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熱風の闘技場編

第38話 小拠点奇襲作戦

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ヘイスレイブ城を出てから七日が経とうとしていた頃。七人の足取りは重く、疲弊していた。

満足な食事もとれず、雨も続いたために、ジメジメとしたヘイスレイブの樹海での就寝は困難を極めた。

ツグル「あとどれくらいでトルコネに到着する?」

カナメル「んぁ~、、、早くて七日歩き続ければ」

ダイス「はぁ!?まだ半分ってことか!?バカじゃねぇの!?」

マツ「とはいえ、事実です」

モモ「ダイエットには最適ね、、、」

セリア「流石に疲労困憊ですよ~」

ダイス「ムーの修行も酷かったけど、まだテントがあって良かったよなぁ」

四人は修行の日々を思い出す。たしかにあの時も満足のいく食事はとれなかった。しかし雨風をしのげるテントで眠ることが出来た。
睡眠をとることの大切さを改めて知る。

カナメル「一つ提案がある」

そう言ったカナメルは悪戯な笑みを浮かべている。

カナメル「戦闘を避けて遠回りをする予定だったけど、実は正規ルートにはヘイスレイブ領南西の小拠点があるんだ。残念ながら今はフォールドーン帝国に占拠されているけど、あの規模の拠点に配備するのはせいぜい一小隊くらいだろう。ヘイスレイブが落ちた今、拠点の守りに徹する必要性もなくなったわけだし」

マツ「なるほど、、小隊三十人と予測しても、私達の敵ではありませんね」

ダイス「さ、、三十人、、、、」

マツ「大丈夫です、カナメルさんが一人で片付けますから!」

カナメル「いや、建物を壊したくはない。一瞬で消し去ることも出来るけど、今回の目的は拠点の奪取、物資の奪取。よって夜襲をかけるってのは、どう?」

マツ「良いですね!ドラを抜けば六人、五分もあればいけますね」

モモ「えぇ~確かに一旦しっかり寝たいけど、三十人相手に戦えるのかなぁ、、、、」

マツ「敵はフォールドーンの兵士、機関銃で撃たれたら死んでしまいますからね。。。」

ダイス「、、、マツやめろよぉぉぉ」

カナメル「たかが三十人相手にビビってどうする、フォールドーンを落とすとなりゃ、遮蔽物のない荒野で万の敵を一度に相手にすることになるんだ」

ゴクリっ、、、
文字通り四人は固唾を呑む。
しかしながら体調不良のためか、唾もろくに出ない。

ツグル「夜襲をかけよう」

カナメル「他の三人は?」

モモ「ま、まぁ鎧が守ってくれるでしょう、、、きっと」

ダイス「たぁ!!やるよ!やりゃあ良いんだろ」

セリア「私は、、反対です!!罪のない人の命を奪うことは出来ません」

カナメル「まぁ、確かにそうなんだけどね」

ツグル「セリアはドラを護衛していろ、夜襲は俺たちでかける。これから更に七日以上歩くとなると、休む場所が必要だ。熱でふらついてる人もいるからな」

セリア「、、、、、分かりました」

セリアは立っているのもやっとだ、気付いているのはおそらくツグルだけだった。

カナメル「決まりだな」







「ルウワ!ルウワ!テンルウテンルウ!!」

樹海の方から聞こえる謎の動物の鳴き声と虫の騒めきをBGMに、五人は配置につく。

ドラを少し離れた草の生い茂る丘に寝かせたあと、カナメルの合図を待った。

ヘイスレイブの樹海を抜けると、見通しの良いサバンナが姿をあらわす、そこに小拠点があった。
まだ草木がそこそこあるが、トルコネ、フォールドーンに向かうにつれて植物は無くなっていくという。

樹海の湿った空気から一変、吹き抜ける風に髪をなびかせ、ゆっくりと深呼吸をする。
ひらけた場所なので星が煌めき、月が大きく見える。
いっそこのまま大の字で寝てしまおうかとも思ったが、ここで寝てしまっては勿体ない、今日ツグルたちはフカフカのベッドで寝るのだ。



ゆらゆらゆらゆらゆら



カナメルの炎が曲線を描いて空へ飛ぶ。
それと同時に五人は夜襲をかけた。
中には推定三十人の兵士がいるはずだ、見張りの兵はこんな辺境の地で奇襲など起こらないと高を括っているようだった。
きっと兵士達は寝ているか、酒を飲んでポーカーでもしているに違いない。

ツグルダイスペア

モモマツペア

カナメルに分かれて三方向から襲いかかる。

ツグルは心の中でワクワクするのを感じていた。もちろん危険が伴うし、五人のうちの誰かが命を落とす可能性もある。でもそれよりも、このシチュエーションに心躍っていた。
もちろん夜襲をかけたことなどない、しかしそれがまた胸を高ぶらせる。この空腹と睡眠不足が解消されるという期待感も相まって、手が震える。



「人を殺す準備は出来たか?」
夜襲をかける前にカナメルが言った言葉だ、戦争に身を投じるカナメルとマツ以外の四人は、人を殺めたことがない。
「家族がいるかもしれない、その人の帰りを待っているかもしれない、明日誕生日の娘がいるかもしれない、これから先何千人と人を殺めることになるだろうけど、これから殺める人にもそれぞれ人生がある、ドラマがある、それを奪う覚悟をしておいてくれ」
そう言ったカナメルの表情は、悲しそうだった。

ツグルはとうの昔に覚悟なんて出来ている。
セリアを守る為の犠牲は許容する、人を殺すことだって厭わない。

そう、手元にある黒い歪な短剣に誓った。
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