孤独な冒険者B

ヤマノ トオル/習慣化の小説家

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第3話 王国騎士ガトリー

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カラカラカラカラ

その日の夜、依頼用紙に書いていた通り、人影が少なくなった5番街で、ボッチは呼びベルを鳴らした。

そこに現れたのは王国製の重鎧に身を纏った1人の騎士だった。

兜は被っておらず、ブロンドヘアーの逆立った髪型が月明かりに反射している。

ガトリー「おお!!オレに引けを取らない良い体格をしてるなぁ!オレはガトリー、王国騎士だ」

ガトリーと名乗った大男はボッチに握手を求めている。

しかし、ボッチは握手をするのを躊躇った。
理由としては、国が絡む依頼は面倒ごとになりかねないからだ。

ボッチ「お前が依頼人か?王国の依頼は受けないようにしている。悪いがこの依頼はキャンセルする」

ボッチの言葉を聞き、ガトリーは焦った様子で首を振った。

ガトリー「待て待て待て!確かにオレは王国騎士だが、この依頼はオレの個人的な依頼だ!国からの命令なんかじゃない、だから頼むよ!こんな危険な依頼受けてくれる人なんて、あんたくらいだ」

ガトリーは握手を求める手を前へと突き出し、無言の圧力をかけている。

ボッチ「そういうことなら良いだろう」

ボッチはガトリーの手を握った。

ガトリー「うおっしゃ!!やったぜ!頼むぜ旦那ぁ!」

ガトリーはガシャガシャと重鎧を鳴らしながら喜んでいる。

ボッチ「それで、野盗のアジトの場所は分かっているのか?」

ガトリー「もちろんだ!グレイル砂漠にある洞窟、そこに奴らの根城がある」

ボッチ「分かっていながら、何故国は動かない?」

ガトリー「かぁ~分かってねぇな旦那!グレイル砂漠に兵を送るなんてコスパが悪過ぎるだろ?重い鎧を引きずりながら、3日間の過酷な旅になる。大量の水と食料も必要になるだろうに、野盗のアジトを壊滅させたところで世界が平和になるわけでもない!そんなもののために国は動かんってわけだ!」

ボッチ「確かにな。じゃあ何故お前はそんなもののために命をかけようとしている?」

ガトリー「決まってんだろ、カッコいいからだよ!オレはヒーローになりたいんだ!」

ガトリーは親指を突き立て、ポーズを決めている。

ボッチ「、、、そうか」

ボッチの冷めた態度に、ガトリーは激しくツッコミを入れる。

ガトリー「おいおい!何か反応してくれよ!とは言っても、どうせうちのフラペチーノ王子が近々魔王を倒して、世界は平和になっちまう。今ヒーローになったところで、大して目立たないんだけどな」

ボッチはタイクーツ村から魔王討伐に向かった若者を思い出した。
彼も勇者と共に魔王討伐に行ったのだったな。

ボッチ「お前は魔王討伐に行かないのか?」

ガトリー「行きてぇよ!行きてぇけど、魔王討伐に行けるのは選ばれし者だけ!オレみたいな一般兵は選ばれるわけがない!それどころかフラペチーノ様は難しい奴でよぉ~王国内に強い奴なんか沢山いるってのに、全員雑魚だと思ってやがる。仲間は外部の者を起用するんだとさ!」

ボッチ「そうか、ならばタイクーツ村の若者は手練れの者だったのだな。そうは見えなかったが、確かに魔王討伐に行くと言っていた」

ガトリー「タイクーツ村?そんな田舎に強い奴がいるわけねぇだろ。まぁいいや、とにかく出発は明後日な。オレは明日王国に2週間の休暇申請を出さねばならん!」

ボッチ「お前、休暇をとって野盗退治に行くのか?」

ガトリー「あったりめぇよ!2連休ごときじゃアジトにすら辿り着けねぇ」

ボッチ「ふっ、お前は面白い奴だな、ガトリー」

ガトリー「なんだ、笑えるんじゃねぇか旦那!楽しい旅になりそうだぜ!」

ガトリーはバシバシとボッチの背中を叩き、ボッチの表情はすぐに険しくなる。

ガトリー「悪い、つい嬉しくてよ。。。そんじゃ明後日な~旅の用意はしておけよ」

ガトリーはスキップをしながら去って行った。

出発は明後日。

ボッチ「宿を探すか」

ボッチは宿を求めて歩き出した。
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