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第2話 家でも追い出されたか
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「出てけ! 居候!」
「居候じゃないって!」
「いいから出てけニート!」
「ニートでもないって!」
「死ね引きこもり!」
「引きこもりでもないって!」
リビングから玄関に向かってぐいぐい背中を押す優志。
押されていよいよ玄関前まで追い詰められた結衣。
いよいよ玄関の扉が近づいてきたところで、結衣は大声を上げながら体を回転させて逃げ出す。
リビングに向かった結衣を追って「待ちやがれ!」と優志もリビングへ駆け込む。
外は真っ暗な午後九時の出来事である。
「お前な……いつかタダで住みたいとか言い出すんじゃないかと思ってたけど、俺の家はホテルじゃ――」
「違う違う違うんだって! 話をしよう! とりあえず! 一旦!」
「話をしたら時間が経ったら『もう遅い時間だから泊まっていい?』って言い出すんだろ」
「うん」
「正直者か」
優志は呆れた。
ちらっと窓の外を見ると、当然外は暗い。
こういう時、帰るのが面倒くさいからと結衣が『泊まっていい?』と言ってきたことは何度かあって、何度か断ってきた。
ただ、「一緒住もうと思うんだけど」と言ってきたのは今日が初めてだった。
「はぁ……いいや。追い出す方が面倒くさい」
「私すばしっこいからね」
「……話があるならさっさと話せよ」
リビングに戻り、耳障りだったテレビの電源を切る。
ソファに座ると、その正面に結衣が正座した。
大事な話がある、という面持ちで優志を見てくる。
「で。……家でも追い出されたか」
「うん」
「えっ」
いきなり核心をついてしまい自分で驚く優志だった。
「マジで? お前……ホームレスなの?」
「多分」
「いや、どうしたんだよ……家」
「それは私が聞きたいよ」
俯きながら、口を尖らせて言う結衣。
こういう時、親は、と聞くのが普通だと優志も知っていた。
ただ、二人の間では、親の話はしないのが暗黙の了解となっていた。
お互いに、触れたくないところは触れない。
「なんか、ちょっと前から、電気止まってて」
「お、おぉ……」
「大家さんが、なんか、もうさすがにダメっぽいって」
「……どうすんだよ」
事態は大体把握できた。
この先の細かい部分を優志が知っても意味はないと知っているから、どうするのかを真っ先に聞いた。
「……ゆーしの家、しか、ない、けど」
「真面目な話どうすんだよ」
「真面目だけど!」
「めちゃくちゃ真面目だけど!」と叫ぶ結衣。
マジかこいつ、とドン引きする優志。
この家だって問題アリだし、結衣とはただの近所の幼馴染でしかない。
こういう時は普通親戚とか――
「…………」
――そこまで考えて、優志は何も言わずに納得した。
「ってか、結衣の住所とかどうなるんだ?」
「ここっ」
「そうじゃなくて法律的な、役場的な意味で」
「別に最初からちゃんとしてなさそうだしいいんじゃない?」
「……言われてみれば」
「学校の用事は学校がなんか言ってくれるって」
意外と余裕がありそうな結衣は、こういう事態に慣れている、という様子だった。
こういう時、一人で育つと強いと感じる。
「はー……まあ、じゃあ、頑張れよ。今日は泊まっていいから」
「ありが――……ん? 今日は? ずっとの間違いだよね?」
「今日はって言った」
「明日は?」
「俺は関係ないし」
「関係あるよ」
関係ないはずなのに、そう言い切られると本当に関係があるように思えてくるから不思議だった。
「お前困ってる。俺他人」
「ゆーし見捨てる。私どうなる」
「俺他人。お前知らない」
「私死ぬ。ゆーし困る」
「俺困らない」
「私困る」
「死んだら困るという感情も抱かない」
「違うそうじゃないでしょ!」
正座していた結衣は急に立ち上がってぷんすか怒り出す。
「え、本気!? 私死んじゃうよ!?」
「いや……なんだかんだ何とかなるだろうし」
「誰も頼れないのに!? 公園で寝泊まりしてていいの!?」
「いや公園はやめた方がいい」
「しないよ言われなくても!」
結衣が直球でツッコんでくるのは珍しかった。
「え、そんなに嫌!? 私嫌われてた!?」
「いや……嫌ってか」
「ってか?」
「俺の家も普通じゃないし。高校生が同棲してるのバレたら、面倒くさいことになる」
普通の家には大人がいる。
しかし、ここにはいない。何か問題があった時、結果的に結衣が困る。
「別によくない?」
「どこがいいんだ」
「元々そんな感じじゃん。家のことバレたらずっと面倒くさかったし」
「……一理なくもない」
今日はやたら結衣に気付かされる日だ、と優志は思う。
「それに一応そこは考えてきたんだよね。付き合ってたらさ、同棲って普通じゃん? だから私達が付き合ってることにして――」
「それ以上くだらないこと言ったら追い出す」
「え? 名案じゃない? バレても開き直れるし」
「お前にとってはな」
優志にとっては面倒がプラスされただけだった。
「はぁ……面倒くさいことになったな」
「私にとってはいつも通りだったり」
「……今日は泊まらせるとしても、そのうち追い出すから他の案考えとけよ」
「同級生に泊まらせてって言って回るしかないよ」
「その方が……」
いい、と言いかけて、同級生は女子とは限らないか、と気づく。
「……まあいいや。今日はとりあえずソファか床で寝かせるけど、文句言うなよ」
「えー、どっちがベッドかじゃんけんしない?」
「文句言ったから追い出す」
「嘘! ジョークジョーク! ソファ大好き!」
