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13. 脱出②
「いや、なんでお前の血を吸ったのかは見当がつく」
「見当って……」
「後で説明するから、今はここから出るのが先だ」
ウィルはそう言って屈み込み、俺の足枷に繋がる鎖を外しにかかる。短剣に魔力を込めたのか、刃がきらきら光って見えた。それを鎖の輪に捩じ込み力を入れると、少しずつ輪が変形していく。鎖は何とかなるとして、問題は首輪の方だ。
「ウィル、この首輪であいつらに俺の動きが分かるらしいんだ」
鎖を分断させることに成功したウィルは、立ち上がって俺の首に巻きつく首輪を観察した。
「これは……悔しいが俺にはどうにもならないな。付けたのはあの副隊長か?」
「そう。何か呪文を唱えてた」
「力ずくで外せるような代物じゃないな。俺の付け焼き刃の魔術じゃ太刀打ちできない」
ウィルは憎々しげに首輪を見つめながら唇を噛んだ。
「首輪についてはここを離れてから考える。気付かれていないうちに脱出しよう」
「う、うん」
果たして、本当にそれが可能なのだろうか。この首輪の効力がどれくらいあるのか分からないが、俺が逃げ出そうとしていることに既に勘付かれていてもおかしくない。けれど駆け付けてくる気配も何もなく、不気味さを感じる。まるで、嵐の前の静けさのようだ。
「とにかく行くぞ」
ウィルは背負っていた猟銃を肩から下ろして右手に携えると、ぐるぐると考え込む俺の手を引いて走り出した。
痛めた足首に枷の重みが地味に響く。俺は痛みに堪えながら必死にウィルに着いていった。
鉄格子から出るとそこには石造りの通路が続いており、俺がいたのと同じような牢がいくつか並んでいた。通路の先にある階段を二人で駆け上がっていく。やはり地下牢だったようだ。階段を上がりきると牢の入り口は小屋になっていて、足枷や手枷、拷問器具の類が壁に下げられていた。
扉を開けて外に出て、そこから敷地の外まで辿り着けるのだろうか。足は痛んで全力では走れないし、それにどうしても首輪の存在が気にかかる。俺が牢から抜け出したことにシュナイダーが気付いていないとは思えなかった。
「ねぇ、ウィル。提案があるんだけど」
ウィルが小屋の扉に手を掛ける直前、俺は足を止めてウィルの手を引いた。
「せっかく来てもらったところ悪いんだけど、俺をここに置いていってくれないか」
「バカなことを言うな! お前を助けに来たのに置いていくわけがないだろ」
「やっぱりこの首輪が外れない限り逃げ切れないと思うんだ。それに、実は足首が痛くてもう碌に走れない。二人とも見つかるくらいだったらお前がこのまま一人で逃げた方がいいだろ」
俺はウィルに握られていた手を振りほどき、血の気の失せた頬に手のひらを添えた。
「助けに来てくれてありがとう、ウィル。無理したんだろ。こんなに顔色悪いお前はじめて見た」
今ウィルがここに居るということは、村から魔術で転移してきたということだ。もともと転移術は使えなかったはずで、どうやったのかは分からないが、ウィルはそれをどうにか丸一日で習得した。魔術や魔力のことはよく分からないけど、それがどれだけ大変なことだったのかは想像に難くない。顔色が真っ青になるほど魔力も体力も消耗しているのだ。
「俺は……」
ウィルは俺の両肩をがしりと掴んで俯く。そのままゆっくりと目を瞑って押し黙った。
俺たちの間に一瞬の沈黙が訪れ、閉じた時と同じスピードで瞼を持ち上げたウィルが口を開く。
「ルカ、俺は騎士団に入ろうと思う」
金色の瞳は光を増し、炎のように揺らめいた。
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