私の可愛い妖精

ゆか

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13(ヤン)

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ああ、そうか。

もうそんな年頃だったか。


モヤモヤと胸の中で何かが生まれたが、私はそれを振り払い笑顔でおめでとうと言った。

アルレイシアの一瞬見せた傷ついたような顔は、生涯忘れることは無い。


相手は昨年ラットン家に養子に入った男。

まだ顔合わせもしていない。少しだけ不安だと言うアルレイシアにきっと大丈夫だよといえば、おじ様がそう言うのならと微笑んだ。その微笑はいつもと違い酷く寂しそうに見えた。


いつものように手土産に『キャンディー』を渡し、ゆっくりとお茶を飲みながら過ごす。

アルレイシアは婚約に不安を抱えているように見えた。


私はすぐにヘンリク・ラットンについて調べる事にした。少しでも不安を取り除いてやりたかったのだ。






ところが、ヘンリクという男の素行はあまりいいものではなかった。

婚約をしたというのに友人らと男女が混じり酒を飲む様なクラブに顔を出し、時には仮面舞踏会に行くこともあった。

そして婚約者がいるにも関わらず未亡人に入れあげていた。




「あんな男だと知っていたのか!」


「あの程度多少の遊びで目くじら立てる程ではないだろう」


「婚約前ならまだしも、婚約してからだぞ!?不誠実だろう!!」


「ヤン落ち着け。アルレイシアは貴族の娘でこれは政略結婚だ、それくらい心得ている」


「───っ、だがっ!」



貴族の娘。

分かってはいるが、あの愛らしいアルレイシアの寂しそうな瞳が過ぎる。



「あの子はあまり社交の場には出なかったじゃないか!知っていても目にするのは辛いだろう。あの様子では婚姻後も続くっ!」


「ヤン、お前にはやれないんだ」


「・・・・・何の話だ?」


「アルレイシアは貴族の娘だ。お前にはやれない」


何を言っている?

私にはやれない?

私がアルレイシアとの婚姻を望んでいるとでも思っているのか?


「自覚がないのか?・・・・・何故忙しい身のお前が頻繁に尋ねてくる?何故娘が社交の場に出たがらないと思う」


「・・・・・元々、好きでは無いのだろう?華やかな場所よりも父親のそばでの補佐をしたがる」


「では何故私の補佐をしたがる」


「それは、、、父親の仕事に憧れ他のでは無いのか?運営し、領民を守る事に」


「貴族の子女として生まれた子が華やかな場に慣れていないと?そんなわけは無い。私は十分に娘に時間をやったが、時間切れだ。娘はラットンの後継を産む。これ以上に無い良縁だ」


「っ!娘を道具の様に!」


「ゲルガー侯爵が自分ではなく養子を用意したのは娘を思ってのこと」


「なに?」


「お前と歳の近い男は嫌だろうとな」


「待て待て待て待て!さっきから何を言っている!?話が噛み合っていない!」


「話は終わりだ。今後は娘と私的に会う事は控えてくれ」




友人は私の言葉を聞いてはくれなかった。

それどころかアルレイシアと会う事も出来なくなってしまった。


私はただ、あの子に不幸になって欲しくなかったのだ





───お前にはやれないんだ




何だそれは。

それではまるで、、、、。



───何故娘が社交の場に出たがらないと思う




まさか、違う。




────お前と歳の近い男は嫌だろうと




そんなはずは無い。










私はそのまま何も出来ずにいた。

あれから友人は一度だけクラウム家の茶会にグラブス商会の者とし招待してくれた。

久しぶりに会ったアルレイシアにいつものように手土産に『キャンディー』を渡した。

婚約者が他の女性と親しくしているのはアルレイシアの耳にも入っているのだろう。いつもの様な笑顔は見られず、私のプレゼントにありがとうと作り上げた笑顔を見せてくれた。


明らかに無理をしているアルレイシアの姿に、胸が苦しくなった。





そして私はフランツ・エリストロに会った。


アルレイシアをじっと目で追う姿は、明らかに好意を持っていたが、彼女がラットンに嫁ぐことを知っているからか、一歩引き眺めているだけだった。




ひと月も経たずに彼は私を尋ねてきた。私に情報をよこせと。


そしてエリストロ家の持っている東国との販路と引き換えに協力することにした。

正直すぎるところは褒められないが、高位貴族の血筋を持ちアルレイシアを真っ直ぐに見つめる目は気に入った。

合格とは言いきれないがあのクズよりはいい。


私の持つ情報は全てくれてやった。元子爵夫人との橋渡しも。



そして静かに噂を撒く。



金で買われた男だと。



アルレイシアと不仲になるように。











クズと別れ新たに結んだ婚姻。



アルレイシアは幸せそうだった。



ラットン家の望み通りに子を産んだ。


男児だった。


これでアルレイシアの貴族としての一番の役割は終わった。


あとはゆっくりと、思うままに生きることが出来る。


ずっと見守ってきた。


アルレイシアが幸せに暮らす事ができ嬉しい筈が、何故か涙が出た。







そうか、私は彼女を愛していたんだ。



今更気がついてももう遅い。

彼女は自分の幸せを見つけた。








そんなある日、アルレイシアの夫フランツが事故にあった。生存の可能性は低く、絶望的であった。





魔が差した、と言うのだろう。





私はしてはならない事をしてしまった。







「アルレイシアに、伯爵夫人に目通りを!お願いだ!」




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