私の可愛い妖精

ゆか

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15(フランツ)

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「アルレイシアに、伯爵夫人に目通りを!」


私が軋む体を起こし侍従に様子を聞くと門前で大声を出していたのはヤンだと言う。

酷く焦り冷静さを欠いたその姿に、門番や駆けつけたもの達は驚き邸内へ走り出す。


「お願いだ、あれを、食べさせないでくれ………」


その言葉を聞き私は不穏なものを感じヤンを邸内に入れ事情を聞くことにした。







私の姿を見たもの達は驚き兄とアルレイシアへ知らせようとしたが、私はアルレイシアに伝えるのは待ってくれと頼んだ。

明らかに何かあるヤンをこのままにはしておけない。不審がる皆には体を綺麗にしてから会いたいと伝え、アルレイシアが私が行くまで何も口にしないように見張らせた。

項垂れたヤンの姿に、何かを察し静かに席を外す執事に、後でアルレイシア付きの侍女を寄越すように伝えると、兄の元へと急いだ。





侍従に支えられ現れた私に、兄は驚きながらも再会を喜んでくれた。

涙をこらえる姿にぐっと胸が詰まる。

だがそれどころではなく私はヤンのことを話し兄と二人、話を聞いた。


「貴方が、死んだと思ったのです」



と、ヤンは静かに語り出す。


アルレイシアに贈ったあの砂糖菓子の箱。あれをアルレイシアに食べさせないでくれと言う。




「まだ口にしていないはずです、どうか、どうかっ!」



物騒な話に冷や汗が垂れる。アルレイシアの侍女に確認するとひとつも口にしていないという。

それを聞きヤンは泣き崩れ罰を受けると言う。

詳しく聞けば箱の中にひとつだけ妊婦に良くない香料が使われているものがあるという。


すぐに侍女に持ってくるように言えば、暫くしてからアルレイシアに気付かれぬようそっと持ち出してくる。


ひとつも減っていないことに安堵したが、つまりはヤンは知っていてアルレイシアに渡した事になる。



「魔が、差したのです…………。御嫡男が生まれ、彼女のラットンの後継を産むという役割は終わりました。

フランツ様の行方が分からす、私は、助からないと思ったのです。……もし、フランツ様がお亡くなりになっていたらと、考えては行けない夢を見たのです」


ヤンは静かに語り初め、幼い頃からアルレイシアとの交流があった事や、気がつけばアルレイシアに想いを寄せていた事を話し始めた。


「もし腹の子が産まれれば、それはフランツ様の、伯爵家の後継。アルレイシアはラットン家には戻らず後継を1人で育て、必要であれば再婚までしてしまうだろうと思いました」


「…………だから、毒性のあるものを渡したのか。私のアルレイシアに!!」


身勝手な物言いに腸が煮えくり返るようだった。


「腹の子が居なければ、アルレイシアはラットンでラットンの後継ジェミニと穏やかに過ごすことが出来る」


「………ラットン侯爵もクラウム伯爵もラットンの後継を産めばアルレイシアの自由を認めていたからか」


「・・・知っていたのですか」


「そしてアルレイシアを手に入れたかったのか。アルレイシアの気持ちも考えずに!」


「・・・・いいえ。また以前の様な時間を過ごしたかったのです」




そう言うとヤンは口をつぐみ何も喋らなくなった。

何も言わずに聞いていた兄が口を開いた。殴り付けてやりたいが今の自分にその力はなく、ただ目の前が真っ赤に染まる様だった。

そんな私の冷静を欠いた姿に、じっと黙っていた兄が口を出す。



「エリストロ家として、このままという訳には行かない。覚悟は出来ているか」


「・・・・如何様にも処分ください」


「分かった。処分を下す前にひとつ聞きたい。何故アルレイシアがまだ口にしていないと分かったのか」


「・・・日に一粒、幼い頃交した約束でございます。そして手をつけるのも、左上から順に最後は右下へ。それを知っていて最後に口にするであろう場所にそれを置いたのです」


「そうか。では処分は追って知らせる。その間監視は付けさせてもらうが自宅にて待て」



貴族の妻を害そうとしたのだからその場で切られても文句は言えない。兄が時間を与えたのはヤンのためではなく私に冷静になるための時間をくれたのだ。



兄は使用人達にきつく口止めをし、私は急ぎアルレイシアの元に向かった。




私の姿を見たアルレイシアは駆け寄ろうとして足をもつれさせた。

咄嗟に支えてくれていた侍従の腕を離して駆け寄った。

軋む体は痺れる様な痛みを感じたが、それよりもアルレイシアの軽さに驚いた。

抱き止めたアルレイシアは最後に抱きしめた時よりもずっと細く、酷く顔色が悪かった。



「フランツ様、フランツ様!」



「アルレイシア、君を一人にしてすまない」



「いいえ、いいのです。こうして帰ってきて下さったではありませんか」



アルレイシアは涙を流し再会を喜んでくれた。


私は一瞬でもアルレイシアがヤンに取られてしまうのではと考えた事を恥じた。

アルレイシアはこんなにも私を心配し愛してくれている。

ヤンのした事は許せないが、腕の中で震えながら涙を流す愛しい妻の事を今は一番に考えなくてはいけない。




無理をしたせいか多少熱が出たが、私はアルレイシアと自身の回復を優先させた。

一日ベッドの上であったが妻と子と過ごす時間を十分に取り、夜はアルレイシアと共に眠った。


そして3日後の深夜、アルレイシアが深く眠っていることを確認し、兄の元へとと足を運んだ。



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