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「レイちゃんおかえりなさい。さ、こっちに来て食べて。お腹すいたでしょ? ご主人の、アンダーソンさんも」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます、エリーさん」
エリーさんのご自宅に戻ると既に宴会はa佳境に入っているようだった。昼間だというのに、そこかしこにワインのボトルが散乱し、顔見知りの住人たちが木陰で酔いつぶれている姿が見れた。
エリーさん、教授、私とラニーとで4人掛けのテーブルつきに向かい合う。ハンスさんが次々と料理を取り分けてくれ、それを頂きながら話をした。
エリーさんへ連絡してくれた事を、改めて教授に礼を言うと、ラニーと合わせて私に色々隠し事をしていた事を謝ってくれた。そしてゆっくりと心身ともに休息をとってほしいと言った。
怒るなんてとんでもない。教授には感謝ばかりだと伝える。僅かに瞳を潤ませる教授は優しく微笑みありがとうと言った。
エリーさんは何も言わず、その様子をじっと見ていたが、1度手をパンと叩くと、夫婦の話し合いはどうなったのかしらと明るい声で聞いた。
私が返答に少しだけ困っていると、ラニーはエリーさんによそ行きの笑顔を向けて言った。
「今日から暫く、私もここで生活出来ればと思っています」
と。その言葉に、エリーさんも教授も目を丸くした。
「アンダーソンさん、あなた仕事は」
「まあまあまあまあなんてこと。何が必要かしら? ああまあほとんど大体は揃っているかしらねぇ」
頬を紅潮させ、興奮しながら話し始める。
「レイちゃんと2人だと今のベッドは狭いわねー」
「……はい?」
「いっそのこと大きなベッドに買い替える? どうします? レイちゃん、アンダーソンさん」
「妻の許しがあるなら是非そうしたいですね」
じっと2人が私を見つめ、もしかして、ラ二ーがさっき言っていたことは本気だったのかと戸惑った。
「ラニー、本当にここに住むの?」
「そうだね、そのつもりだよ。そのつもりで向こうには右腕を置いてきたからね」
ラニーの右腕といえば、カールさんだ。それ以外にも勿論何人かいるけれど、ラニーが公私共に最も信頼する人物。
「……抵抗があるなら、別の部屋を、借りる」
「抵抗は、無いけど」
無理がある。
でも、本当に仕事より自分を優先してくれるなら、申し訳ないけれど嬉しい。
「……本当に?」
「ああ、本当に」
じっと見つめるラニーの瞳は真剣だ。だから私の答えは決まっている。
「ラニーと住みたいわ」
どうなるかはわからない。忙しい彼が本当にここで生活できるのか、早々に私を置いて帰ってしまうのか。
*
あの時の会話の通り、ラニーはその日から同じ家に住んでいる。
美味しい豪華な料理は出ないし、家事だってしなきゃならないのに、一緒に料理をし、交代で食器を洗う。洗濯だって同じだった。
正直、すぐに音を上げると思ってた。屋敷から使用人を連れて来らどうしようと思っていたりもした。
今までラニーが住んでいた屋敷とは比べようも無いくらい小さな家。
最初の二日は小さなベッドで身を寄せ合って眠った。
三日に一度、ラニーの元に書類が届けられ、十日に一度、カールさんが打ち合わせに来る。私は相変わらずエリーさんの手伝いや農家のお手伝いや、家畜のお世話を手伝った。
ラニアス・アンダーソンと言う大物の滞在に、小さな町の住民は湧いた。
そんな騒ぎも落ち着いた3ヶ月後、ラニーは都市部との往復で追われる毎日で、一緒に過ごす時間は当初と比べめっきりと少なくなっていた。
それでも必ず帰ってきてくれた。何でも揃っている都会ではなく、豪華な屋敷でもないこの借家に。
離れている間は不安はあるが、必ず帰った来てくれる。そんな彼の行動に胸は満たされた。
日に日に疲れを滲ませる姿にそんな気持ちを持つなんて、酷い女だと自分で自覚してる。
わかっている。
私は自信がない。自分に価値を見いだせない。
愛される、自信が無い。
それでもラニーを愛してる。与えられる気持ちが冷めてしまう愛かもしれなくても。
必要としてくれているならその間だけでも構わない。ラニーのそばで、役に立ちたい。
