46 / 229
熱風の闘技場編
第46話 再再戦、黒化の身体vs見切りの技術
しおりを挟む遂にこの時がやってきた。
ムー「魔法が使えないカナメルに対して、そもそも身体能力の高さが際立つツグルに黒化を付与するとすれば、カナメルは絶体絶命だろうな。だって君は魔法の方は認めてやるけど、肉弾戦は不得意だろ?」
カナメル「まぁね」
トゥール「どんな時でも勝機はある。だろ?」
カナメル「まぁね」
ダイス「カナメルさん、華麗に決めちゃってください!!」
カナメル「まぁね」
ズミ「いや、君面倒くさくなってるでしょ」
カナメル「バレたかい」
タチキ「だってそれまでのまぁねは会話として成り立つけど、金髪ボーイの言葉に対して、、」
カナメル「本気で来なよ、ツグル」
タチキが言い終えるのを遮りカナメルは炎の鳥の背に乗って闘技場上空を滑空した。
それに呼応するように観客は歓声をあげる。
タチキ「ちょっと!!あんた!!人の話は最後まで、、、」
ダイス「やべぇ、かっけぇぇえええ!!!」
トゥール「魅せるバリエーション豊かだな、彼は」
フルネス「俺もあのような登場をすれば、、、」
モモ「いえ!!あれはカナメルさんだから許されるような気がします」
フルネス「そうか、、、」
ツグルはストレッチを済ませ、観客席の手すりに足をかけた。
ツグル「行ってきます!!」
恐怖と興奮が入り混じった感情を置いていくように、観客席から飛び出した。
10m程の高さを落下し、受け身を取って着地する。
先に地表に辿り着いていたカナメルが笑っていた。
ツグル「魔法の使用は禁止だぞ、カナメル」
カナメル「分かっているさ、ツグルも変形禁止なんだからハンデは無しだろ?」
ツグル「ああ、この戦い、俺は黒化も使わない。正々堂々戦いたい」
カナメル「使いなよ、俺としては全力を出してもらわなきゃ、やり甲斐がない」
ツグル「、、、後悔するなよ?」
ツグルの四肢が黒く染まる。
「準決勝、ツグルvsカナメル スタート!!」
ゴングの音と共にツグルが壁を垂直に走りだした。
円形の闘技場をグルリと走り、カナメルの背後へと移動する。
カナメルはそれを横目で見ながら直立不動である。
背後に回り込んだツグルは、思い切り壁を蹴ってカナメルへ一直線に飛んでいく。
触れる寸前にカナメルは後ろへバク宙し、ツグルの背中に乗る、そして頭部を掴み地面に叩きつけた。
壁を蹴った勢いをそのままに、ツグルは顔面を地面につけたまま数メートル前方へ身体もろとも削られる。
血が滲み動かなくなったツグルの頭部を踏みつけようとした瞬間、ツグルは体を捻り立ち上がる。
体勢を崩したカナメルの顔面に黒化したストレートを叩き込む。
カナメルは鼻から血を吹き出しながらすぐに立ち上がり、袖で血を拭った。
カナメル「やるじゃん」
ツグル「黒化させたことを後悔させてやる」
カナメル「やってみな」
人間とは思えないスピードでツグルはカナメルの目の前まで走り、凄まじいパンチの乱撃を放つ。
カナメルは全て見えているかのようにそれを弾き、遂にはカナメルの拳がツグルの鳩尾を捉えた。
ツグル「ごほっ!ごほ、、、、、」
苦しい、だがしかし隙を与えるわけにはいかない。
ツグルはすぐに駆け出し、フェイントをかけながら距離を詰める。
連続した攻撃を繰り出しながらも足を止めずカナメルを翻弄する。
防いでいたカナメルだが、顎に強烈なアッパーが入り、身体が浮いた。
そして先の戦いで見せたトゥールの回し蹴りを見様見真似でやってみる。
黒化のパワーの乗った回し蹴りはカナメルの小さな身体をボールのように吹き飛ばし、カナメルは壁に衝突し地に落ちた。
フラフラとしながらカナメルは立ち上がり、かかって来いと言わんばかりの手招きをしている。
お望みならばとツグルは一直線に駆け出し、全体重が乗ったストレートを弱ったカナメルの顔面目掛けて放つ。
ニヤリと笑ったカナメルの顔がスローモーションで目に刻まれる。
カナメルが素早く身体をずらすと、ツグルの右ストレートは壁にめり込んだ。
引き抜こうとするも肩付近までめり込んだ腕は動かない。
焦るツグルだが、腹部に激痛が走り倒れ込んだ。
カナメルの膝蹴りをモロに受け、黒化が一時的に解かれてしまっていたことに気付く。
立ち上がらなければと思うが身体が言うことを効かない。
「勝者!!カナメル!!!」
カナメルは魔法で壁を破壊し、倒れ込むツグルと共に転送魔法でその場から消えた。
ツグル「くそ、、、、浅はかだったか、、」
闘技大会の医療班の治療を受けたツグルが悔しそうに客席へ戻る。
セリア「ツグル!!大丈夫??」
心配そうなセリアの表情を見て、負けた自分に憤慨した。
トゥール「いや~ナイスファイト」
モモ「やるじゃん!!ツグル!!見応えあったよ」
ダイス「カナメルさん相手によくあそこまで戦ったな!!お前もすげぇわ」
ツグル「また負けた」
肩を落とすツグルにカナメルがポンと手を置く。
その目には承認の眼差しがある気がした。
カナメル「余裕だったわ」
そう言うカナメルの小さな背中が、とても大きく見えたツグルだった。
数分の後
[カナメル棄権により、勝者ツグル!!!]
突然のアナウンスに一同は驚く。
当のカナメルは清々しい顔をしていた。
ツグル「おい、どういうことだ?」
カナメル「さっきツグルに殴られたところが痛いんだよ、治療を受けたって痛いもんは痛い。こんな状態であんなバケモノかトゥールの蹴りを食らったら死んでしまうだろ?」
そう言ったカナメルはツグルの背中を押した。
ムー「てめぇ、まさかとは思うが、この大会に飽きちまっただけだな?」
ムーとカナメルは静かに笑った。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる