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12. 脱出①
しおりを挟む取れない首輪や足枷と格闘し続けしばらくが経った。たまに自分の爪で皮膚を傷付けたりもしながらがむしゃらに動かしてみたが、魔法で封じられた首輪は継ぎ目もなにも無いし、枷をベッドや壁に打ちつけてみてもびくともしなかった。足枷を壊そうとした際に石壁にぶつけてしまった左足首が痛む。
見張はいないようだから、足枷と牢の錠前さえ外せればなんとか逃げられそうなのに……いや、その足枷すらなんともならないから前途多難だ。
俺はベッドの上にごろりと横になる。痛みと無力感で涙が出そうだった。情けない。ウィルの兄貴分としてあいつを守ってやろうだなんて偉そうに思っていたのに、こうして捕まって迷惑をかけることしかできないのか。
いっそ俺のことなんて放っておいて、騎士団になんて来なければいいとすら思う。
きっと、やつらは俺のことを殺しはしない。俺は敵でも罪人でもないから、殺すことに正当性が生じないからだ。せいぜい、ずっとこの牢に閉じ込められるくらいが関の山だろう。
まあ、そうなったら仕方がない。易々と捕まってしまった俺が悪いんだ。一緒にいるって約束は果たせなかったが、俺のことは忘れて幸せに暮らしてくれればいい。俺だって、ウィルと一緒にいたかったけれど。
「ごめん、ウィル。ごめん……」
一人で考え込んでいるうちにどんどん悪い想像が膨らんでいく。でも、それが一番いい。俺と引き換えに騎士団になんか入らなくていい。
聞こえるはずもない謝罪を繰り返しているうちに、涙がぼろりとこぼれ出した。いい大人が泣いてばかりで本当に情けない。一度堰を切った涙腺はばかになってしまったようで、俺は拭いもせずにしばらく涙を流し続けた。
どれくらいそうしていただろうか。ベッドに横になり脱力する俺の耳に、遠くの方から「こつり」と床を打つ音が聞こえた。耳を澄ませると荒い息遣いが聞こえてくる。間違いない、誰かいる。
気配を隠そうとしている様子から、シュナイダーやスタンではないことは推測できる。じゃあ誰が?
話の通じる奴であることを祈って、俺は意を決して声を掛けた。
「なぁ、誰かいるのか」
通路に俺の声が響いた瞬間、誰かがすごいスピードで走る音が聞こえたかと思うと、鉄格子の向こうにフードを被った人影が躍り出た。
逆光のフードの中を見て俺は目を見開く。
「ウィル!? どうしてここに!」
「ルカ、やっと見つけた」
俺はがちゃがちゃと鳴る鎖を無視してウィルへ駆け寄る。鉄格子の向こうに見えるウィルの顔は真っ青で、おまけに鼻血を流した跡まで残っていた。
「今出してやる」
そう言ってウィルは牢の扉の前に移動すると、取り出した短剣の柄でがつがつと錠前を叩いて破壊した。
乱暴に扉を開いたウィルが牢の中に入り込み、真っ直ぐ俺へ向かってくる。そのままの勢いで俺は彼にきつく抱きしめられた。
「ルカ、ルカ……! 無事で良かった」
「ウィル……来てほしくなかったけど、来てくれるって思ってた」
覆い被さるようにして俺を抱きしめるウィルの背中に両手を回す。背中はじっとりと汗ばんでいるし、顔を押し付けた肩口からもいつもよりも濃くなったウィルの体臭が香る。だけどそこに不快感はなくて、張り詰めていた心を溶かすような居心地の良さを感じた。
数秒だけそうして抱き合った後、ウィルは涙の滲む俺の目元に唇を寄せてから身体を離した。
俺の全身を見分し苦虫を噛み潰したような顔で呟く。
「こんなに怪我をさせられて……ひどいな」
「怪我に関してはほとんど自分でやったんだけどな……」
「じゃあ、これは?」
そう言ってウィルは俺の首筋を親指で撫でた。そこはさっきシュナイダーに噛み付かれた傷がある場所だ。
「俺を攫った、長い髪の男に噛まれて血を吸われた。牙が鋭利だったからかそんなに痛くはないんだけど……」
「血を吸われた? あいつは魔物だったのか?」
「違うとは言ってたけど、なんで俺を噛んだのかは教えてもらえなかった」
ウィルは押し黙ったまま、考え込む表情を見せた。
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