たくさん与えてくれたラニーのために、今度は私が1歩、踏み出さないと。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます、エリーさん」
エリーさんのご自宅に戻ると既に宴会はa佳境に入っているようだった。昼間だというのに、そこかしこにワインのボトルが散乱し、顔見知りの住人たちが木陰で酔いつぶれている姿が見れた。
エリーさん、教授、私とラニーとで4人掛けのテーブルつきに向かい合う。ハンスさんが次々と料理を取り分けてくれ、それを頂きながら話をした。
エリーさんへ連絡してくれた事を、改めて教授に礼を言うと、ラニーと合わせて私に色々隠し事をしていた事を謝ってくれた。そしてゆっくりと心身ともに休息をとってほしいと言った。
怒るなんてとんでもない。教授には感謝ばかりだと伝える。僅かに瞳を潤ませる教授は優しく微笑みありがとうと言った。
エリーさんは何も言わず、その様子をじっと見ていたが、1度手をパンと叩くと、夫婦の話し合いはどうなったのかしらと明るい声で聞いた。
私が返答に少しだけ困っていると、ラニーはエリーさんによそ行きの笑顔を向けて言った。
「今日から暫く、私もここで生活出来ればと思っています」
と。その言葉に、エリーさんも教授も目を丸くした。
「アンダーソンさん、あなた仕事は」
「まあまあまあまあなんてこと。何が必要かしら? ああまあほとんど大体は揃っているかしらねぇ」
頬を紅潮させ、興奮しながら話し始める。
「レイちゃんと2人だと今のベッドは狭いわねー」
「……はい?」
「いっそのこと大きなベッドに買い替える? どうします? レイちゃん、アンダーソンさん」
「妻の許しがあるなら是非そうしたいですね」
じっと2人が私を見つめ、もしかして、ラ二ーがさっき言っていたことは本気だったのかと戸惑った。
「ラニー、本当にここに住むの?」
「そうだね、そのつもりだよ。そのつもりで向こうには右腕を置いてきたからね」
ラニーの右腕といえば、カールさんだ。それ以外にも勿論何人かいるけれど、ラニーが公私共に最も信頼する人物。
「……抵抗があるなら、別の部屋を、借りる」
「抵抗は、無いけど」
無理がある。
でも、本当に仕事より自分を優先してくれるなら、申し訳ないけれど嬉しい。
「……本当に?」
「ああ、本当に」
じっと見つめるラニーの瞳は真剣だ。だから私の答えは決まっている。
「ラニーと住みたいわ」
どうなるかはわからない。忙しい彼が本当にここで生活できるのか、早々に私を置いて帰ってしまうのか。
*
あの時の会話の通り、ラニーはその日から同じ家に住んでいる。
美味しい豪華な料理は出ないし、家事だってしなきゃならないのに、一緒に料理をし、交代で食器を洗う。洗濯だって同じだった。
正直、すぐに音を上げると思ってた。屋敷から使用人を連れて来らどうしようと思っていたりもした。
今までラニーが住んでいた屋敷とは比べようも無いくらい小さな家。
最初の二日は小さなベッドで身を寄せ合って眠った。
三日に一度、ラニーの元に書類が届けられ、十日に一度、カールさんが打ち合わせに来る。私は相変わらずエリーさんの手伝いや農家のお手伝いや、家畜のお世話を手伝った。
ラニアス・アンダーソンと言う大物の滞在に、小さな町の住民は湧いた。
そんな騒ぎも落ち着いた3ヶ月後、ラニーは都市部との往復で追われる毎日で、一緒に過ごす時間は当初と比べめっきりと少なくなっていた。
それでも必ず帰ってきてくれた。何でも揃っている都会ではなく、豪華な屋敷でもないこの借家に。
離れている間は不安はあるが、必ず帰った来てくれる。そんな彼の行動に胸は満たされた。
日に日に疲れを滲ませる姿にそんな気持ちを持つなんて、酷い女だと自分で自覚してる。
わかっている。
私は自信がない。自分に価値を見いだせない。
愛される、自信が無い。
それでもラニーを愛してる。与えられる気持ちが冷めてしまう愛かもしれなくても。
必要としてくれているならその間だけでも構わない。ラニーのそばで、役に立ちたい。
たくさん与えてくれたラニーのために、今度は私が1歩、踏み出さないと。
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