とんでもない事態に陥っているはずなのに、いつも通りの笑顔で調子のいいことを言う結衣。
その日から、ただの幼馴染だった二人の共同生活が始まった。
「居候じゃないって!」
「いいから出てけニート!」
「ニートでもないって!」
「死ね引きこもり!」
「引きこもりでもないって!」
リビングから玄関に向かってぐいぐい背中を押す優志。
押されていよいよ玄関前まで追い詰められた結衣。
いよいよ玄関の扉が近づいてきたところで、結衣は大声を上げながら体を回転させて逃げ出す。
リビングに向かった結衣を追って「待ちやがれ!」と優志もリビングへ駆け込む。
外は真っ暗な午後九時の出来事である。
「お前な……いつかタダで住みたいとか言い出すんじゃないかと思ってたけど、俺の家はホテルじゃ――」
「違う違う違うんだって! 話をしよう! とりあえず! 一旦!」
「話をしたら時間が経ったら『もう遅い時間だから泊まっていい?』って言い出すんだろ」
「うん」
「正直者か」
優志は呆れた。
ちらっと窓の外を見ると、当然外は暗い。
こういう時、帰るのが面倒くさいからと結衣が『泊まっていい?』と言ってきたことは何度かあって、何度か断ってきた。
ただ、「一緒住もうと思うんだけど」と言ってきたのは今日が初めてだった。
「はぁ……いいや。追い出す方が面倒くさい」
「私すばしっこいからね」
「……話があるならさっさと話せよ」
リビングに戻り、耳障りだったテレビの電源を切る。
ソファに座ると、その正面に結衣が正座した。
大事な話がある、という面持ちで優志を見てくる。
「で。……家でも追い出されたか」
「うん」
「えっ」
いきなり核心をついてしまい自分で驚く優志だった。
「マジで? お前……ホームレスなの?」
「多分」
「いや、どうしたんだよ……家」
「それは私が聞きたいよ」
俯きながら、口を尖らせて言う結衣。
こういう時、親は、と聞くのが普通だと優志も知っていた。
ただ、二人の間では、親の話はしないのが暗黙の了解となっていた。
お互いに、触れたくないところは触れない。
「なんか、ちょっと前から、電気止まってて」
「お、おぉ……」
「大家さんが、なんか、もうさすがにダメっぽいって」
「……どうすんだよ」
事態は大体把握できた。
この先の細かい部分を優志が知っても意味はないと知っているから、どうするのかを真っ先に聞いた。
「……ゆーしの家、しか、ない、けど」
「真面目な話どうすんだよ」
「真面目だけど!」
「めちゃくちゃ真面目だけど!」と叫ぶ結衣。
マジかこいつ、とドン引きする優志。
この家だって問題アリだし、結衣とはただの近所の幼馴染でしかない。
こういう時は普通親戚とか――
「…………」
――そこまで考えて、優志は何も言わずに納得した。
「ってか、結衣の住所とかどうなるんだ?」
「ここっ」
「そうじゃなくて法律的な、役場的な意味で」
「別に最初からちゃんとしてなさそうだしいいんじゃない?」
「……言われてみれば」
「学校の用事は学校がなんか言ってくれるって」
意外と余裕がありそうな結衣は、こういう事態に慣れている、という様子だった。
こういう時、一人で育つと強いと感じる。
「はー……まあ、じゃあ、頑張れよ。今日は泊まっていいから」
「ありが――……ん? 今日は? ずっとの間違いだよね?」
「今日はって言った」
「明日は?」
「俺は関係ないし」
「関係あるよ」
関係ないはずなのに、そう言い切られると本当に関係があるように思えてくるから不思議だった。
「お前困ってる。俺他人」
「ゆーし見捨てる。私どうなる」
「俺他人。お前知らない」
「私死ぬ。ゆーし困る」
「俺困らない」
「私困る」
「死んだら困るという感情も抱かない」
「違うそうじゃないでしょ!」
正座していた結衣は急に立ち上がってぷんすか怒り出す。
「え、本気!? 私死んじゃうよ!?」
「いや……なんだかんだ何とかなるだろうし」
「誰も頼れないのに!? 公園で寝泊まりしてていいの!?」
「いや公園はやめた方がいい」
「しないよ言われなくても!」
結衣が直球でツッコんでくるのは珍しかった。
「え、そんなに嫌!? 私嫌われてた!?」
「いや……嫌ってか」
「ってか?」
「俺の家も普通じゃないし。高校生が同棲してるのバレたら、面倒くさいことになる」
普通の家には大人がいる。
しかし、ここにはいない。何か問題があった時、結果的に結衣が困る。
「別によくない?」
「どこがいいんだ」
「元々そんな感じじゃん。家のことバレたらずっと面倒くさかったし」
「……一理なくもない」
今日はやたら結衣に気付かされる日だ、と優志は思う。
「それに一応そこは考えてきたんだよね。付き合ってたらさ、同棲って普通じゃん? だから私達が付き合ってることにして――」
「それ以上くだらないこと言ったら追い出す」
「え? 名案じゃない? バレても開き直れるし」
「お前にとってはな」
優志にとっては面倒がプラスされただけだった。
「はぁ……面倒くさいことになったな」
「私にとってはいつも通りだったり」
「……今日は泊まらせるとしても、そのうち追い出すから他の案考えとけよ」
「同級生に泊まらせてって言って回るしかないよ」
「その方が……」
いい、と言いかけて、同級生は女子とは限らないか、と気づく。
「……まあいいや。今日はとりあえずソファか床で寝かせるけど、文句言うなよ」
「えー、どっちがベッドかじゃんけんしない?」
「文句言ったから追い出す」
「嘘! ジョークジョーク! ソファ大好き!」
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