも気にかけてくれるから、そこまで寂しくはないわね」
「……」
言葉が見つからない。こんな時、どう返せばいいのだろう。ここに来てひと月がすぎた。ずっとこのままという訳にも行かない。
エリーさんは教授の子供の頃の話をし始めた。川で魚をとっていたとか、ピーマンが嫌いでこっそり人の皿に移していたとか。きっととても寂しかったのだと思う。私も1人になってから不意に子供の頃の事を思い出す。でも、誰もいなくて寂しくて、なるべく考えないようにと、思っていた。
そういえば、最近はあまり考えることは無かった。1人になって考えるのは、ラニーの事ばかり。
ラニーはどうしているだろう。勝手に出ていった私を怒っているだろうか。もう要らないと、切り捨てただろうか。
自分勝手な行動をした事を後悔してる。でもあの時はどうしたらいいか分からなかった。本当に私を求めてくれていたのか、疑った。
ドンドンドンドンドンッ
「エリー! 起きているか!」
興奮し扉を叩くハンスさんの声が聞こえ、ハッとする。
「はいはい、今開けますよ」
慌てて玄関を開けると、何時もより興奮気味のハンスさん、その後ろには教授の姿があった。
「教授! お久しぶりです」
「久しぶりだね」
ギュッと両手を握り軽くハグをすると、背中をポンと叩かれ次はエリーさんと抱擁を交わした。
「ああ、ヨハン。よく帰ってきたわね。元気にしていた? 体は壊していない?」
「大丈夫だよ。母さんは?」
「ちょっと足が痛いくらいだわ。大した事ないの。さ、入って」
迎えられた教授は、私の方をじっと見て、柔らかく微笑んだ。
「君に会いたいという人を連れてきたよ」
「……え」
教授の言葉にドクンと心臓が跳ねた。
扉の向こうへ視線をやると、まるで扉に隠れるようにしたラニーの姿があった。
「……ラニー」
「レイ、久しぶりだね」
いつの間にか眠ってしまったのだろう、太陽は昇り始めではなく、もう随分時間が経っているようだった。時計を確認すれば午前9時、朝食の時間を2時間も過ぎていた。エリーさんとは普段から食事を共にしている。きっと自分が行かなかったことを心配しているだろう、そう思い慌てて部屋を出て、エリーさんの家の扉を叩いた。
「エリーさん、おはようございます。遅くなってごめんなさい」
「おはようレイちゃん。昨日はありがとう、それに忙しかったもの。仕方がないわ」
エリーさんの朝食は既に済んでしまっていていたかと思ったが、テーブルには二人分の配膳がされていた。
遅れた事を詫び席につきいつものように二人で食べる。
食事を終えお茶を入れ、昨日ヘイリーさんが届けてくれたミルクを入れた。甘くまろやかなミルクティーを飲みながら、今日はどうしましょうとエリーさんは話す。
「何時になるかしらねぇ、きっと早いわね。だって手紙じゃなく電報出来たんだもの。急に予定が空いたって事よね」
「あの、教授は良く帰ってくるのですか?」
聞いておきながら、知っている。自分が研究室に入ってから、余分な休みを取っていないことを。
「この間帰って来たのは何時だったかしら?もう四、五年会ってないわね」
「そんなに……」
忙しい、分かってはいるが、帰れる場所があるのにと、思ってしまう。
「寂しいと思うこともあるけれど、今はレイちゃんもいるしハンスも気にかけてくれるから、そこまで寂しくはないわね」
「……」
言葉が見つからない。こんな時、どう返せばいいのだろう。ここに来てひと月がすぎた。ずっとこのままという訳にも行かない。
エリーさんは教授の子供の頃の話をし始めた。川で魚をとっていたとか、ピーマンが嫌いでこっそり人の皿に移していたとか。きっととても寂しかったのだと思う。私も1人になってから不意に子供の頃の事を思い出す。でも、誰もいなくて寂しくて、なるべく考えないようにと、思っていた。
そういえば、最近はあまり考えることは無かった。1人になって考えるのは、ラニーの事ばかり。
ラニーはどうしているだろう。勝手に出ていった私を怒っているだろうか。もう要らないと、切り捨てただろうか。
自分勝手な行動をした事を後悔してる。でもあの時はどうしたらいいか分からなかった。本当に私を求めてくれていたのか、疑った。
ドンドンドンドンドンッ
「エリー! 起きているか!」
興奮し扉を叩くハンスさんの声が聞こえ、ハッとする。
「はいはい、今開けますよ」
慌てて玄関を開けると、何時もより興奮気味のハンスさん、その後ろには教授の姿があった。
「教授! お久しぶりです」
「久しぶりだね」
ギュッと両手を握り軽くハグをすると、背中をポンと叩かれ次はエリーさんと抱擁を交わした。
「ああ、ヨハン。よく帰ってきたわね。元気にしていた? 体は壊していない?」
「大丈夫だよ。母さんは?」
「ちょっと足が痛いくらいだわ。大した事ないの。さ、入って」
迎えられた教授は、私の方をじっと見て、柔らかく微笑んだ。
「君に会いたいという人を連れてきたよ」
「……え」
教授の言葉にドクンと心臓が跳ねた。
扉の向こうへ視線をやると、まるで扉に隠れるようにしたラニーの姿があった。
「……ラニー」
「レイ、久しぶりだね」
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